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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
33/136

パーマとカラー、異世界展開


 魔族の二人が帰った翌日の営業終了後、すぐディーテ様は来られた。もちろん激怒していた。自分達より先に新しい技術をサハラ様達に公開したからだ。



「あんな技術があるなんて…何で黙っていたのですか?」


「あまり必要が無かったもので…」


「私がどれだけ悔しい思いをしたと…服装もかわいいし…しかも全くサハラと気付かず、抱きついて褒めまくって…」


「それは…自己責任じゃ…」



 まさか目の前のかわいい女の子が、サハラ様とは思わなかったのだろう。サハラ様もその後、大分したり顔で若さアピールや、この国初の技術をアピールしたらしい。まぁお互い様だよね。



「そもそも何故、急に新技術なのですか!」


「…カナヤ様のコーンロウは、ディーテ様達にも教えた編み込みをより細かくしただけです。そしてサハラ様は僕達と同じ黒髪だから対応しやすかったんです。それに二人共強い癖毛だったので、コーンロウやストレートパーマはピッタリの技術でした」


 

 今まで公開しなかった理由もちゃんとある。まずこの世界は地球より髪の色の種類が多く、上手に染める自信が無い。正直ストレートパーマも上手くいく保証は無かった。本来の髪色が緑やピンクだと、染めるにも苦労するだろうし、カラー剤も合わない気がする。その辺をちゃんと説明する事に。



※※※



「僕達が使っているカラー剤は、僕らの国の髪に合わされて作られています。なので基本的に黒髪ベースです。黒から茶、茶から金、そこから白と脱色されます。その上で、どこかのベースの上に色を乗せて染め上がります」


「…そうね。でもこの国の人達は、色がバラバラ過ぎるからね」


「マイさんの言うとおりです。色が多彩すぎて合わせられません。色の抜け方がわからない…サハラ様を染めたのは黒だからです」


「店長!ダブルカラーにして、しっかり色を抜いてから染めればどうですか?」


「流行った場合、時間と人手が足りない…」



 確かに染め方は色々考えられるし…不可能ではない。ディーテ様も気になる様で、黙って聞いている。



「ナナセ、昨日サハラ様をカラーやストレートして気付かなかった?」


「何、お姉ちゃん急に…うーんかなり早く終わったとは思うけど…」


「それよ。早く終わるのが問題なの」


「何で?効率良くて良いじゃん。お店でも助かるのに」



 マイさんの言うとおりなんだ。昨日確信出来た事でもある。でも…。



「ナナセさん、この世界に来てからずっと共通して起きている、この美容室の現象て何だと思う?」


「…効果が高過ぎる事…?」


「そう。シャンプーすればビックリするくらいサラサラ、スカルプケアやトニックであっさり発毛、スタイルの仕上がりと持ちの良さ。つまり、それが問題なんだ」


「良い事では無いんですか?」


「同時に怖い事でもあるんだよ。パーマやカラーに関してはね」


「そうよ、技術のスピードも問われるし、放置時間も予想が出来ない。昨日キクチくんが、意識してスピード上げてたの気付かなかった?」


「確かに、少し焦りは感じましたけど、やけにマメにチェックしてたし…でもサハラ様だったからだと…」


「それもあるけど、違うよ。本当に技術で焦ってたんだよ」



 ナナセさんも驚いている。マイさん以外の皆も。僕だって別にスーパーマンじゃないし、出来ない事もたくさんある。



「薬液を流すタイミングや、染まっていく髪のチェック。ストレートもカラーもかなりヒヤヒヤだったよ。下手したら髪に大ダメージだからね」


「私もストレートの一液終わりの、膨潤と軟化には驚いたわ。あの癖毛であの時間はあり得ない。カラーも二液をかなり薄めてたもんね」


「マイさんの言うとおりです。昨日は僕が付きっきりで出来たから、まだ良いけど…」


「そうだったんですか…気付きませんでした…」



 ナナセさんでもまだ対応は無理だと思う。経験のある僕やマイさんはまだ良いけど、それでも営業中は中々難しい。ナナセさんやオーパイさんに、まだ任す事は出来ない。



「ではキクチ、この国ではまだ無理なのですね…」



 黙って話を聞いていたディーテ様も、多少理解は出来たらしい。



「カラーだけなら、魔族は大丈夫だと思います。皆さん黒髪らしいので、何とか…でも、パーマ系は中々…現状では無理かと」


「そう…」


「でも勉強はしたいので、カラーモデルやパーマモデルを考えてはいます」


「そうね。私も美容学校の学者さん達と研究してみようかな。薬剤もこちらの国で作った方が良いだろうし」


「キクチ、マイありがとう…」



 その言葉にディーテ様も喜ぶ。この国のオシャレの伝道師だしね。そして研究用に一通りの薬剤を学校に卸す事も決まる。生徒も実験になるのだろう。きっとカリキュラムも変わってくるはずだ。



「カラーやパーマの教本も作らなきゃだね」


「マイさん手伝いますよ」


「私もモデルを皆に頼んでみよう!」


「姉御!アタシもやらせて下さい!」



※※※



 その後も話をした結果、皆やる気になった。気はまだ早いが、いつかパーマとカラーも当たり前になるのだろう。日本では少ないが、世界では当たり前のカラリストなんかも、現れる日が来るのかもしれない…。



「これで、サハラをまたギャフンと言わせてやる!」



 ディーテ様は違う事でも、燃えている…。そういう事が無ければ、もう少し楽になるんだけどなぁ…。そしてこれからの忙しさを改めて理解する。はぁ…。




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