第03稿03話~霧の世界のゾンビ達10~
__遊び人|海上
「固定は終わったでござる」
「じゃぁ船に皆しがみついてねー」
ロックオンが銃を構える。何と無く分かったぞ。落ちる奴だ。
「船は持たないと思うでござる」
「……ファイア!」
強い衝撃と轟音。うわ、口に水飛沫が……飛沫?
「水飛沫浴びない様に頼む!」
風切り音で声がかき消されそうなので大声で注意を呼び掛ける。
「それ先言ってぇ!」
「拙者はマスクしてるから大丈夫でござる」
「……」
「おい、勇者の応答無いぞ!麻痺ってないか!?」
「ついでに言うとロックオンも麻痺状態でござるな」
「これ着地どうするんだ!?」
「この状況だと船を盾に地面に着地くらいでござろうか?」
現状、人間大砲よろしく船にしがみついて吹き飛んでるしな。死にそう。
「落下死は恐らく大丈夫でござる。勇者が落ちてったでござるよ」
「固定してたんじゃ!?」
「受け止めるつもりみたいでござる」
「何で返事がない!?」
「さっき自分で麻痺ってると言ってたでござるよ?」
「え、麻痺ってるのに動けるのか!?」
「実際動いてるでござるから動けるのではないでござるか?」
「超高濃度の麻痺毒なんだが……」
「確かに完全に水を被ったロックオンはうんともすんとも言わないでござるな」
そう言えばやけにカタナの声がハッキリ聞こえるな。見ると口の部分がメガホンの様になってた。なにそれずるい。
「……建物にぶつかるでござるな」
「マジか!」
「あ、勇者建物に気付かないで突っ込んだでござるな。いや?これは……」
こういう状況だと俺なんも出来ないな。
『出来てるこいつらは異常なだけだぞ。毒飛沫垂らしても良いが何かやってみたいなら船にスロウでもかけてみたらどうだ?』
状態異常魔法って物も対象に出来るのか?
『やって解らん事は無い』
ものは試しと言う事か。よしスロウ。スロウをかけると風切り音も無くなった。
「速度が落ちたでござるね?」
「船にスロウかけてみた」
「物に状態異常をかけるという発想は無かったでござるね。スロウは状態異常と言うよりトキトーの場合錬金等の応用判定でござろうか」
「錬金を応用……溶解とか出来るぞ大丈夫か?」
「取り敢えず前方の壁に穴を開けて欲しいでござる」
「要求難易度が高すぎるんだが?あ、駄目だ生産スキルは触れれる位近くないと無理だ」
「そう言えばそうでござるな。一度作り始めると離れても良かったから忘れていたでござる」
「と言う訳でアレに穴を空けるのは厳しい」
そう言って少しずつ迫ってくる壁を指さす。
「毒が作れるのなら解毒も出来ないでござるか?そこの麻痺ってるロックオンに壊してもらうでござるよ」
「そうだ、放置してる理由が無かったわ」
魔法の鞄から解毒薬を取り出してロックオンの口に突っ込み、鼻をつまんで瓶の中身を流し込んだ。
「んぐ、がぼがぼ」
「これでOK」
「ごほ、溺れる所だった……がっつり気管に入ったよ。話は何となく聞いてたけどアレに穴空けるのは良いけどこの足場で穴空けるくらいの威力で撃ったら海の方に逆戻りしない?」
それは……そうだな。
「あ、解決したでござる」
__勇者|船上
ごくごくごく、ユウ君の出した麻痺毒が美味い。心地いい痺れが身体を包んでいる。刺激的!
「これ着地どうするんだ」
ユウ君の声が耳に入る。着地……着地?そう言えばお空の旅をしていた!受け止めなきゃユウ君死んじゃう!手足の麻痺を解除して船から飛び降りる。
飛び降りてから思ったけどもう遅い。海上ではなく地面でした!セーフ!
「ふぁーふときあ!あえ?」
口の麻痺を取るの忘れてた!解除解除!
「ファーストギア!セカンドサードフォース!ファイブシックスセカーンド!」
あれ、ギア下がっちゃった。もういっかい。
「ファーストギア!セカンドサードフォース!フィフシックスセブン!えい!ない!テンスギア!!」
ダッシュ!上を見ると飛んでいく先にはおっきなビルが!このままだと船ごと木端微塵!!受け止めるならビルを登らなきゃ。壁、鉄筋かなぁ。柱の所じゃないと登れないよね多分。
上を見ると船が止まってた!いや、少しづつではあるけど動いてる!ユウ君のスロウだ!あれなら間に合いそう!
窓のないラインを駆けあがる。馬力を上げれば垂直に駆け上がるのも可能!馬力こそぱわー。
同じ高度に到達!良し受け止めよう!ざっくりと船以上の大きさに壁を斬って下に落とす。くりぬいた建物に入って飛んでくる船を床に押し付ける。そしてユウ君をキャッチ!ミッションコンプリート!
__遊び人|ビル?
気が付いたら勇者に捕獲されていた。何を言っているのか良く分からんが船の残骸にまみれているロックオンを助けた方が良いと思う。
「ロックオン大丈夫でござるか!!」
「最後まで船に固定されてたんだけど僕、何かした?」
「撃つと思ってしっかり固定していたのを忘れてたでござる」
「確信犯でしょ」
「ここは、スタジオでござるかね?」
「勇者、降ろして貰えるか」
「うん!分かった!」
突入した部屋には配線、カメラ、そして部屋を模したセット。ここはTV局か?
「結構な高さに突っ込んだから降りるの大変そう。エレベーター使えるなら良いけど」
「取り敢えずこの階は空っぽそうだな。安全そうだから暫く休憩するぞ」
「分かったでござる」
ゾンビ要素は魚です。麻痺毒は効きにくいですが魚避けには一応なりました。
新年明けて一月遅れですが皆様明けましておめでとうございました。
それでは皆様また次回。