第一回世界武闘大会、大会二日目
武闘大会二日目は、格闘戦から始まった。オースリー王国からはヤルキアールさんが出場していたが、決勝で敗けた。相手はデリタム王国の戦士タイガベアでライオトーラ様の弟らしい。獣人は身体能力が高く、格闘戦向きで全試合圧倒。技術を才能でカバーする、そんな展開だった。
「やっと我が国の勝利か、タイガベアには後で礼を言わんとな」
「流石に完敗だな。ヤルキアールも技で対抗してたけど、全て対応された」
「でも、全て後手だったからな。アイツも良い経験になったろう。面白い技ばかりだしな。あれが言っていた漫画の技なのだろう?」
感想戦もちゃんとしているな。皆、昨日より落ち着いて見れている。
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次は槍闘戦だ。これはヌーヌーラ共和国の女性冒険者リヤキスが優勝した。彼女は下馬評では他国より劣っていたものの、昨日のエルメスさんに感化されたらしく、ボロボロになりながらも勝利をもぎ取った。その姿に皆は心打たれた。
「よしっ!ヌーヌーラ共和国にも覇者がでたか!」
「彼女も何か…お金になりそうですね…」
「マダマダ様…止めて下さいよ」
タオシマ様、マダマダ様、サッパーリ様も楽しんでるな。二ヶ月前は惨敗だったから、感動もひとしおだろう。
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そして本日最後の剣闘戦。まさかのギルデさんが優勝した。あの人こんなに強かったんだ。エルフィ代表だけど、オースリー王国のギルド所属だから、応援や歓声も多かった。ヤシノさんや娘のエルメスさんも喜んでるなきっと。
「店長!ギルデさん凄いですね!」
「あんなに強かったんだ。知らなかったよ」
「昔は最強の冒険者だったからな。今は副ギルマスなんかやってるがな、昔は俺やタハラシもコテンパンにやられたよ」
「あれはアントレンが調子に乗って、喧嘩売ったのが間違いでしたね。手も足も出ませんでしたから。闘神戦に出てたら…ゾッとしますね」
「俺らに遠慮したのかもな…」
「そうですね…」
なんか色々あったっぽい…。まぁ関係無いけどね。
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そして表彰式。またの名を二つ名任命式と呼ぶ。格闘戦タイガベアは『孤高の爪』、槍闘戦リヤキスは『美槍』、剣闘戦ギルデさんは『天上剣舞』が与えられた。ギルデさんは少し照れながらも喜び、他の二人は涙を流し、観客は昨日に続き感動と興奮に包まれていた。
「ふぅっ疲れました!」
「ナナセさんご苦労様。でも明日もう一日だし、僕も閉会の挨拶あるしね」
「とことん盛り上げましょう!」
本当に盛り上がっている。街は多くの露店も出ている。食べ物だけで無く、様々な美容品や漫画等も店に並んでいる。商品は飛ぶように売れ、在庫切れも起きているらしい。スタジアムも連日満員だし、賭場もあったが、予想が外れ大金を失っても、むしろ大会や各選手に感動して、文句を言う人もいないそうだ。それにスタジアムも良く出来ている。人の流れを考えた出入口、トイレの位置と数、魔法が観客に向かわないように魔法障壁、その他沢山…。ただ残念なのは、僕がどこにも行けてない…。この後も食事会だよ…。
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「そうかキクチは、どこにも行ってないのか」
「はいオターク様、まあ普段もお客様が沢山いますから、中々遠出が出来なくて…」
「ナナセのおかげで、大分早く移動出来る様になったけど、本人達が魔法使えないとね…」
「そうなんですよ、カナヤ様…」
一応、もしかして魔法使えるかも、なんて試した事もあったけど、無理だったしね。
「転移陣とか作って欲しいですよね~!」
「転移陣?なんだそれは、ナナセ?」
「うーんと…各地に魔方陣が設置してあって、魔力を通すとその対になる魔方陣に移動できるシステムかな?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!もっと詳しく!」
「オターク!焦らないで!ちょっと学者を集められるだけ呼んできて!」
ざわつき出した…。ナナセさんまた革命かい…?ライトノベルの知識、僕も欲しいよ…。
「そうすると、このサイズで、この様な魔方陣と…」
「キニユ!お前の時空間魔法なら、どう考える?」
「うるせーな、カナヤ!とっくに考えてるよ!」
「シャームネー様、あの秘伝を使えば…」
「そうね…なら文字配列を…」
「もっとカッコ良くして下さい!詠唱するなら、『希望の土地へ誇りと、体と、この想いを届けよ』です!」
「「「「「ウオォォォー!」」」」」
各国首脳陣と魔法学者が勢揃いで、転移陣を考え作り始めた。魔法を使えない…さらに酔っぱらいのナナセさんが、プロジェクトリーダーだ…。なにやってんの…。これで今日もどこへも行けず、下手したら朝までコースだよ…。明日試合ある人もいるだろうに…。
「「キクチ…」」
「アントレン様…タオシマ様…」
「「お疲れ…」」
「はい…」
僕と同じ気持ちの人もいる。明日も頑張ろう…。




