表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界美容室  作者: きゆたく
一年目、異世界王国飛翔篇
5/136

エルフのギルデ、ドワーフのディンドン来店


 あれから多くのエルフ達が来るようになった。元々の顔やスタイルがモデルさんみたいだから、キレイになると尚更目立つ。エルフの中では前髪を作る事が流行っているのもすごく嬉しい。エルフは昔から皆さんずっと同じ髪型だったらしく、センターパートでストレートのロングヘアー以外がすごく新鮮らしい。ショートやボブにする方も多くカットする側としても、とても楽しい。只、全員耳が敏感なのは大変だ。



※※※



「ギルデさん終わりましたよ!」


「ふわあぁ…。最高だったよ」



 髪を乾かし仕上げ終えてまだ眠そうにしているのは、エルメスさんのお父さんでエルフのギルデさんだ。ギルデさんはナナセさんのシャンプーが好き過ぎて、シャンプーだけを週二ペースで来るありがたいお客様だ。そしてこの方は冒険者ギルドの副ギルドマスターでもある。



「いやーこんなに短髪が楽だとは思わなかったよ。なによりしゃんぷーが最高だしね」


「最初は耳を触られると、ものすごく恥ずかしそうにしていたのに、あっという間に慣れてしまいましたね」


「エルフは耳がどうしても敏感なんだけど、慣れるとそうでもないね。それにこのしゃんぷーの気持ち良さを知ると、来ずにはいられないよ」


「ははっ、ありがとうございます。ナナセさんも喜んでますよ」


「はい!嬉しいです!」


 

 そんな話をしていると、勢い良く入り口から小柄な人が入ってきた。



「俺は鍛冶ギルドのマスターで、ドワーフのディンドンて者だ!」


「いらっしゃいませ!今日はどんな御用ですか?」


「ここか?最近エルフが良く来るっていう店は!?」


「はぁ…多分そうだと思いますけど…」



 そこでギルデさんが気付く。



「あれ?ディンドンじゃないか、どうしたんだい?」


「てめぇは…ギルデか?随分変わったじゃねぇか!」



 なんか怪しげな雰囲気…。



「いいでしょう?君もスッキリしていきなよ。いつもむさ苦しいんだからさ」


「なんだと!?」


「ケンカなら止めてください!」



 ナナセさんが止めに入らなければ、殴りあいでも始まるかと思ったよ。でも話を聞くとそうでもなく、昔からの腐れ縁ていう感じでいつもこんなやり取りをしているらしい。エルフとドワーフはいつもこんな感じなのかな。



※※※



「いやすまねえ。いつもの癖で」


「私も申し訳ない」


「いや別にいいんですけど、結局なんの用でしょうか?」



 早速本題を聞く。面倒事は早めに解決したい。



「それは…最近エルフがやけに目立っていやがるだろ?長年張り合ってきたドワーフとしては、少し気になってな。何より面白い魔道具を使っていると聞いて、鍛冶師としては是非見てみたいと思ってね」


「確かにいつも乾かしてもらっている魔道具や、お湯の出る魔道具はすごいと僕も思ってたよ。買ったしゃんぷーとかの容器ですらすごいしね」


「なるほど」



 今までも何人か魔道具を売ってくれとか、仕組みを教えてくれという方はいたが、実際は魔道具ではなくただの電化製品なので、うまくごまかしてきた。鍛冶ギルドのマスターという事であれば、ある程度説明してもいいかもしれない。今後他の鍛冶師とかが同じような事をしてこないように頼めるかもしれない。




「秘密なんですけど…今後そういう事で、店にちょっかい出してくる人が減るなら色々教えてもいいですよ」


「それは鍛冶ギルドでは徹底させよう」


「冒険者ギルドでも協力はできそうだな」



 あっさりと決まってしまったけど、いいのかな?少し悩んだが、はっきりと伝える。



「実は魔道具ではないんですよね」


「「えっ!」」


「僕達は魔法が一切使えません」


「「ええっ!」」


「皆さん僕達が魔法使いとか錬金術ができる…と思っているみたいなんですけど…僕の国では当たり前の普通の道具なんですよ。全部」


「このどらいやーという道具は一体どうやって…」


「お湯を常に出し続ける何て無理だろ…」


「うーんと、簡単ではないですけど、僕達の国ではまず電気とかガスというものがあって…」



 説明してもわからないことが多い様だ。そりゃ魔法がある世界では科学は発展しづらいだろう。というか僕も知らない事の方がはるかに多い。美容師は工学を学んではいない。話していると色々質問が面倒臭くなったので、結局お店のパソコンで小学生でもわかりそうな内容を印刷して渡すことにした。字は異世界言語になってるから問題ないしね。パソコンやプリンターまで見せると大変そうだから、こっそりやったけど。



「この紙も一体どうなってるのやら…キレイに整い過ぎだし…」


「文字も可笑しいくらい均一だ…正確な絵まで入ってる…」


「ま、まぁそのうち色々とわかる事も増えると思いますよ!」


「キクチ殿の国にいってみたいものだな」


「そっ、そうですね…いつか招待できればいいですね…」



 その後も色々話したが、ひとまず納得してもらい帰ってもらった。今後はギルドの方でも何かしてくれると思うので、面倒臭い人は減るだろう。



※※※



「技術革新起きちゃうんじゃないですか?」


「いや、当分先だろうね、地球の文明だってそれなりの歳月をかけて発展したしね」


「そうですかね、だってドワーフですよ?発電機とか電球くらいはすぐいけるんじゃないかなぁ」


「ナナセさん…あまり怖いこと言わないで…不安になってきた」



 それからディンドンさんは店の常連になった、ギルデさんと同じ様にシャンプーにはまったのだ。そして僕にはいつも電気等の質問攻め。トホホだよ。もう中学生位の資料は渡してしまった。本当に技術革新起きるかも…。



「いやーお嬢ちゃんのしゃんぷーは最高だな!」


「ありがとうございます!」


「また3日後に来るから、よろしくな!資料もよろしく!」


「ははっ…あんまり張り切り過ぎないで…」



 技術革新は起きそうだ。ドライヤー位ならすぐ作るんじゃないか?不味い事にならなければいいけど…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ