筋力パネェ
すまねぇ……すまねぇ……忘れてただけなんだ……プロットは残ってるから許して。
「それじゃ行こうか……の前に最後にやることだけやっておこうかな」
「えっと……?」
ブライト博士について行く楓雅、だがブライト博士が振り返り驚く。その手にはナイフが握られていた、そしてこう宣う。
「痛いけど我慢してね、多少の傷なら簡単に直せるから」
そして思いっきり楓雅の左腕に突き刺す。風雅はその痛みに、熱に驚きブライト博士を突き飛ばすと……
「うぐぁ!」
「は?ちょ、ブライト博士!無事か!」
後方に数メートル吹き飛びその場で倒れるブライト博士、すかさず傍に近寄るが不敵な笑みをその場で浮かべるブライト博士に楓雅は
「ぐっ……まさかとは思ったけど……身体能力や固有の能力すら受け継いでるとはね……これは、試しがいがある……!」
「ちょっと?無事?」
「無事じゃないね……!これを持ってDクラス職員のとこに行ってくれると嬉しいんだけど」
そういい首にかけている首飾りを楓雅に渡し、気絶するブライト博士。どうやら内蔵が傷つき生命維持が難しくなったようだ。
呆然としていると廊下の先から幾人かの博士らしき人物や警備兵がこちらに向かってくる。
「……また無茶しましたか、これだから天才というものは分からない……」
「あの、これをどうすれば」
「ん?あぁ……そこの君、用済みのDクラスっていたか?居る?ならそいつに渡してきてくれ、案内は頼んだよ」
そういい敬礼をした警備兵は楓雅を連れその用済みのDクラス職員がいるらしき人物のところに向かう。
「なにかすみません……」
「ブライト博士のことなら、いつもの事なんですよ……始末におけない……優秀だからこそ捨てられないのは皮肉です」
だいぶ苦労してそうだった。溜息をつきながらも動きは澱みなく動いていた。
しばらく歩いていると収容施設らしきとこに着く、そこの一室をあけDクラス職員らしきオレンジ色の服を着た人物に迫る。
「D-2258、これをつけろ」
「あぁ?いきなりなんだよ、今日は実験ねぇんだろ?そこのなよなよしたガキンチョの指示かい?財団ってのはコネで就職できるのか、こりゃ驚きだ」
「黙れ、さっさと付けろ。それで終わりだ」
「ったく、頭頑固なおっちゃんだ……ほれ、ガキンチョ早くよこしな」
「あ、は──」
「油断してんじゃねぇよガキ!ほれ、動くんじゃねぇぞおっさん」
「はぁ……やっぱりそうするか、だが……油断しないことだ。そいつは」
首飾りをDクラスに渡そうとした瞬間に首を捕まれキメられてしまう、が先程の出来事のことがあり力が異常な程あることを知っている楓雅は予断なく……腕をへし折る。
「ぐぅあ!?」
「尋常じゃない筋力を持っているらしい、ブライト博士が身を呈したから分かったことだがな。さて、拘束するか……抑えられるか?」
「えぇ……まさかここまで動揺しないとは」
力を持っているから油断をしたわけじゃない、そんなことではなくもっと本質的な部分で彼を殺す者はこの場にいないことを理解していた、だから油断をした、せざるを得なかった。
「そこら辺は動揺しなくていいんじゃないか?俺達も既に異常な存在なんだ。慣れてきたら気にしなくなるさ」
死を終了というふうに認識し、簡単に人を殺し殺され、気にしない。それがここにいる財団職員の意識である。だからこそこの警備員は人の心をまだ持っている楓雅のことが気になっている。だが、博士の助手と警備員は接点がない。次会えるのかは分からないな、などと新鮮な気持ちで目の前にいる青年のことを見ていた。
楓雅は拘束されたDクラスの首に首飾りをかけると……口調と雰囲気が変わった。
「腕が痛いな。楓雅くん、派手にやったね?私の体なんだが……」
「博士、新しい体を御所望で?」
「要らないかな、多分次の実験で死ぬだろうし」
「了解」
そんなこんなでテキパキと拘束を解いてその場から立ち去る警備員。そして折れた腕を垂れながら廊下へと出ていくブライト博士。
「いいのか?」
「問題ない、さて実験の時間だ……今のでわかったからより安心して行えるよ」
「どういうことだ?」
「腕見てみなよ、私は確か君のことをナイフで刺したはずなんだが……」
傷口はふさがっていた、どころか傷の跡すらなかった。これを見て博士はひとつ確信を得る、それを確信から確定へと移すために機動部隊がいる射撃場へと向かうのだった。