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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
81/136

※美容学生フリンカザー、経営不振※


「何か違う気がする…」


「カザーそんなに気にしなくても…そのうち」


「いや、このままだと無理なんじゃ…」



 その時の俺は悩んでいた…。それは何故か。学生で経営している美容室『ルーキーズ』が、あまり上手くいっていない気がするからだ。だから寮に戻り、皆と相談をした。



「皆はどう思う?このままで、大丈夫か?」


「確かに…そんなにまだ繁盛してないけど、私はもう少ししたら、リピーターも増えるんじゃないかと…」


「カーナはそう思うか…ミナはどうだ?」


「私は不安だ。明らかにパラレルとは違う。緊張感に欠けるからな」



 そうだ。言い方は悪いかもしれないが、監視者がいないのは自分達を堕落させる。でもそれだけじゃないんだ…。



「そうなんだ。下級生の指導も、パラレルの勤務も、緊張感はあるが…」


「そうだね。でも緊張感があれば売上が上がるって訳でも無さそうだけど…」


「そうだな…キーの言う通りだと思う…」


「キクチさん達ほど上手くもないけど、でも値段も低いから…これから変わってくるかも…」


「そうか…」



 皆の中でも不安は多少あったが、答は出ない…。結局その時は、それくらいの話で終わった。



※※※



「売上が下がってる…」


「嘘っ…こんなに?」


「そんなに私達は…下手なの…?」



 ルーキーズの売上は週事に下がっていった。普段俺達は週交代で、学校、パラレル、ルーキーズを回っている。だから気付くのが余計に遅かったんだ…。



「何が原因なんだ…皆!しっかり考えよう!」


「そうだな…もっと上手くなる事?」


「キー、それは勿論だけど…私は違う気がする…」


「ミナ、何かわかったのか?」


「キクチ殿に聞いたんだ…売上があまり良くない事を…本音は聞きたくなかったけどね…」


「それで…?」



 皆も聞きたくてしょうがない。それはそうだ。すぐ頼るのは良くないが、そうも言ってられない状態だった…。



「キクチ殿は…「技術なら、いくらでも教えて上げるよ。でも経営は教えない。自分達がお店を出したら、何かある度に僕を頼るの?それなら今すぐ辞めた方が良いよ」…と言われた…」


「そんな…」


「厳しい…」



 皆が悲しい顔をした…。でもその通りなんだ…。甘えちゃ駄目なんだ…。



「でも…キクチ殿は、こうも言っていた。「ミナラーさんは悩むほど、何かをやったの?」…だとさ」


「それは…つまり…」


「そう…キクチ殿には、私達は何もしていないと思われている…」


「何で…私達だって頑張ってるのに…」


「僕だって…」



 そうだ。その通りなんだ。俺もずっと悩んでいたけど、結果が出なけりゃ実際は何もしていないのと一緒なんだ…。だからまず俺達がする事は…。



「考えよう!もっと考えようぜ!さっきから…俺だって、私だって、僕だって、そればかりだ言い訳は後にしてやってみようぜ!」


「そうだなカザー…お前の言う通りだ…」


「実は…私も似たような質問を、マイ先生にしたんだけどさ…」


「ケリー待て!…俺達は…人に頼る事に慣れてる…良い環境に慣れすぎたのかもな…これからは自分で考える事に慣れよう…」


「そうだね…」


「その通りだ…」


「じゃあマイ先生の話は…」


「「「「「聞く!」」」」」



 そして話し合いは深まっていった…。



※※※



「マイ先生は、キクチさんも苦労してるって言ってたんでしょ?なら…その苦労を知っている人がいるんじゃない?」


「街の人に、聞き込みでもしてみるか…」


「ギルドでも良いんじゃない?」


「そうだな、まず色々と聞いてみよう!」



※※※



 その翌日、手の空いてるルーキーズ組が聞き込みをした。そしてまた会議に。



「パンチどうだった?」


「ああ、良い話が聞けた。まずキクチ殿は、チラシを配ってたそうだ。ナナセ殿と二人でな」


「そんな事を…」


「ああ、パラレルは全く誰も知らない状況からの、スタートだったらしくてな…チラシも、自分達がどんな人かを教える内容だったり、どんな事が出来て、どんな気持ちになれるかを、細かく書いてあったそうだ」


「そこまで…」


「そうだ…信じられないよな…後はポスターを貼ったり、定食屋とか自分達が行く先々で、自己紹介してたらしい」



 皆、絶句していた…。あそこまで忙しいお店なのにな…。自分達を、そこまで売り込んでいるとは思わなかった…。俺達は、用意して貰ったお店で待っていただけ…。キクチさんの言う通り、俺達は何もしていなかったんだ…。



「今日さ、パラレルで働いてたら…この前、僕が髪を切った人が来たんだ…正直ショックだった…向こうも少し気まずいかな?なんて思った…でも…」


「でも?なんだヅツーキ?」


「その人は…何とも思って無かったんだ…なんて声掛けてきたと思う?…「またパラレルが忙しそうだったら行くね!」…だってさ…」


「それは…きついな…」


「悔しかったよ…でもその人は悪気なんて無いんだ…僕達には…それくらいの価値しか無いんだよ…」


「パラレルの代用店って事か…」



 ヅツーキは悔しかっただろう…。でも俺達も同じだ。なら俺達の価値を上げるしかない。パラレルとは違う価値が必要だった…。



「俺達の価値を、明確にしよう!そしてそれをチラシにしよう!」


「そうだな!技術じゃ負けるが、値段なら僕達の方が安い。そこを明確に書こう!そこに引っ張られる人は、絶対いるしな!」


「私達のプロフィールを、しっかり載せましょう。どうして美容師を始めたとかね。この際、元貴族だった事もね。興味持ってくれるかもしれないしね!」


「店内もさ、模様替えしない?パラレルと雰囲気変えてさ、差別化しようよ、もっとね!」


「この際だから、シャンプーやスカルプケアやマッサージも、オリジナルにアレンジしない?同じだと変わらないから、時間を長くしたり、指圧のやり方とかも研究して変えようよ!」


「言い辛いんだけど、若さも売りにしよう!マイ先生やキクチさんには、出来るだけ内緒にね!」



 そして、どんどん皆の意見が出てきた。やる事が沢山ある。そんなにすぐ結果は出ないかも知れないが、でも俺達はやってみせる。パラレルの人達に負けない美容師を、そして勝てる美容師を目指すから。俺達はそういう気持ちで、改めて取り組む事になった。



※※※



「いらっしゃいませ!」


「あのこのチラシに書いてある、シャンプーしてみたいんだけど…」


「ありがとうございます!」


「パラレルとは違うんでしょ?」


「はい!僕達がオリジナルで作りました!」



 俺達はこの街にとって、新しく必要とされる美容室にする。パラレルとは違う形でね。まだ試行錯誤だけど成功させたい。だから俺達はまだまだ考えるし、色々とやる。そして皆を綺麗にして、笑顔にするんだ。そして自分達も、いつか自分のお店でオシャレを発信してみせるよ。



※※※



「「「「「すいません!」」」」」



 若さを売りにしたチラシを見付けたマイ先生が、「これって私への挑発?」と聞いてきた時に、俺達は皆で土下座をした。アントレン様が死にかけたのを、俺達は見ていたからね。つまり俺達はこれからも、頑張るって事だ。そういう話なのさ…。



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