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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
98/136

※美容師ナナセ、好意と決意※


 店長とオドリーヘ様が、お店から出ていっちゃった。どこかで話でもするのかな…。こっそりと尾行したいな…。



「よし!後をつけるぞ!影も場所を把握しろよ!」


「はっ!」



 ジーク様の命令に、どこからか声が聞こえる。隠密をそんな事に使うなんて…アリだな。



「ジーク…そうね。そうしましょう!」


「ジーク様、ディーテ様…」


「何やってるんだ。行くぞ皆で!」



 何だかんだで、皆で出てきてしまった。マダマダ様を残してね。まぁ正直、私も気になるしね。お姉ちゃんなんかは、こっち見てニヤニヤしてるし。もうっ!そんなんじゃないよ!



「あそこの広場か…」


「きっと…あそこのベンチに座るぞ」


「よしっ!皆散るんだ!」



 皆は高い身体能力と魔法で、近付いて身を隠すみたい。バレないように上手くやってよね!私はお姉ちゃんとカズヤさんと一緒に、こっそりと茂みに潜む。距離は五メートルって所かな。何かドキドキする…。



「何かワクワクするわ」


「マイも?俺もだよ。学生みたいだな」


「二人共、声を小さくしてよ。バレちゃうよ」


「あら、そんなに気になるの?」


「ナナセもお年頃だもんね」



 くそー!二人のペースだ。いつか仕返ししてやる!まぁ、とにかく今は店長達を監察しなきゃ!



※※※



「なるほど…それで、漫画化されたんだ」


「まさか、大人気になるなんてね」



 さっきから二人は、たいした話はしてない。でもちょっと楽しそう。盛り上がっちゃってるもんね。



「で、キクチさんはどう考えてるの?」


「何を…ですか…」


「わかってるでしょ?」



 イヤー!何の話をするの?聞きたいけど、聞けないよー!でも気になるしなぁ…。店長なんて答えるの?



「私の事に決まってるわ。そもそも私はあなたと結婚したいなんて、一言も言ってませんよ」


「えっ」


「たまたま、あなたの出した条件に、私が当てはまっただけです」


「そっそうですよね」


「それで、条件に一致した私をどうしたいんですか?」


「……」



 店長!何とか言って下さいよ!それにオドリーヘ様は好きではないのか…。うーん。じゃあ何でここに来たんだろ?



「私と結婚しても良いんですね?」


「えっいやっ」


「じゃあ、私が嫌いなんですね」


「まっまさか、そんな事は」


「じゃあ良いですね。結婚しても」


「そっそれは」


「私…キクチさんと話していたら段々と…好きになってきて…」


「えっ」



 そっそんな!店長もはっきりと、言ってしまえば良いのに!断れば終わりなんです!



「私を邪険にしないで下さい…」



 少しづつ、体が近付いていく…。そんなの…。店長も離れてよ…。お姉ちゃんやカズヤさんも、何とも思わないの?



「私は本気ですよ…」



 口元が近付きつつある…。まさかっ、きっキスをする気じゃ?



「オドリーヘ様…」



 もう顔の距離はゼロに近い…。やだよ。店長…。私から離れて行かないで!やめてっ!



「だっダメ~!私が許しません!」



 思わず飛び出してしまった…。やってしまった…。



「あっあれ?ナナセさん…何がダメなの?」


「てっ店長!何を言ってるんですか!さっき顔が…近く…キスしようと…あれ?」



 二人の距離は離れている…。どうなってるの?



「まさか私とキクチさんが、キスでもしてると思ったのかしら?」


「えっ?そんな事してないけど…ただ喋ってただけだし…」


「きっと魔法でも掛かってたのよ。魔法にね」



 そう言ってオドリーヘ様は、ウインクをする…。まっまさか…!やっやられた~!きっと幻覚でも見せる魔法だ!



「良かったわね。素直になれて。気持ちがはっきりしたんじゃないの?」


「えっ?何を話してるのさっきから。ねぇオドリーヘ様、ナナセさん」


「なっ何でもないです!店長は黙ってて下さい!とっとにかく、私が認めない限り、店長には結婚させません!」



 訳わからない事を言ってしまった。穴があったら入りますよ。速攻でね。



「なっ何それ、ナナセさん」


「素直じゃない方ね。まぁとにかく私も結婚する気はないしね。まだ武人としても上り詰めてないしね」


「マダマダ様が、張り切り過ぎなんだよ」


「えっ?」


「いや、僕から言う前に、オドリーヘ様からも断られたよ」


「問題になっちゃってごめんなさいね。でも会って話したかったのは、本当だから。これからも一人なら、いつか結婚をお願いするかもね」


「僕も独り身で寂しかったら…」


「ゆっ許しません!店長は寂しくさせませんから!」



 さっきから何を言ってるんだ私は!オドリーヘ様に、良い様にやられてるよ。穴に入った私を、上から蓋閉めて閉じ込めて!



「まっそういう事で、今日は帰るわね。お店の二人の連携は素晴らしかったわ…それこそ長年の夫婦みたいでね。とにかく、お二人共仲良くね。じゃさよなら~」



 そう言って、オドリーヘ様は去っていった。手の上で転がされた…。私の事わかってて…。



「何だったの…結局?」


「店長は知らなくて良いです!」



 そして皆が出てくる。野次馬集団がね。



「イヤー流石だよナナセ!さっきの威勢は!」


「あの女がナナセに魔法を使ったけど、悪意は無さそうだったし、面白かったわ」


「ナナセやるじゃない。何が見えてたか知らないけど、止めようとしたんでしょ?」


「ダメ~!だってさ!可愛いナナセが見れて良かったよ」


「何が見えてたのかな~!教えて貰わないとね!」



 まさか私だけに、ピンポイントで魔法を?私だけバカみたいな事に?



「俺達の気配にもちゃんと、気付いてたもんな」


「いやいや、中々の武人だよ…優勝しただけはある。幻覚魔法も素晴らしいしな」


「私達にも、合図送ってくれてましたから」


「ああ、今から面白い事しますから、見てて下さいねってな。表情でわかったよ」



 そんな事までしてたの?全てお見通しで、私をからかったんだ。完璧にやられたよ。



「僕だけ蚊帳の外?何なのいったい皆して…」


「キクチは関係ないわ」


「ディーテ様の言う通りよ」



 そんな感じで帰る事に。



「何だったの?ナナセさんこれは…」


「店長は知らなくて良いんです!とにかく私が頑張りますから、店長はのんびり待ってて下さい!」


「のんびりって…」



 私は多分店長が好きだ。人として、多分男性としても。横に並べる素敵な女性になったら、告白してみようかな。それとも告白される為に、努力をしてみるかな。取り合えず、胸を大きくしなきゃかな?とにかく頑張りますからね!



※※※



「まだかな…」



 パラレルには一人取り残された、マダマダ様が皆の帰りを待っている。そして、結果を聞いて落ち込む。ごめんねマダマダ様、私も邪魔するからね。



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