ある人の来店、ある人の告白
少し大人びた雰囲気の、白いワンピースを来た少女が初来店した。ウェーブの掛かった長いブロンドヘア、大きく透き通った青い目が印象的だ。名前はシューリさんという。
「シューリさん、今日はどうなさいますか?」
「バッサリと短くして下さい。折角なのでカラーもお任せで」
そんな注文だった。短くするのも、こちらのさじ加減で良いそうだ。そしてカットしていく。
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「良いですね!動きやすそうです」
「シューリさんの元の癖を活かして、ゆるふわのショートヘアです。ムースタイプのワックスを使って、セットすると可愛いですよ」
「へぇー、そうなんですか」
「最後にちゃんとセットの仕方も、お教えしますから安心して下さい。それじゃカラーの準備に入ります」
この街には初めて来たそうだ。折角なので、美容の盛んな街を満喫するそうで、色々買ったりもしていくそうだ。パラレルの来店もその一貫だそう。バッサリと切りたくて、しょうがなかったらしい。そしてバッサリと切ったヘアは、とても似合っている。我ながら上出来だ。
※※※
「私でも…こんな色になるんですね…」
「シューリさんの髪は元がブロンドなので、薄く淡いベージュを乗せました。柔らかい雰囲気になるんですよ。そして内側に、少しだけ暗めのアッシュを入れました。これで首が細く、顔が小さく見えやすくなります」
「それは凄いですね。でも優しくて綺麗な色ですね。とても気に入りました!」
「ありがとうございます。それじゃ最後にスタイリングしていきますね」
カラー中は、僕がこの世界に来てからの話を聞かれた。文化を広めて良かった事や、楽しかった事等を聞かれた。悲しかった事や、辛かった事も聞かれたが、それははぐらかした。カラー自体はお任せだったので、優しく見える色を選ばせて貰った。
「ムースを毛先からこうやって…揉み込むように付けて、馴染ませます…少し残ったのを根元に付けても良いですね。少し濡れてても良いですよ。その方がウェーブが出ますから」
「なるほど…」
「その後にもう一回…ドライヤーを掛けます。毛先を優しく揉みながら…てっぺんは、強く握っても良いです…こうやると…ボリュームも出ますから」
「凄い!魔法みたいですね!」
「ははっ、ありがとうございます。でも慣れれば誰でも出来る、簡単なセットですよ」
「ふふっ、そうですね。でも奥が深い…知らなければ、何でも魔法に見えるもんですからね」
「確かにそうですね」
仕上がりには、とても満足してくれた。僕も上手く出来た自信がある。
※※※
「今日はありがとうございました。商品も調子に乗って、沢山買っちゃいました」
「良いヘアスタイルや髪質を維持する為には、必要な物が多いですからね…沢山買って頂き、ありがとうございます」
「またいつか…」
「ええ…」
もう帰られる…。しかし、僕はずっとシューリさんが来てから、気になっていた事を聞かせて貰う。
「あの…シューリさんて…リリーシュ様ですよね…」
「……」
「多分ですけど…声も同じだし…何となくなんですけど、雰囲気に違和感が…」
「…キクチ…正解です!」
やっぱり。何か人ではない、神々しさがあるというか…。
「バレちゃうか~!でも気付いてくれて嬉しいよ!」
「思ってた通りの、お茶目さんで安心しました。鬼の様な人だったら、困ってましたよ」
「ふふっ、何言ってるの。まぁとにかく、この世界の為に頑張ってくれてありがとう。勝手な我が儘に付き合わせて、ごめんなさいね」
「いえ、僕達も楽しく過ごしてますから。オシャレを広めるという、勝手な使命感はありますけど。リリーシュ様は、それを求めてたんですよね?」
「そうよ。この世界がいつまで経っても、ダサかったからね。それで…繋げちゃったの、あなたの店とこの世界をね」
僕達は間違って無かったんだな。それなら良かった。
「やってきた事が無駄じゃなくて、本当に良かったです」
「うん、ありがとう。それで…言い辛いんだけど…今繋がっている道を、塞がなきゃいけなくてね…」
「えっ、パラレルのですか?」
「そうなの…ちょっと時空が歪んできてしまって…」
という事は、パラレルは普通に日本で営業するって事だ。この街からは無くなる…。
「でね…もし、ここに残りたいなら…残ってもいいし…帰りたいなら…」
「いつまで待てますか…」
「そうね…この世界にパラレルが来た日に、合わせましょうか。1月10日に…折角なので…そこまでなら問題にはならないでしょう」
「わかりました…じゃあその日の…夜中十二時きっかりに戻して下さい。1月10日になる瞬間ですね。そこで店内にいた者は、日本に帰ります…」
「わかったわ。そうする。それじゃ他の日本人には聞いておいてね。後腐れの無いように…ごめんね急になってしまって…」
※※※
その後、もう少し詳しく話を聞き、リリーシュ様は立ち去っていった。そうかぁ…とうとうこの世界を去る日が来るのか…。
「店長…ずっと気になってたんですけど、さっきの人って…もしかして…」
「そうだよ。リリーシュ様だった」
「ああ~!やっぱり!話し掛ければ良かった…」
後で皆に報告しなきゃな…。どうやって報告しよう…。スタッフ達、サイトウさんやカズヤさん、この世界の人々にね。皆はどんな反応をするのかな…。




