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王子

王は頭を悩ませていた。

悩みの種は世継ぎ問題である。王には子が一人しかおらず、もうすぐ齢30になろうとしている王子のみだ。

問題はその王子が、結婚どころか特定の女性すらいないのである。

国の跡継ぎが王子しかいない今、なるべく早く身を固めて、子供を儲けて欲しいものだ。

常々そう考えるのも無理はない。王自身も、齢60にもなろうという高齢なのである。

ただ、我が子ながら王子は性格に難がある。何でも自分の思い通りにいかないと気が済まない性質であり、もし思い通りにいかないようであれば、周りの者に平気で危害を加える。先日も、甘味の調達を任された家臣の1人が、味が気に食わなかった、想像していたものと違う、という理由で護身用の剣で切り裂かれたぐらいだ。

表には出さないが、恐らく家臣たちも王子に関わりたくないと思っているだろう。

「私の育て方が間違っていたのか…」

思わずため息が出る。王子が幼い頃に王妃を亡くしているため、王政を行いつつ、なるべくは教育に関わるようにはしてきたつもりである。

だが、やはり甘やかしすぎてしまったのか、あのような性格になってしまった。

大臣には相談をしてみたものの、王族を悪く言うことに対して気が引けるのか、ハッキリとした返事は返って来なかった。

かといって、王子を国外追放にしたり、処刑するわけにもいかない。

自分の世代でようやく国が落ち着き、安寧を保ってきたつもりだが、ここで跡継ぎである王子がいなくなり、自分がこの世を去ってしまった場合、必ず王位を狙う内乱が起こるだろう。それだけは避けねばならない。

ただ、このままの王子を王にしてしまった場合、何をしでかすかわかったものではない。

「愛する人を見つけ、その者の影響で、考えも変わってくれればいいのだが…」

我ながら甘すぎる考えだ。そんなことを考えながら、どうしたものかと日々頭を抱えているのであった。


そんな当の王子は、現在家臣のルカに対して、無理難題を押し付けていた。

内容としては

「自分専用の女性型AMが欲しい」

だった。

ただし問題がその内容にある。

警護用の専用AMと言うことであれば、すぐに宮廷DoMaに依頼しに行けたことであろう。だが、王子が要求してきたのは、今は禁じられているプロトタイプのAMが欲しいということである。

「表情も感情もないAMなぞ、ただの人形ではないか!」

小太りであるが、背は高く、鋭い目つきで睨まれたルカはたまったものではない。先日も1人斬られているのだ。ここで機嫌を損ねると自分も斬られかねないが…だが出来ないものは出来ない。

どうすべきか、と悩んでいるうちに脂汗が大量に出てきた。

その様子を見て、何か思いついたように王子がにやりと笑う。

「AMが用意できないと言うのであれば…そうだな…五日以内に母上そっくりのフューネルを作って持ってこい!それが出来なければ、お前は俺自らが斬り捨てて処刑する!」

王子はニヤニヤしながら、ルカの目の前に剣を突き付け、そう言い放った。

ルカが王子に対して、それは無理があることを説明しようとするが、王子は聞く耳を持たない。

「ええい、うるさい!今すぐ用意しにいかぬと言うのであれば、この場で斬り捨てても構わんのだぞ!?」

王子の機嫌が段々悪くなる。

ルカはかしこまりましたと言うしか出来ず、王子の部屋を後にした。


ルカは、城下街のDoMaを一軒ずつ訪問し、王妃の写真を持ってフューネルを5日以内に作成出来るか聞いて回った。

だが、城下のDoMaは依頼数もかなりの数があるため、どうしても5日での作成は無理という回答だった。王子の依頼であることを伝えると、なおのこと無理だと断られた。

当然だ。中途半端なものを作ろうものなら、店ごと消されかねない。

「…無理だ…俺はもう処刑されるしかないのか…」

昼間の酒場で1人途方に暮れていると、そこに1人の青年が声をかけた。

「おぉ、ルカじゃないか!久しぶりだな!元気にしてたか?」

幼馴染のカインが話しかけてきた。

本来であれば久しぶりの再会に話が弾むところだろうが、今回はそうはいかない。

何せ、自分の余命があと5日と宣告されているようなものである。

気のない返事をしてしまい、カインが心配そうな顔で正面の席に座った。

「どうしたんだよ、4年ぶりの再会だってのに…何かあったのか?それとも、悪いもんでも食ったか?」

ルカは、どうにもならないと思いつつも、誰かに話した方がいっそ気が楽だと思い、カインに打ち明けることにした。

「うわぁ…それはまぁ無理難題を強いられたもんだなぁ…」

目の前の泣きそうな顔で絶望している幼馴染を見て、自分にも何か出来ることはないか、とカインは考える。

ふと、先日立ち寄った村のDoMaの事を思い出した。

「そうだ…もしかすると、あの子の店なら間に合わせてくれるかもしれないな」

カインがそう言うと、本当か!?とルカがものすごい勢いで机を叩きながら立った。

バンッ!と凄い音が鳴ったことと、机に置いていた飲み物が床に落ちたため、周りの客もビックリしてこちらを見ている。

「まぁまぁ、ちょっと落ち着けって」

若干興奮気味で、藁にもすがらんとする勢いのルカを宥める。

少しして落ち着いたルカに対して、カインは続ける。

「先日、ふと立ち寄ったマデルという村のツインズという店で人形を作ってもらったんだが、1日で出来た上に、とても出来が良かったんだよ。良かったらうちにその人形を見に来るか?」

正直、中途半端なものを献上するわけにもいかないため、技量を測るために見に行きたいのは山々だが、今は時間が惜しい。

「今すぐその店に連れて行ってくれないか!?」

ちょうどカインもマデル村方面に用事があったため、ついでに連れていくことにした。

ルカは、まだ小さなものではあるが、希望の光を見出し、少し顔色が良くなっていた。

二人はフューネルを運ぶための馬車を用意し、マデルの村へと向かうのであった。

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