第03稿04話~霧の舞台で死の舞踏10~
__遊び人|湖
「筋力強化かけようか?」
勇者の腕に針が刺さらないのを見かねて提案する。
「あ、お願いするでござる」
「筋肉痛は大丈夫?」
「私にかけて!!」
「お前強化してどうするよ?」
「痛みにはある程度慣れてるから大丈夫でござるよ」
「じゃぁストレングス」
「おぉ、刺さったでござる!!あ、刺し過ぎた……わ、わざとじゃないでござるよ?」
強化したら忍者が刺そうとしてた針が勇者の腕に埋まった。繋がったチューブを通って、う、何か入り込んでくる……いや、勇者の血何だが。これは、気分が……
「あ?トキトー起きた?大丈夫?」
「ロックオン?何があった?」
「多分、魔力切れ?」
「何故?」
戦闘力は低いが生産でレベルを上げている俺はマナが多い筈なんだが。
「えっと……勇者の血の自己治癒力が高すぎたから?多分、魔力も活性化してマナ消費してダウンした感じ。多分ね」
「成程……?つまり治癒魔法強制使用みたいな感じか?」
治癒魔法を連打してぶっ倒れたと言う事か。
「多分ね」
「気分が悪くなったのは身体の中の不調も一気に治癒されたからかもしれないでござる。腕はガワだけ繋いだだけでござるしね。気分は大丈夫でござるか?」
腕も動く、身体の違和感も無し。気分はちょっと疲労感がある位か?そして口の中の異臭……これマナポ魚臭味……
「大丈夫そう、ただ口の中最悪なんだけど」
「あー、残ってたマナポ突っ込んだから?」
飲み残しを飲まされたらしい。これは酷い臭いだ。何で起きた時に気付かなかったんだ……
「……自分の口臭はなかなか気付かないらしいよ」
「マナポの臭いだろ……自分のじゃないぞ。心を読んだか?」
「いや、何で気付かなかったんだって顔してたから察したんだよ」
「動けるならここから出るでござるよ」
「あぁ、そうだな。あれ?勇者は?」
「そう言えば何処に行ったでござるかね?」
「そう言えば、あのお祖父さんの幽霊が緑と腐乱とあと何があるって言ってたっけ」
「動物じゃないか?」
「緑がプリズムクラブで腐乱が首無し戦士だとすると」
「動物のボスが居る?」
「でも強い反応は見当たらないでござるよ?」
「洞窟に逃げよう、今すぐ逃げよう。早く逃げよう。トキトーヘイストプリーズ!!カタナは勇者の回収……いや、洞窟の中入ったらトキトーが起きたと思って寄ってくるかな?」
街の有った方の空を見てロックオンは焦り始めた。霧は無くなって遠くまで見える。大きな入道雲が見えるな。
「雲じゃないでござるな!!もしかして鳥でござるか?」
あれが雲じゃないならやばい量だ。勇者、呼んだら来ないかな?
「ヘイストヘイストヘイスト、勇者!ヘイストかけるからこっち来てくれ!」
「はーい!!」
「本当に来た!?」
「スイミー来てるけどどうする?」
「スイミーってちっちゃい魚が集まって大きな魚に見せて捕食されない様にする話だったか」
「ヘイスト、よし洞窟に避難だ」
「分かったー」
「では撤退方向で行くでござるよ」
「きゃんきゃん」
「え?そうなんでござるか?どうやら倒さないといけない様でござる」
「ティキはなんて?」
「あれ少しは削っておかないとダンジョンから出てくると言ってるでござる」
「渡り鳥系なら陸に向かって一直線、つまりトキトー領がヤバい?」
「ここで力削いでおけば渡る力もなくなる筈でござるよ」
「どでかい花火をぶち込めば良いって事か、じゃぁ僕の出番だね」
「マナポの出番か」
「太陽無いからそうなるね。マナポお願い」
「私がかっ飛ばすからボールお願いね!」
「はい?」
魔法の鞄からマナポを取り出しておこう。
「あぁ、そう言う事か。飛ばす方は任せるから火力に全振りします」
「では拙者は出口を確認しておくでござる」
「了解、それじゃやろう。勇者は準備は良い?」
「はーい!ファーストセカンド……」
「トキトーはマナポ飲ませて」
「分かった」
ロックオンの口にマナポを注ぎ込む作業を行う。
「何本?」
「もっと頂戴。どうせだからビックバンにしよう」
注いでる内に魔銃が震え出している。大丈夫かこれ。
「あ、一応皆にプロテク張っといた方が良いかも」
「分かった、プロテクプロテクプロテク」
「良し、勇者準備は良いかー撃つぞー!」
魔銃から弾が放たれる。人一人分くらいの大きさ……眩しい、小さい太陽の如く輝いている。色は真っ白だけど。
「勇者がかっ飛ばしたら見ないで洞窟に入るよ!」
凄くゆっくりと弾は勇者の元に飛んでいく。
「ファイナルギア……やぁあああああ!」
勇者の剣が魔弾と交差する。カッと短い音がして勇者と雲のような鳥の群れとの間に線が出来た。
「退避!!」
「こっちでござるよ!」
洞窟に入って少し進むと扉があった。そこに俺達は飛び込んだ。
という訳でミスティックシティを脱出した遊び人、忍者、魔銃使い、そして勇者は何処に出るのでしょうか。答えは次回。
それでは皆様また次回。