第03稿02話~不思議な不思議な霧の街7~
__遊び人|霧学園
「中になると敵が全く居ないね」
「再現が不完全だから配置出来てないのかもな」
「不完全?」
「ほら、さっき風呂入った空き家。多分、再現性が低すぎるとああなるんだと思う」
「きゃん」
「あ、ティキ君だ!」
「お、こっち来たのか。よしよし」
何処かからティキが現れた。頭を撫でると尻尾を振り手に頭を擦り付けてくる。
「くぅん」
「よし、ティキも来た事だし出口を探そう」
窓の割れる音がする。この教室ではないから隣の教室か?窓を見ると鴉がバードストライクをして来ていた。
「ゾンカラだ!」
「何だゾンカラって!」
「ゾンビカラスの略!ファーストギア!」
勇者が叫ぶと同時に窓ガラスが散弾の様にまき散らされた。が横一線に割れたガラスごと窓と壁が消える。斬り飛ばした……。何か早く帰りたいな。
「これで良し!大丈夫ユウ君!?」
「いや、もう、何ていうか。家帰って牛肉食べたい気分だ」
「きゃん」
「ほら、ティキもそう言ってる」
「くぅん?」
「よしじゃぁ、直ぐ帰ろう今帰ろうセカンドサード飛ばしてファイナルギア」
「待て待て何する気だ」
「帰り道作ろうと思って」
勇者の剣がチェーンソーの様な轟音をたてている。見た目、普通の両刃の剣なのに何処からこんな音が……?
「作れたとしても二人を置いて行くわけにはいかんだろう」
「じゃぁ、二人の所に繋げる。折角起動したし」
移動技なのかファイナルギア……勇者が剣を振ると宙が切れた。空中に割れ目が広がり入れそうな穴になる。向こう側は形容しがたい様々な色が混じった様な空間?が広がっている。
「じゃぁはい!」
「なんだ?」
両手を開いてこっちを向いている勇者。抱っこを求める妹と重なる。
「離れたらもずくになっちゃうからね」
「もずく?」
「うん、時空の海のもずく」
「それ言うなら藻屑か……取り敢えず、はい」
「あぉあぉ」
何か鳴いてるけどティキを拾い上げて勇者に押し付ける。
「わぁ!もちもふ~!」
「おぁぉぁ……」
頬ずりし始めたぞ、ティキの首がキマってる様に見えるが気のせいだろう。大人しく、腕を組む。
「ん、じゃぁこうしよう!ヘヘ、役得」
腕を組んで指を絡めてくる。これは俗に言う恋人繋ぎ。だが最後の言葉が無ければ良いのに。
「レッツゴー」
割れ目に突入。おぉ、凄いグワングワンする。平衡感覚が滅茶苦茶になったような感じ。
__魔銃使い|霧学園
「む、血の糸が切れたでござる」
「え?やばくない?」
「到着!」
「うぅ、グラグラする」
「は?」
後ろを見ると勇者が片腕でティキをヘッドロックし、もう片腕でトキトーに抱きついていた。
「どうやってここに来たんでござるか?」
『勇者が目の前の空間を斬ってここに繋げた感じかな』
「チートでござるな」
「カタナは人の事言えないと思うよ」
「流石に何処にいるかも分からない物の元に跳ぶ事はできないでござるよ」
「血の糸、繋がりなら出来るんじゃ?」
「……出来るでござるな!棒人間の術で案内すればよかったでござるね」
「さて、じゃぁ帰ろっか」
「いや、さっきの帰りたいは冗談だから。流石にココ放置して帰るつもりは無い」
「ん、分かった。じゃぁ飛んでこなければよかった……でぇとが……」
良く分からないけど別れてる間、勇者はデート気分で居たのかな?トキトーも同じ気持ちとは限らないぞ勇者。てか時空斬出来るのかー!流石勇者。
『僕も時空渡れるよ』
心読まないでね。何で張り合ってるの?
『何となく?』
「さて、無事合流出来たけど、さっきのファランクスとか言う奴、外にまだまだ居るんだよね」
「あと建物についてでござるが探索しても意味がない様に思えるでござる」
「あぁ、そう言えば吊り看板も何も書かれてないし。不自然に物も無かったしな」
「重要な所には書かれてるとか無い?」
「あぁ、それはあるかもしれない」
「では、建物の探索はするでござるか?」
「広すぎて探索したくないんだが」
「そう言えば、ここ昼も夜もないみたい」
「そうなのか?」
「太陽も月も無い灰色の空が広がってる。正直、時間の感覚がおかしくなるよ。魔力の充電も出来ないし。どうして僕は魔力を全ツッパしちゃったんだろう。珈琲味お願い」
「あぁ、マナポか。魚味なら直ぐ出来るぞ?」
「無味無臭じゃないなら助かるよ」
「じゃぁちょっと待ってろ。勇者そろそろ離してくれ」
「ん、分かった」
トキトーはそう言って勇者の拘束を解いて魔法の鞄から魚を取り出した。異形の形をしているところから魔物だと分かる。それをトキトーは錬金セットも取り出して調合し始める。
「ほい、出来たぞ」
ソレは直ぐに出来た。眼に見える異臭。待って、僕が作って欲しいのはそれじゃない。
文字通り、生臭い生の魚の臭いが漂ってくる。素材の臭いを遺してるだけじゃないか!
「さぁどうぞ」
「いやぁ、僕缶詰的なのを想像……」
「まさか要求して置いて飲まないと言う選択肢があるでござるか?」
しょうがない。飲もう。血抜きをしてない生魚の血を啜ったような味がする。うん、無理。
勇者はチート。状態異常耐性高めのトキトーでも三半規管がシェイクシェイク。魔銃使いも胃がシェイク。何時この学園から出れるのか……というかこの街から脱出できるのだろうか……
それでは皆様また次回。