表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様だけど人間になりたい!  作者: 中谷キョウ
4/4

街へ行こう

「あんたら冒険者か? ありがとよ、あんたらがいなかったら有り金全部持っていかれちまうところだったぜ」

「小さい冒険者さん。ありがとね……」

「おにーちゃんとおねーちゃん、ありがとう!」

「……ありがと」


 俺とミカが助けた荷馬車は個人ではなくいわゆる乗り合いの馬車だった。

 馬車には何人か客が乗っており、彼らはみんな感謝してくれた。


 俺はほとんど何もしてないけどな。


「あ、そうだ兄ちゃん。もし、街まで行くなら乗ってくかい? 助けてくれた礼だ」

「そうだな。頼む」


 ってな具合に気前のいい御者のおじさんのおかげで近くの街まで送ってくれることになった。


 やはり、人助けというのはやっておいて損はないな。


「にしても兄ちゃんと姉ちゃん。そんなオンボロの装備で旅してるのかい。もしかしてかなり腕に自信のある冒険者だったりするのかい」

「い、いや、俺はそんなに……」


 強くない。

 強かったのは俺というよりミカだ。なにせミカはいつのまにか魔法を覚えたんだからな。


 先ほど、問い詰めてみたがどうやら、敵の魔法使いが使っている魔法をマネしたらできたとのことであまり要領を得ない。

 

 俺も同じ魔法を使おうとしてみたが発動しなかった。もしかして才能とかの問題なのか。それとも天翼人という種族が特別なのか。


 正直わからないことだらけで頭が混乱しそうだ。


「姉ちゃんもすげぇな、天翼人なんて初めてみたぞ」

「天翼人ってそんなに珍しいんですか」

「ったりめーだろ、兄ちゃんの故郷はどうだかしらねーがこの辺りは人間の土地だ。亜人種で数も少なくて人間嫌いと名高い天翼人がこの辺りに来るなんてことはこれぽっちもねぇ」


 なるほど……天翼人という種族はかなり珍しい人種のようだ。

 見た目が天使に近いから種族的に上位なのかもしれない。


 にしてもやはり情報は大事だ。

 早くこの世界に慣れるためには情報を集めねばならない。


街へ着くにもまだ時間がかかるらしいから今のうちにこの馬車にいる人の話を聞いてみるのもいいのかもしれない。


 俺はさっそく、近くにいた女の子に話しかける。

 女の子はおばあちゃんと二人旅らしく。いろんな話を聞かせてくれた。


 “アルンテル”の神話にこの国のことなどたくさんの情報を手に入れることができた。


 まず、いまいるこの国はヴェイスランド公国というらしい。

 豊かな森に囲まれた小さな国で近くには共和国や帝国と呼ばれる大国もあるらしい。

主な人種は人間種だが、亜人である獣人やホビット、ドワーフといった者も住んでいるらしい。


 そのほかにもヴェイスランド公国で使われる通貨を教えてもらった。カバンの中に入っていた通貨はこのヴェイスランドのもので銭貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、魔鉱貨があるらしい。すべての貨幣は100枚で次の貨幣の価値を持つ。銅貨以上の貨幣には半銅貨、半銀貨のように半分の価値を持つ貨幣もある。


 宿代の相場が1日、銅貨3~5枚ほどで食事代が一食、銭貨10~30枚。全部、安く済ませた場合の金額などで上質な宿とか食事を選ぶともっと高くなる


 俺が持っているのは銀貨1枚と銅貨2枚、半銅貨2枚。ミカのカバンにはお金が入ってなかったので実質1人頭、半銀貨1枚、銅貨1枚、半銅貨1枚ほどしかもっていないことになる。


 女の子のおかげでいろいろと整理することができた。

 

 次に俺は馬車に乗っているもう一人の人物との会話を試みる。

 緑色のフードを被った、みるからに不審な人物だ。


「おい、ちょっといいか」

「……」

「無視かよ!」

「なに?」


 俺が悪態をつくとフードの人物は瞳を俺へと向けた。

 深いエメラルドグリーンのきれいな瞳だった。深く、吸い込まれるような不思議な色をした瞳。

 ゴクリと喉が鳴る。こんな瞳を天界以外で見ることになるとは思いもよらなかった。

 しかし、その瞳からは何かとてつもなく不安を駆られる何かを感じる。

 まるで天使をにらみつける悪魔の手先のようだ。


「なぁ、お前は――」

「礼なら先ほど言ったわ冒険者君」


 フードの中から聞こえたのは少女の声。年は俺やミカとあまり変わらないだろう。


「いや、お礼はいいよ。馬車に乗せてもらったからね」

「じゃあ、何の用? 私、あなたみたいな貧乏冒険者に興味ないんだけど」


 なんだコイツ。思った以上にムカつく奴だ。


「えと……世間話でもしようと思ったんだ」

「ふーん、見かけによらず攻めるタイプなんだ」

「攻めるタイプって、俺はただいろいろと話が聞きたいだけなんだ」

「話が聞きたいだけね……だったら、他を当たりなさい。私はあなたと話をする気なんてないもの」


 フードの少女はそれだけを言い残すとそのまま俺から視線を外した。

 

 俺とは話す気はないらしい。

 なんか、ムカつくな。そうだ、コイツのステータスを覗いてやろう。

 さきほどの野盗どもは無能すぎて参考にはならなかったけど、この少女なら一般人のレベルがわかるかもしれない。


「[ステータスサーチ]」


>ステータス

 名前 :アーシャ・ナトル

 種族 :人間

 職業 :帝国暗殺者

 年齢 :14

 性別 :女

 ランク:128

 祝福 :体67力54技109速122心45

 魔法 :火-風10水-土9光-闇-無9

 スキル:人見知り10

     騎士20

     近接格闘101

     高速戦闘78

     投擲107

     鷹目39

     暗殺者43

     魔眼52


「は?」


 彼女のステータスを見た俺はさぞかし間抜けな声を出していただろう。

 俺どころか先ほどの野盗でさえ彼女のステータスにまったく追い付いていない。

 それに職業欄には“帝国暗殺者”という謎の職業。

 

 これはあまり触れていいものではなさそうだな。

 君子危うきに近寄らずともいうし、この少女には触れない方がいいだろう。

 彼女もそれを望んでるからな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ