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異世界美容室  作者: きゆたく
一年目、異世界王国飛翔篇
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エルフ冒険者、エルメス来店


 とうとう僕も人間以外をカットする日が来た。エルフのエルメスさんだ。冒険者で良く宿屋に泊まることから、ポニョンさんに紹介されたらしい。この世界に来てから色々な髪をカットしてきたが、それでも銀髪は初めてだ。宿屋の親子は赤色で少し癖毛、雑貨屋の親子は茶色で自然なストレート。エルメスさんは細く柔らかいが、ザ・直毛だ。キレイにブローすればきっとキレイなんだろうが、今はバサバサのロングでセンターパート。それにしても様々な髪質、髪色があるものだ。



「特に決まってはいないのだか、できれば雰囲気を変えて欲しい。それと耳回りがなんかいつも気になってはいる。うまく言えないが…まぁおまかせするよ。ポニョンにはいつも世話になっているから、あなたを信じたいと思う」


「ありがとうございます」



 この凛とした感じに、少し柔らかい雰囲気を足していこう。ミディアムレイヤーのヘアスタイルにして前髪を作る。ただ問題は耳だ…。耳回りのカットを丁寧にすれば問題はないだろうが、耳の形のせいで、横にボリュームが出やすいのだろう。顔が小さいのに変にバランスが横に崩れているのは、間違いなく耳の形のせいだ。髪の落ちてくる位置やサイドの薄さを調整していこう。



「ナナセさん、シャンプーお願いします」


「はい!」


「耳と耳回りの洗い方気を付けてね」


「大丈夫です!シミュレーションしてありますから!」



 ナナセさんはいつの間にエルフ対策を考えていたんだ…。まぁいいけど。



※※※



「ひゃあっ!」


「…うっ!」



 なんだかシャンプー台から変な声が聞こえる…。耳回りを、さわられたりするのがきっと苦手なんだろう。ナナセさんも苦笑いしながらシャンプーしている。「もうお嫁にいけない…」て言っているエルメスさんにナナセさんも少し慌ててもいる…。カット中も気を付けよう。



※※※



「大分雰囲気変わったと思うんですけどいかがですか?」


「すごい…。しゃんぷーは気持ち良すぎてどうなることかと思ったけど、なにこの髪、私じゃないみたい。」


「いえいえエルメスさんですよ!それにエルフの皆さんは素敵になれる方が多いと思いませんか店長?」


「多分髪質とかエルメスさんに近いと思うので、ナナセさんの言う通りかもね」


「私達エルフは昔から美しいとは言われてきたが…。あまり実感した事はなかった。だが今は美しくなったという自覚はできる」


「それじゃ同じエルフ仲間に自慢してきて下さい!きっと『美』というものを改めて知るチャンスですよ!」


「そうだな…ひとまず『しゃんぷー』と『とりーとめんと』を10個づつ用意してもらっても良いか?」



 なんとナナセさんに言われた事を実行し、商品まで紹介してくれるらしい。話を聞くとエルフの里までそんなに遠くはない様だし、冒険者としてもそれなりの地位があるらしく、お金には困っていないらしい。



「今日は本当にありがとう。色々と勉強になった。」


「こちらこそありがとうございます。色んなお話できて良かったです」


「じゃまた来る。きっと他のエルフも来ると思うから、よろしく頼む」



 そう言ってエルメスさんは帰っていった。通りの人達もエルメスさんを見て「キレイ~」などと言っている。



「店長!一つ気付いたんですけど、この世界の人達って結構お金持ってません?」


「僕もそう思う。今まで自分磨き的なことを一切してこなかったから、その分がお金として余ってるのかもね」


「うらやましい~」


「確信はないけど、比較的平和な世界だと思うし、生活には余裕があるんじゃないかな」


「孤児院はある様だけど、スラム街は無いみたいですしね」


「これからまだ色々と知るんだろうけどね」



 そんな話をしながら、これから色々来るであろうお客様を想像した。まだカットしたことのない獣人やドワーフ。貴族等の上位の人達。僕もナナセさんも楽しみにしている。オシャレが発展すれば間違いなく来る。同時に様々なトラブルも起こるだろう。



「これからですね!」


「そうだね。これから騒がしくなるよ、間違いなくね」



 そしてまた次のお客様に備える二人だった。





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