第02稿06話~これよりここを仮拠点とする5~
__魔女|装甲馬車
ノーライルの指示通りに装甲馬車の中に入る。
「あ、スノウ!ココノ!お帰り!」
「上はどうだったんだ?」
「問題は無かったわ。中は広いのね」
「ただいまユウ。なにもなかった?」
「うんなかったよココノ~」
聖女を抱きしめる勇者。男勇者なら映えたのでしょうね。
……これをトキトー君に置き換えてみよう。駄目だ。ココノの位置に収まってしまったわ。
ユウがイケイケドンドンする未来しか見えないのは困ったものね。
さてココノにユウは任せて私は目的の人物と接触しましょう。
「こんにちはセラフィさん」
「魔女様?どうしたんです?」
「クラスメイトなのだからスノウと呼んで欲しいわ」
「分かりました。スノウ、あ、聞きたいんですが。上の乗り心地ってどんな感じでした?」
「とても快適だったわ」
「魔力を動力にして鉄の塊を動かすって私、頭からすっぽ抜けてました。まぁ、別の事に掛かりきりになってたので無理もないですけど」
「別の事?」
「はい、叔父……学園長に頼まれて作ってるモノがあるんです」
「そうなのね。良かったら協力出来そうな事があったら言って頂戴」
「本当ですか!じゃあ、叔父様に許可を貰ったらお願いしたいと思います!」
「えぇ、分かったわ。うちの勇者が荷物運びでも採取でも何でもやってくれるわよ」
「え?勇者にお使いを頼むのはちょっと……畏れ多いというか」
「大丈夫よ。遊び人と一緒に行かせてあげれば喜んで行くわ」
「あ、そう言う事ですか。分かりました」
「私の方も研究畑なので。実戦派ですけども、仲良くしてほしいですわ」
「へぇ、この馬車の構造についてはどう思いますか?」
「そうね。見たところ軽量化と防音、強化系。それと昨日、魔導砲の様な物を使っていましたわ」
「魔導砲まで!興味深いですけど。残念ながら設計図の入手は難航しています」
「アレは燃費の悪さを物語っているわ。トキトー君が物資でごり押ししたけど」
「あの量のポーション、何処で手に入れたんでしょうね」
「自分で作ったらしいわよ」
「それは……錬金の腕はかなりいいですね。あれ上級のポーションですよ」
「そうなのね」
「多分、向こうに着いたら先生から話があると思うんですけど。トキトー領のダンジョンに潜る予定なのです。ダンジョンコアに用があって、その護衛をお願いする事になるかもしれません」
「そう、分かったわ護衛位任せなさい。勇者が道中の壁すら吹き飛ばしてくれるわ」
「いえ、壁を吹き飛ばすのはちょっと……」
「冗談よ」
≪あー、あー。仮拠点の為の広場作成が終了した。先生、拠点の設置をお願いするっす≫
どうやら、今夜の宿に到着したようね。
外に出ると周囲は丸太で埋まっていた。正しくは根本が引きちぎられた木ね。
「切り株?が邪魔で置くスペースがありません。どなたか土魔法で切り株をどけてもらえませんか?」
「私がやるわ。大地よ風よ!詠唱破棄!」
大地が揺れ風が耕し、そして切り株を取り除いていく。
「うわあああ、馬車に向かって投げんなっす!」
ノーライルが何か言ってるけど気にしないでおこう。
「ねぇ、ノーライル君。ユウ君が居ないんだけど何処に行ったか知らない?」
「ぐぇっ、ぎぶ、ぎぶ。知らん!降りたら!居なかったっす!」
「ロックオンくーん」
「こっちに来ないで!!」
ノーライル君とロックオン君が犠牲になっていた。そう言えばトキトー君とカタナ君の姿が見えないわね。素材集めでもしてるのかしら。