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異世界美容室  作者: きゆたく
二年目、異世界隣国騒乱篇
32/136

魔族の王カナヤ、王妃サハラ来店


「もうすぐ来るぞ。今日は頼むな」


「私達もいるから、何かあれば声描けてくれ」


「わかりました」



 今日はたまにある、特別定休日。街の人も慣れたもんで、予約を入れた方に謝りに行くと、また大変ねぇと労ってくれる。本当に感謝だ。一応ジーク様、ヤッカム様、タハラシもいる。施術中は二階の僕の家で仕事をしてる様だが、何があっても良い様にいてくれる。



「ジーク様、来られたようです」



 そう言われて、ジーク様が上を見上げる。釣られて僕も見上げると、翼を広げて空を飛ぶ二人がいた。黒いコウモリの様な翼だ。そしてこちらに気付き降りてくる。



「カナヤ、サハラ待っていたぞ」


「タリラリラ…いや今はジークか。出迎えありがとう」


「ふんっ来てやったぞ」



 男の方が王様のカナヤ様だろう。凄く好青年そうだ。女の方がサハラ様か…気が強そう…。そして二人の第一印象は…ダサい…。なんとヘアーは…角もあるせいか二人して雷様にしか見えない。真っ黒で、良く言えばアフロだが…爆発してるだけだ。格好もゴチャゴチャしたアクセサリーも多いし…。太って見える格好だ。サハラ様のメイクもキツイ…。大分背も小さいし子供っぽいのに…。合ってないなぁ…。



「何をじろじろ見ておる。妾達をバカにしているのか?」


「いっいえ、すいませんそんなつもりでは…」


「まぁそう言うな。今日お前達を担当してくれるキクチだ」


「キクチです。よろしくお願いします」


「僕はカナヤ・アカサタナ。一応アカサタナ帝国の王様です」


「ふんっ妾が王妃のサハラ・アカサタナじゃ」



 やはり名前も少しダサい。以前のオースリー王国よりはましだけど。そして二人を、店の中に案内する。いつの間にか羽も消え、すごいなぁなんて思っていたら、そこでヤッカム様が二人共100才近い事を教えてくれた。子供扱いするなって事だ。機嫌を損ねるのは避けたいからね。



※※※



「では今日はどのような希望ですか?」


「うーん僕はお任せするよ。ジークもそう言ってたしね。カッコ良く目立てれば」


「わかりました。ひとまずシャンプーしましょう。ナナセさんお願い」


「はい店長!」



 あの凄い癖毛…。後で了承得てあのヘアスタイルにしよう。そして次はサハラ様だ…。



「ではサハラ様は、どのようにしましょうか?」


「まるっきり変えるのじゃ、今はディーテか…あいつに吠え面をかかすくらいにじゃ。妾を舐めた事を後悔させてやるのじゃ」


「…わかりました。」



 大変だなぁと思いながらも、髪質を見て僕はある決意をする。今まではあえて使わなかった技術を、この世界に導入しようと。



※※※



 半日後、二人は感動の渦に包まれた。まずは一足先に終わったカナヤ様。



「なんだこれは…最高じゃないか!魔王にピッタリだよ!」


「ありがとうございます」



 カナヤ様のヘアは、オールバックのコーンロウだ。少しこれから頭を洗い辛くなる事を説明させてもらい、了承を得てから細かく編み込んだ。元々の縮毛を活かしたヘアスタイルで、額から出ている二本の角も良いアクセントになっている。ヘアの完成後は、マイさんに任せて服装チェンジ。アバンギャルドなマイさんのセンスが光る。適当な服をギルドから見繕って仕上げただけなのにね。翼を出すところも計算済みだし。



「身長もあるし、カッコ良くなったでしょ?キクチくん」


「マイさん流石ですよ」



 そしてその少し後にサハラ様も完成する。



「これが妾なのか…完全に別人じゃないか…どうなっているのじゃ…手触りも妾じゃないみたいじゃ」


「どうですか?喜んで頂けましたでしょうか?」


「さっ最高じゃー!」



 サハラ様はこの世界初のストレートパーマとヘアカラーをした。モジャモジャだった髪がサラサラになり、真っ黒だった髪がピンクベージュになる。長さは前髪を切って、毛先を揃えた程度だけど劇的変化だ。耳の上から出ている角も良く見えてカッコ良い。さらにストレートパーマやカラーをしている最中に、ナナセさんがメイクも教えてあげた。ナチュラルメイクだがアクセントをしっかり入れ魔族っぽい。良く似合っている。そしてヘアメイクが終わったら、またマイさんの登場だ。服装も完璧に仕上げる。ゴシックロリータ、つまりゴスロリだけどね。



「本物の魔族にはピッタリね」


「お姉ちゃん!凄く良いよ!」


「ハマってるね」



 僕達も満足の出来だ。少し角の扱いには疲れたが、最高の仕上がりだろう。



※※※



「キクチ、ズルいぞあんなの…俺も新しい髪型にしたい!」


「僕の新しい姿に嫉妬かい?」


「くそっこんなにカッコ良くなるなんて!」



 ジーク様が羨ましがっている。間違いなく今度ニューヘアにするな。



「サハラ様も大分変わりましたな。ビックリしましたよ」


「ありがとうじゃヤッカム。それに妾も大分ビックリしてるのじゃ」


「本当にかわいいですね!サハラ様!もう抱き締めたいですよ!」


「ナナセ!そうかかわいいか!そうじゃろ、そうじゃろ、好きなだけ抱き締めるが良い!はっはっは」



 ナナセさんがそのまま本当に抱き締める。サハラ様もまんざらではなさそうだし…。ナナセさんあんまり失礼な事するなよ…。子供扱いするなって言われてるし。何気に90過ぎだぞ…。寿命が長いとはいえ、お婆ちゃんじゃないか…。



「体も柔らかいし、本当に若いですね!それで王妃様って凄いなぁ」


「妾は95歳じゃ。ナナセは妾をいくつだと思ってるのじゃ」


「えぇ~!てっきり15歳位だと思ってました!」


「そっそうか!そんなに妾は若く見えるか!」



 そうかそうかとサハラ様が喜んでいる。少しハラハラしたけど良かった。



「これでおばさんディーテを…ふっふっふ…妾の方が…」



 うん。嫌な予感。間違いなくトラブルになる。その後も色々と皆でお話させてもらった。今後アカサタナ帝国でもオシャレを導入する事になった。多少の距離はあるが、商品も流通するだろう。独自のファツションも作られていくはずだ。おそらくこれからは、魔族もわざわざ遠くから店に来る事になる。



※※※



「キクチ、本当に今日はありがとう」


「妾も感謝している。必ずまた来る」


「こちらこそ、ありがとうございました。遠いですけど、是非またいらして下さい」



 そして二人は大量の美容商品と王様達三人と一緒に、王都へ向かった。王都で一泊してから帰るそうだ。そして二人が羽を出し飛ぼうとしたところで、急遽ナナセさんから「我が羽よ、この空に舞う風となれ」という詠唱のアドバイスをもらう。結果、飛ぶ際に今までにない速さと、魔力負担の減少を得る事になり、ナナセさんに猛烈に感謝するという一幕もあった。久々の中二病だ。



「疲れた…皆、お疲れ様」


「師匠!凄かったです!」


「サハラ様かわいかったな~店長また来ると良いですね!」


「カナヤ様もモデルみたいで、服選びが楽しかったよ」



 皆、気楽だなぁ。きっとこれから大変になるのに…。ディーテ様が怒って来るはずた。なんせ勝手に知らない技術を公開したのだから。今回はストレートパーマとカラーだったが、これからは普通のパーマも含めてこの世界に広めていく事になるかもしれない。そうすると美容学校の内容も変わってくるしなぁ。やり過ぎたかもしれないなぁ…。



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