第01稿01話~入学1~
__遊び人|ファミリア学園-入学式
「やっとこの日が来た……長かった」
『ここまで15年、あっという間だな』
この世界に転生してから15年が過ぎた。それはもう色々あった。ステルスのせいで母親に存在を忘れられ放置されたりとか、泣いても泣いても反応してくれなかったから生き残れる気がしなかった。長くなりそうだし割愛。
さておき、ここは王都にあるファミリア学園の入学式。この後は勇者達と共に入学する事になる。振り分け試験があって恐らく別のクラスに振り分けられるだろうが。
「さて、どうするか」
『入学式に出るんじゃないのか?』
「いやそうなんだけど。その前に勇者とコンタクト取るべきかなって」
今、話してるのはフール。転生者は信託スキルを初期習得していて、自分の担当の神?と何時でも会話出来る様になっている。
『どちらでも良いんじゃないか?正直、勇者達の担当はあんまり俺様は関わりたくない』
「ん?俺が会うと向こうも分かるの?」
『アホ共が担当してるから転生者もアホだと思う』
「酷い言い草だ」
『勇者PTが紅一色だし、そっち方面で遊んでも良いんだぜ?』
「それは状況次第、返り討ちにされても困るしな。それよりも振り分け試験だ。クラスが何になるかも気になるしな」
振り分け試験は実技と座学の両方がある。俺のジョブは最低レベルのステータス補正だ。村人と遜色ない。だが有り余る豊富な数のスキルが使える。攻撃の属性魔法は出来なくても状態異常の魔法は使えた。これを使えば実技は何とかなるだろう。
『おい、あそこが受付なんじゃないか?』
「そうみたいだな。行くか。すみません」
俺は前に出て受付に話しかける。
「え、あっはい。何でしょうか」
「入学式に来たんですけど」
「あぁ、でしたら生徒証を見せてください」
「あぁ、コレかな」
赤い太陽と青い月の紋章のついたカードを見せる。
「えぇ、それです。ユウ・トキトーですね。では集会場のこちらの番号の席にどうぞ」
「101番か」
「集会場はそちらの道をまっすぐ行って中庭から見える大きい四角い建物です」
「あぁ、ありがと」
軽く手を挙げ集会場へ向かう。
この学園は王都にある王立の学園だ。ファンタジー世界でのお約束。魔物も出る世界では戦える職業は武芸科、村人とかの職業は農学等々、専門分野を学べる一般科に入学する。
だがしかし、俺は武芸科に入学する事にしている。やっぱ異世界楽しむなら冒険者になるのが一番でしょう。
『偶然かはたまた必然か。運命の輪に聞いてみたい位だな』
席に座ると2番目の列の一番左の席に座るとフールがそんな事を言って来た。
「どうかしたか?」
『いや、お前の目的を考えると面倒くさいなと思ってな』
自分には空気化の呪いがかかってるのでフールに対して喋っているだけなら他の人には認識されない。
つまり独り言呟き放題。寂しい。
「何が?」
『右前の3人』
「うわ、マジか」
言われた方を見ると勇者PTのお供3人が勢ぞろいしていた。噂には聞いてたのと勇者とその従者現る!と掲示板に貼ってあったのを見たことがある。
「ん?」
声に反応した様に奥の魔術師の服を着た銀の長い髪から粒子を振りまいてる女の子がこちらを向く。
銀色の目と目がかち合う前に前を向いて視線を逸らす。確か勇者PTの魔術師の子だ。
「どうしたの?スノウ」
「なんでもない。気のせいだったみたい」
話相手であるピンク髪のショートボブの子は聖女だった筈。
しかし、感知した?転生魔術師なら固有スキルでサーチ系の物を取ったのか?
『その可能性は高いな。お前の呪いは転生時の固有スキル位じゃないと感知は出来ないしな』
見つかりやすいのは気を付けなければ。
『ま、見つかっても問題ないんじゃね?』
アホなんだろう?
『そうだった。でも、勇者PTは転生者確定だけど。ほら、俺ら雑魚だから転生者ってバレないかも知れないぞ』
そう言えば、この信託スキルって自分の神だけなんだよな?
『顕現すると他の転生者にも見えるけど信託での声なら大丈夫だぜ』
そうか、なら良い。
そんな話をしていると入学式が始まる時間が来る。この状態なら俺の目の前の席は多分勇者が座ると思うが……空席のままだ。
『始まったが勇者は来ねーな。何してるんだ?』
髭を蓄えた筋骨隆々な学園長らしき人物の挨拶が終わって新入生代表が出てきた。
勇者だ。辺りが黄色い声に包まれる。
俺と同じ黒髪黒目か……快活そうだ。
学園長だった人物と同じ雰囲気が出てるのは、流石勇者と言う事だろうか。
「あぁ、新入生代表か。そりゃ居ない訳だよ。勇者だもんな」
挨拶が終わり壇上を降り席に座った。マジで目の前だった。
壇上の人が変わり喋り、何事もなく入学式が終わり振り分け試験が始まる。
2021/01/01 魔女、聖女、勇者の容姿について。改稿
2023/04/30 書式などを調整
唆すけどフールは本人の意思を尊重します。
それでは皆様また次回。