母親達と教会、力と可能性
ある日、お母さんに付いて来ていた3歳くらいの女の子が、少しグズっていた。まぁ仕方無い事だ。うちはキッズスペースが少しあるけど、そこまで充実させてない。絵本とヌイグルミくらいだしね。そんな時…
「じゃあ可愛くしてあげるね!」
ナナセさんが三つ編みをしてあげた。その女の子はとても喜び、お母さんも一安心した。お母さんはお金を払おうとしたけど、簡単な仕事だったので断った。まぁサービスだよね。いつも来てくれるお礼だ。そして前から何回も同じ様な事はあった。三つ編み以外にも編み込みしたり、たまにシュシュや飾りのついたヘアゴムもあげたりしていた。安いしね。そして、ある時…。
「私達にその簡単にやるセット、教えてくれませんか?」
「三つ編みとかですか?」
「はい。娘がせがむもので…それを見た娘の友達やお母さんも…」
「良いですよ別に、簡単ですからね!」
「ありがとうございます!」
そんな感じで、ナナセさんが定休日にお母さん達を集めて講習会をしたんだ。お母さん達は大喜びし、こぞって参加してくれた。思ったより集まったから、教会を貸してもらって開催。モデルで娘を連れてきてたから、娘達も大喜び。ちゃっかりウルルさん、チノピン様、サッパーリ様もいたのには驚いたけど。最後に全員にシュシュとヘアゴムもプレゼントして、終わった後はお茶会までしたよ。母親の苦労話や旦那の愚痴や色々と聞かされてね、でも大分盛況で良かったと思ったよ。それから…。
※※※
「結構、流行ってますね!」
「小さい子なんて全員してない?」
「お母さん達もセットしてますね!」
「結ぶと楽な場面多いしね。少しでもオシャレを楽しんでるんじゃない?」
それから様々なセットが流行る様になった。あげたシュシュやヘアゴムも大活躍だ。お母さん達も自分のヘアセットをして楽しんでる様だ。娘ばかりじゃ勿体ないもんね。さらに…。
※※※
「普通に女性冒険者や若い女の子まで、流行ってますね…」
「皆、羨ましかったのかな?」
「良く見ると、シュシュとか見たことないデザインじゃない?」
「本当だ!私達がプレゼントしたやつじゃないですね!自分達で作ったのかな?」
「服飾ギルドに、お願いしたのかもね」
いつの間にか、シュシュやヘアゴムまで出回っていた。僕達が教えていないセットも増えていた。他の女性達にも人気みたいだし、流行が僕達以外で広げてくれたり作ってくれるのはありがたい。そして…。
※※※
「何で私達に言ってくれなかったんですか!」
「本当ですよ。こんな儲けるチャンスを…悔しいです!」
「ごめんなさい…サリエリさん、マリベルさん…」
「私もです。聞いてません!どういう事ですか!これは私達が作りたかった!」
「すいません…ユニクさん…僕も知らなくて…」
いつの間にか僕達も知らぬ間にシュシュやヘアゴムが、販売されていたのだ。あのお母さん軍団は、いつの間にか商売を始めていた。しかも…教会で…。そして…。
※※※
「以前、キクチ様に私達は、お布施で過ごすゴミクズ野郎と言われましたからね…」
「チノピン様…僕、そこまで言ったっけ…?」
「あの講習会の後、すぐ母親達を集めて行動に移しました。ウルルとサッパーリ様も協力してね」
「私もあの時、あの数々の暴言を横で聞いてましたからね」
「私もその話を聞いて、ヌーヌーラ共和国でも思い当たる部分あります。でも酷い暴言にも黙ってられませんでした」
「ウルルさん…サッパーリ様…なんかすいません…」
講習会の後、作り方を考え、独自にゴムの素材を研究し、冒険者ギルドに依頼し、時に自分で危険を省みず探しに行き、デザインを模索し、作り上げ、そして販売に至ったと。全てお母さんパワーで…。いつの間にか教会と協力し、商会を立ち上げているなんて…。その名も母親商会…。
※※※
「参ったな…そこまでしていたとは…」
「服飾ギルドを出産後抜けた人や、ある程度子供が育ってきて、手の空いた人も沢山いたみたいですよ!」
「にしても、そこまでする?」
「母親の力は偉大ですからね。教会も店長に言われた事、よっぽど気にしてますよ!」
「そうだね…ははっ…」
その後も母親商会は教会としっかりタッグを組み、勢力を広げていく。各地に同じ商会を立ち上げて、教会の新たな大きい収入源となる。ポニョンさんの結婚式も覚えていた様で、少し経つとブライダル業まで始めた。教会で挙式することを慣例化させ、ヘアセットや結婚式の髪飾りも作るようになる。僕達の知らないところで、大きなビジネスとして成功していくのだ。まだ先の話ではあるけどね。それで母親って怖いなと思ったよ…。またサリエリさん達にも怒られそうだしね。教会メンバーの得意気な顔も予想出来る。要するに女性、特に母親は凄い力と可能性があるっていう事。今回はそういう話さ。




