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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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エルフィ訪問、エルフの願い


 ある日の営業終了後、ギルデさんとエルメスさんが父娘でやって来た。



「キクチ、知恵を貸してくれないか?」


「キクチさん、私からもお願いします」


「別に構いませんけど…何ですか?」



 面倒なお願いは勘弁だけど、出来る事はして上げたいからね。



「実は…エルフィにある守りの木が…枯れてきていて、何とかしたいんだ…」


「長年エルフィを見守ってきた木で、私達もどうにかしたい」


「樹齢もあるんじゃ…」


「そうかもしれないが、エルフィの森を守る結界があるんだが…その木が結界を張ってるんだ…」


「魔獣が嫌う何かを、周りに出しているんだ。それが少しづつ弱まってる」


「そうですか…」



 その結果、エルフィに行ってみる事にした。観光も兼ねてね。一応それなりの準備はする。少しでもエルフィの為になればと思う。



※※※



 エルフィの森までは、そんなに遠くないので魔単車で行く事にした。初めての異世界ツーリングだ。今までのお礼という事で、一台サイトウさんから貰ったのだ。日本でバイクの免許は持ってないけど、魔単車は操縦も楽だし、免許も要らないからね。ギルデさんやエルメスさんも、購入済みだ。冒険者には役に立つしね。三人でのツーリングを凄く楽しみにしていた。が…。



「気持ち良いですね!最高です!」


「ナナセちゃん!勝負しようぜ!」


「私も負けませんよ!」


「私に勝てる気ですか?この天上剣舞のギルデに!」


「やっ!止めて~!怖いよ~!」



 いつの間にか、ナナセさんとアントレン様が参加する事になっていた…。案の定ではあるが、ただ楽しそうという理由でね。しかもナナセさんは最初、僕の後ろに乗っていたのに、遅いという事ですぐ交代させられた…。更に揃いも揃って、全員スピード狂だ…。誰も味方がいない…。安全運転でお願いします…。



※※※



 そして、エルフィの森らしき場所に着く。



「ここから先は、少しスピードを落としましょう」


「やっとか…怖かった…」


「店長、だらしないですよ!楽しかったじゃないですか」


「ふふっ、因みにあの先にある大きな木が、守りの木です。ここからでも、見えるだろう?」


「相変わらず、でけぇな。でも確かに少し葉が減ってきてる様な…」



 そのまま僕達は森に入っていく。森の中は壮観で、美しかった。神聖な森なんだろうな…。



「ここから先は、街…というよりは集落ですね。この先に長もいますので、挨拶してから守りの木に向かいます」


「わかりました」



 エルフの集落は、見ていて楽しかった。木造りで出来た家が、ログハウスみたいでオシャレ。更に木の上にも家があったり、美しい人も多かったりと見所満載だ。逆に僕達も珍しいらしく、注目されていた。特に魔単車だけどね。



※※※



 そして一際大きい家に案内され、そこでエルフィの長と会う。歳はわからないが、人間で言えば70歳位に見える。きっと昔はイケメンだったと思う。



「わざわざ来てくれて、すまんのう。儂がエルフィの長、チョローウじゃ」


「今日は、よろしくお願いします」


「早速で申し訳無いが、すぐにでも守りの木を見て貰いたいのじゃ。最近では、魔獣の侵入も増えてきたんでな」


「わかりました」



 それから僕達は、歩いて守りの木に向かった。すぐ近くだそうだ。そして魔単車に興味津々なエルフの面々に、魔単車を貸して上げた。危険は無いらしいし、新しい物に触れるのも大事だからね。



※※※



「これが…守りの木…凄いですね…」


「大きいです!」



 守りの木は、壮大だった。しかし確かに枯れてきている様だ。でも僕は、対策を練ってきたからね。インターネット様のおかげだ。



「じゃあギルデさん、エルメスさん、アントレン様、周辺の木を魔法で抜いて下さい」


「そっそんな事して、大丈夫なのか?」


「ええ、チョローウ様、多分周りの木に栄養を、取られ過ぎてるんだと思います。木を育てるには、ある程度の間隔も必要です」



 インターネットの知識を、活用する。僕は森林を詳しくはないからね。そのままギルデさん達は、土魔法なのかわからないけど、木を抜いていく。アントレン様は力業で抜いてるけどね。



※※※



「次はこの肥料を、守りの木周辺の土と混ぜます。これも魔法でやっちゃって下さい」



 僕はギルドに借りたマジックバッグから肥料を取り出し、更に指示を出す。これも園芸店で、買ってきた物だ。この世界では、僕達が使っている物の効果が高い。きっと効果が出るはずだ。



「これで、どれくらい回復するのじゃろうか…」


「きっと、上手くいくと思います」



 そのままギルデさん達は、周辺の土を隆起させたりしながら、肥料を混ぜていく。またしてもアントレン様は、手作業だ。楽しそうだから、まぁ良いか…。



※※※



「よし!終わった!」


「これで上手くいくと良いんですけどね」


「きっと上手くいくさ。キクチはうちのギルマスの髪だって、生やしたじゃないか」


「そういえばそうでした。ふふっ」


「確かに…守りの木の鼓動が…変わったかも…」



 一通り終わった。後は結果を待つのみだ。でもそこでナナセさんが…。



「ギルデさん、エルメスさん…ちょっと良いですか?」


「どうした?ナナセ」


「ナナセさん、何ですか?」


「木に手を当てて、魔力を流し込んでみて下さい。魔法を放ってはダメですよ!木に魔力を与えるイメージです!」


「あっああ…」


「わかった…」



 突然のナナセさんの指令に、ギルデさんとエルメスさんは戸惑いながらも行動する。そして手を当て、しばらくすると…。



「まっ守りの木に、葉が…」


「木から感じる、この力強さは…」


「長!他のエルフも呼んで下さい!私達の魔力では足りないかも!もっと注いでみましょう!」



 チョローウ様はエルフを呼びに行こうとしたが、既に異変を感じたエルフが集まり始めていた。



「どうした!…守りの木が…回復してる?」


「何があったんだ!…えっ?」


「お前ら驚くのは後で良い、手伝ってくれ!魔力を守りの木に、受け渡すんじゃ!」



 あれよあれよとエルフは集まり、守りの木に魔力を与えていく。明らかに、木が元気になっていくのがわかる。何故なら花が咲き始めたからだ…。



※※※



「店長…これって…」


「うん…桜だね…しかもソメイヨシノ…」



 エルフ達は、驚きと喜びに満ち溢れている。そりゃそうだ、ここまで復活するとは思わなかったんだろうしね。僕達も驚いている。まさか桜だったなんて思わないよ。



「キクチ様、ナナセ様、長として皆を代表して礼を言わせて欲しい。ありがとう」


「いえ、そんなに僕は活躍してませんし」


「そもそも皆さんの魔力が、沢山あったからですしね!」


「いや、違う。周りの木を抜いて、肥料を与えた時点で、守りの木の鼓動は感じてたからのう。それに、儂が知る限り花が咲いた事は、一度もないはずじゃ」


「えっそうなんですか?」



 それは驚きだ。確かにこれだけ大きいと、栄養が届き難いかもね。これからもたまには魔力を注いで欲しい。



「こうなったらやっぱり、名前を変えましょう。『世界樹ソメイヨシノ』です!」


「世界樹…なんて素敵な…」


「ソメイヨシノ…美しい…」


「よし!皆!たった今からこの木は『世界樹ソメイヨシノ』じゃ!」



 それからは宴会だ。花見をしながらね。折角だから桜の塩漬けなんかも、教えて上げた。そしたら行動が早く、魔法で一気に作ってジュースやお酒になったよ。それが更に、自分達の体力や魔力を回復させたから、更に大騒ぎになった。新しい商売にするそうだ。



※※※



「今日は、本当にありがとうございました」


「「「「「ありがとうございました!」」」」」


「また、お花見に来ますね!」



 僕達は宴会も程々に帰る。明日も仕事だからね。作ったばかりの、桜のお酒に桜の塩漬けや、エルフィの果実のお土産も沢山貰ったし、有難いよ。魔単車を中々返してくれないのには困ったけどね。エルフにはスピード狂が多いみたい。そしてその場を去ろうとしたら…。



「キクチ…ナナセ…エルフの皆さん…世界樹をありがとうございます…皆さんに祝福を…」



 また優しい光と共に、リリーシュ様の声が聞こえてくる。久々の登場だ。その後はまたエルフ達は狂喜乱舞だよ。つまり一件落着だ。



※※※



「また今回も楽しかったですね!」


「まあね。またエルフィには行きたいね」



 僕達は、日本では絶対出来ない、飲酒運転をしながら帰ったよ。ごめんなさい…。でも魔法で安全だから、安心して帰ってきた。何だかんだ盛り上がって、そのままアントレン様やギルデさん、エルメスさんと、パラレルで桜酒を飲み明かしてしまった。まさかこんなに美味しいとはね。でも翌朝まで飲み続けたせいで、出勤してきたオーパイさんとマイさんに、しこたま怒られたけどね…。鬼神降臨寸前だったよ…。あれは僕達を駄目にする、魔法の酒だった…。美味しすぎる物には、気を付けよう…。



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