第03稿03話~霧の世界のゾンビ達15 ~
__遊び人|ミスティックシティ―北
「これで良いでござるか?」
「よし、撃つぞーフレイム、フレイム、フレイム、セット!」
「気付いたら巣に向かって瓶が放られている。そう言えば、一発ずつ詠唱で装填してるんだよな?」
忍者がノリノリで油瓶を巣に放り込んでいた。この忍者ノリノリである。
「ん?そうだよ」
「同じ弾なら詠唱略せないのか?」
「撃つときのファイヤーのトリガーでジャムるから無理じゃないかなぁ」
「魔銃ってジャムるの?」
「魔法の詠唱と同じだと思う。魔力走らせる時の式が途中で違ってたら魔力が無駄になったりするでしょ。そんな感じで不発になる?」
「あー、何となくわかった。纏めて装填は出来るんだよな?」
「うん、そうだね。でもそれで装填したとしても撃つ時にいっぺんに撃とうとするんだよね」
「おぉ!?」
「トリガーは変更出来ないのか?」
「引き金は一つしかないからね」
「そうじゃなくて、銃って単発とバーストとかフルオートに切り替える奴なかったか?」
「射撃モードの切り替えか!銃自体に切り替え装置ついてないから頭から抜けてたわ。ちょっと考えてみる」
「ぬぐぐぅ」
「役に立ったなら良い。所で忍者は何やってるんだ?」
「……勇者が跳んだり跳ねたりしてるでござるよ」
忍者は外に空いた壁の穴に生えた蜘蛛の脚にしがみついていた。どうやら勇者に引っ張られているらしい。不自然な海老反りを披露してくれている。
「そんな激しいのか?というか頭なのか?」
「覆面の一部を糸にして繋げてるでござるからね。戦闘中は切りたいレベルでござる」
「別の場所に糸を付け替えれば良いんじゃないか?」
「胴体に巻きつけておくでござる……ござるぅぅぅぅぅ?」
忍者が穴に引きずり出されていった。しかも上に。
「おい、忍者、上に落ちたぞ!」
「上に……?まぁ、飛べるし大丈夫でしょ。それよりも魔銃を……」
「忍者と糸で繋がってるなら俺らも引っ張られるんじゃ?」
「……確かに!!取り敢えず、糸を手繰りよせてみようか」
ロックオンが腕に何かを巻きつけている動作をしている。コレは、釣りのリール巻いてるように見えるな。
「釣れるの?」
「あ、トキトー、筋力上げるバフある?」
「あー、あるけどお勧めしない。筋肉痛酷いよ。ヒールで一応治るけど痛んでからじゃないと治せないし」
「うわ、そうなの?」
「多分、大丈夫な人は大丈夫なんだろうけど。後衛職だと酷い事になるかも」
「遊び人って後衛職なの?」
「遊び人は……生産職だと思う」
「あぁ成程」
『選択スキルで生産取ってるからだろ』
それもあるな。
「あ、糸切れてる。どうやらカタナが飛んでった時に僕らも芋づる式にならない様に切ったみたいだ」
「それなら安心だな」
「そうと決まったらどうする?ここで蜘蛛と一緒に待機するのと外出てカタナが落ちてくるまで待つかそれとも勇者の方に向かうのか、ちなみにどれを選んでもトリガーは引く予定で考えてね」
どうやら、どの選択肢を選んでも撃つ事には変わらないらしい。撃たないで待つという選択肢はないのか。無いから最初から明言してるんだろうな。取り敢えずダメ元で聞いてみよう。
「撃たないで待つという選択肢は?」
「そんな選択肢ある?」
駄目か。どれが良いかな。
『考えてる暇ないぞ』
「よし、なら蜘蛛を焼いてから考えよう」
どうやら選択する前に焼く事を決めた様だ。先程と同じように反撃して来なければ駐留、来たら逃走の二択で行こう。
『先に逃走も良いかもな』
……全員ばらける選択肢は無しだと思うが。
『……前に逃走が良いかもしれない』
前?後ろは壁、大穴と生えた……蜘蛛の脚。そして穴の外に見える影。何となく察した。壁から離れロックオンの近くに寄る。この位、壁から離れれば大丈夫だろう。
「こうするか、いや、こっちかな、こうか、組み上がる?駄目か。ん、ここをこうして、こうか?駄目か」
凄いブツブツ呟いてるな。大丈夫か?声掛けておくか。
「ロックオン、大丈夫か?」
「え?あぁ、そう言えば撃つんだった。あ、撃って良い?え?でも、やらないと駄目なんでしょ?やっても意味ない?でもモノは試しってこっちじゃない?こうすれば出来る?やらなきゃ出来ないよね!」
ロックオンの様子がおかしい。見えない誰かと話してるようだ。多分、ロックオンの担当の……神?と話してる?ここは気付け薬、もとい魚マナポの出番か?
『疑問形付けなくて良い。あってるあってる。という訳で無限の可能性を示そう気絶薬か逃走か投擲か、はたまた登攀か』
ちょっと聞きなれない選択肢出てきた。気絶薬は魚マナポの事か?投擲は何を投げる……マナポ投げるのか?登攀する要素は?
『天に避ければ何とかならなくもない』
登攀って天井に飛び付く事を指すのか?
『……よく考えたらよく分からないな?』
取り敢えず、魚マナポをロックオンに与えておくか。
「ロックオン、コイツを飲むと良い」
瓶の蓋を開けてぶつぶつ呟くロックオンの口に突っ込む。
「んぐっ」
一瞬で、ピクリともしなくなった。流石、俺の薬。いや、本来はマナポなんだが……魚の生臭さを凝縮するだけでこんな効果が出るとは思わないだろう。
超強力魚臭薬、ギョマナポ。ロックオンに特攻の様だ。魚嫌いではない筈。嗅覚に大ダメージ相手は気絶する。少なくとも飲み物の匂いではない。シュールストレミングかくさや。多分、威力的にシュールストレミング。液が衣服に付かないようにしたい所。
上に落ちる忍者と様子がおかしくなるロックオンでした。次回は恐らく落ちてった忍者のSCENEからSTARTいたします。
それでは皆様また次回。