第01稿08話~獲物3~
__遊び人|特待生寮
「皆さーんご飯が出来ましたよー!!」カンカン
「食べるでござる」
鳴り響くおたまを鍋の底に叩く音。漫画か。実際、現実にコレで呼ぶ人って居るのだろうか。
『目の前に居るじゃん』
あぁ、そうだな。
「わーい、ユウ君!今日は一緒に食べてくれるんでしょ?」
「まぁ、約束だしな」
「わーい、やったー」
「今日の魚はトキトー様の地元の魚を提供してもらったんですよ。それに下拵えも手伝ってもらいました」
「ユウ君料理出来るの!?」
「出来るぞ」
「勇者様、隣良いっすか?」
「ん?隣は空いてないから無理かな」
金髪の軽薄そうな執事服っぽい衣装の男がチェーンしてきたが、あっさり断られていた。
「もう片方は彼だとして反対側は空いてないっすか?」
「もう片方はココノの席だから駄目」
「だ、駄目か。分かったっす」
そう言ってとぼとぼと去って行った。彼は中性的なそっくりな2人に慰められて……いや、笑われている。
「ユウ君、ほら座って座って」
「あ、あぁ」
この押しの強さは明らかに何かある気がして慣れない。
「どうぞー」
フィオが配膳をしてくれる。
「ありがとう」
「いえいえ、お魚と醤油ありがとうございます」
「「「「「「「醤油?」」」」」」」
一斉にこちらを見る面々。勇者PTとエルフの少女に先ほどのそっくりな双子。転生者ホイホイかな?しかし、他の人も聞耳立ててるな。特待生クラスって転生者しかいなくないか?
『これは一発で分かるな。このために醤油を作ってたのか?』
まさか、ただ単に俺が食いたかっただけなんだが。
「醤油はどうやって作る?どうやって作った?」
「えっと、これは錬金で大豆と麦と塩を合わせて出来たものです」
図書室で会ったエルフの女の子に迫られる。
「今は私の時間だよ」
間に勇者が入って止める。何て頼もしい。
『頬赤くしてんじゃねぇよ。お前が攻略されてどうするんだ』
それもそうだ。遊び人から勇者への好感度が1上がった!!
「さぁ、冷める前にいただきましょう!」
「「いただきます」」
「あぁ、懐かしい」
「ンメッンメ」
どうやら提供した魚は好評な様だ。恐らく信託で指摘されて黙ったりしてるけど顔は正直である。
『まぁ、転生者ってバレても問題ないしな』
「ユウ君は王者の墓場に行くって言ってたけど大丈夫なの?」
「ん、まぁ大丈夫そうだったぞ。2人とも強いし俺はマップ作る役割みたいだからな。2人に守ってもらうだけだ。と言っても2人とも強くてスケルトンが相手にならないみたいだ」
「それ、私もついてっちゃ駄目かな?」
『無限のー可能性はねぇな。』
無いのかよ。
『だって2択だもの。断るか断らないかってな』
あぁ、確かに。
『ん?あぁ、待った。信託を与えよう。無限の可能性を提示する。承諾か拒否か委任か』
また、委任?
『委任相手は今回は7人居るぞ。さっきの委任みたいに仲間や知り合いにぶん投げられる。』
7人も居るのか。……忍者はさっき委任したしロックオンにするか?
「ん、あー。俺の一存じゃ無理だな。ロックオンがリーダーだしソッチに聞いてくれないか?」
「そうなんだ。じゃあ、食べ終わったら聞きに行く。一緒にね」
「まぁ、そうだな。分かった」
勇者は凄い勢いで食事を口に突っ込んだ後ずっと俺の食べる様子を見ている。見られていると凄い食べにくいな。
「ユウ、見られてると食べにくいと思う」
俺の反対の隣に座っていた僧侶が言う。確かココノだったかな。
「え、本当?ユウ君?」
「正直に言うと食いにくい」
「えぇ、そんなぁ」
子犬が耳をペタンとしてしょんぼりしている光景を幻視した。
『その通り。幻影だから騙されるな』
あ、はい。
「じゃあ分からない様に見るね!」
そう言ってテーブルの下に潜った。
「何処見るんだ!?」
「あ、駄目か。んじゃあアッチで」
テーブルの下から這いずり出てきて、窓の方に行って開けて外に出てった。そして、窓から頭を半分出して見つめてくる。
「……まぁ良いか」
『軽いホラーだな。今までの経験上含めて、死因、勇者による刺殺以外の結末が見えん』
怖い事言うなよ。さっさと食べてしまおう。
『これ、まだ学園生活二日目何だぜ……密度濃すぎるだろ』
2023/04/30 書式などを調整。
じゃぱにーず醤油は転生者ほいほい。
それでは皆様また次回。