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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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ナナセの苦悩、リリーシュ連合国の感謝


 武闘大会も終わり、僕達は帰ってきた。美容学生や孤児院の子供達は、とても大会やラヤマの街を楽しんだ様だ。オーパイさんやマイさん達も満喫したみたいだ。帰りの魔動バスや魔動車でも、興奮覚めやらず皆は盛り上がっていた。でも僕とナナセさんだけは、暗く無言だった。ずっと考えていたからだと思う。人の死について…。



「そう…そんな事が…ナナセも可哀想に…」


「アタシは冒険者だったから…慣れてる訳じゃ無いけど、人の死は沢山見てきたから…それに悪人を殺した事もあるしね…」


「それがこの世界では、本来当たり前なんだよ。魔物もいるしね。僕達は運が良い。魔物って言っても、ワイバーンと竜王様くらいしか会ってないしね」


「逆に凄いけどね…普通そんな事無いよ…」


「僕達はリリーシュ様に、守られ過ぎているかもしれない…この世界と日本を、ごっちゃにしてはいけないよね…」


「ナナセも早く立ち直って欲しいけど…キクチくんも無理しないでね」


「ありがとうございます…僕は大丈夫だけど…」



 マイさんやオーパイさんも心配してくれている…。ナナセさんにも元気になって欲しいよね。



※※※



 暫くしても、ナナセさんはどこか元気が無かった。表面上は元気に仕事をしてはいるけど…。



「そうか…でも申し訳無いが、教皇は死ぬ以外の選択肢は無かった。最低でも死、最高でも死だ。楽か辛いかの差しかない。そしてあの死は楽だ」


「ジーク様、わかってます。ただ、割り切れないんだと思います」


「そうだな…もう向こうの大陸は、慌ただしく動き始めてるのにな…教皇の親族や、罪の重い関係者も処刑された…」


「何人ぐらい…」


「約四十人だ…」


「そんなに…」


「本来ならもっと多いはずだ…二百人を越えてもおかしくない…大国だったからな、かなりの恩赦だろう。でも罪は消えない。これからの国造りに励んで貰うさ」


「そうですか…」



 それでもかなりの人は死んでいる…。もし僕がこの世界で目立たなければ、今も教国の方は生きていたかもしれない…。でもいたからこそ、戦争が止められたかもしれない…。僕達はこの世界に、良くも悪くも大きい影響を与えているんだな…。きっとナナセさんも、そこら辺を考えているのかもしれない…。



※※※



 そしてある日の営業終了後、知らない二人組がやって来る。



「キクチ様とナナセ様に、お会いしたいのですが…」


「あっ僕がキクチですけど」


「ナナセは私です…」



 何だろう、神妙な顔付きだ…。



「「ありがとうございます!」」


「「えっ?」」


「私達は新しくなった、リリーシュ連合国の者です。まだ何者でも無いですけどね」


「それが何故…?」


「ただ、お礼を伝えたかったんです。キクチ様の育てた文化と、ナナセ様の育てた魔法が教国を倒してくれた」


「そんなに偉そうな事は…」


「私もそこまで…皆さんが頑張って…」



 あまり、持ち上げないで欲しい。それに責任を負いたくない。特に生き死にのね。



「いえ、違いません。間違い無く私達は、あなた達に助けられました。教皇達から救って頂きました。本当にありがとうございます」


「止めて下さい!私達が殺したみたいじゃないですか…」


「…?直接は殺して無いかも知れませんが、間接的にはそうなのでは?」


「あまり僕達は…人の生き死に慣れてなくて…」


「そうですか…それは申し訳無い…では失礼かも知れませんが、ナナセ様は私達に死んで欲しかったのですか?」


「そっそんな訳…」


「では良いじゃないですか。教皇が死んだからこそ、何万人もの命を救う事が出来ました。だから私達は、こうしてお礼を伝えに来たんです」


「これは…ここに来れない者達の、お礼の手紙です。沢山ありますが、是非見て欲しいです。中には拷問を受けて、今も動けない者の手紙も沢山あります。無理して筆を取り、救ってくれた感謝を伝えたい一心で手紙を書いたそうです」


「そんな酷い人まで…」



 本当に喜んでくれてる人が、沢山いるんだろうな…。



「教皇を一人や、親族等何十人死んだ事を気にするなら、何万人もの見えない命を救った事を誇って欲しいです。そして今まで圧政で死んでいった、何万人もの命が無駄では無かったと、思わせて下さい。あなた達が教皇達の命を気にするなら、私の死んだ娘やコイツの死んだ妻になんと言えば…」


「あなた達も…」


「すいません…」



 そして僕達は何気に手紙を読んでみる…。



「店長…これっ…」


「うん…うん…」



 そこには沢山の感謝の言葉や、これからオシャレをしたい、いつかパラレルに来る、良い国にする等、多くの前向きな言葉だった。



「まだ動けないけど、動けるようになったら絶対お礼を言いに行きます」


「これからは俺達も胸を張れる良い国にする」


「悪者を倒してくれて、ありがとう」


「いつかオシャレを教えて下さい。漫画も読んでみたいな」


「娘の仇を討ってくれて、ありがとう。これからは前を向いて頑張ります」



 本当に、色んな言葉がある。とても読みきれない…。そしてナナセさんは泣いている…。



「私達はこの世界に来て、良かったんですよね…」


「うん…僕はそう思うよ。ここに全部書いてあるからね」


「何を悩んでたんだろ…」


「本当にね…ただ困ってる人を助け、オシャレを普及して、笑顔の絶えない世界にすれば、良いだけだよ」


「そうですね!店長!」



 そして二人組は、笑顔で帰っていった。僕達も笑顔で見送る事が出来た。ナナセさんも晴れた顔をしている。



※※※



「私のせいで…多くの人が死ぬと思うと…怖くなって…この世界の住人じゃないのに…」


「そうだね」


「でも私のおかげで…救われた人も…多くいるわけで…」


「そうだね」


「だから…これからも沢山救える様に、頑張ろうと思います…!」


「そうだね!そうしよう!因みに、僕はナナセさんの笑顔で、救われるけどね!」


「えっ…」


「なんちゃってね!」


「……」


「あれ?どうしたのナナセさん…」


「何でも無いです!バカ店長!」


「えっ!?」



 何故か怒り始めたナナセさんだが、ひとまず僕達は落ち着きを取り戻した。これから来る新しい騒動に、気付かないまま…。




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