国王ジークフリート、裏口挑戦
「ここがパラレルか…凄いものだ。王城の美容室とはレベルが違う」
「王様、ありがとうございます」
「ジークで良いと言っているだろうが」
今日はパラレルの定休日。そんな中、初めて王様がパラレルにやって来た。いつか来るつもりではいたが、中々暇がなくやっと来れたのだ。そして今日は少数精鋭だ。王様、王妃様、ヤッカム様、アントレン様、タハラシ様の五人しかいない。
「とうとう裏口を調べる時が来たか」
「ジークが無理を言ったからでしょ!」
「俺のせいにするな!ディーテも賛成したじゃないか」
「「「はぁ…」」」
そもそもきっかけは、先日の信仰祭だ。あまりにも楽しそうで羨ましかったらしく、もう王様は我慢の限界になり来る事に。他の三人は少し呆れているよ…。異世界への道を知っている限られたメンバーとはいえ、大変なものだ。
「今日はこのメンバーだから、身体強化で飛ばしてこれたからな、かなり早く着いたし」
「いつもこれで来たいですわ。体も鈍ってしまいますし」
「「「はぁ…」」」
王族にそんな勝手に色々行かれても困るだろうに。他の三人が少し可哀想だ。
「とにかくまず通ってみるか…」
裏口を開けると、こちらの人には見慣れない壁や、ボイラー等が見える。僕達は安心しているが、他の人達は違う。女神の力で異世界に繋がっているはずなので、もし自分が認められなければ弾かれたり、最悪死ぬ事も想像している。だからこの国で一番魔力の強い王様が、試しの門をくぐるという訳だ。まぁ実際は試しの門ではなく、ただのドアで裏口なのだが…。そしてまず僕が向こうに行く、それから王様が額から汗を流しながら、ゆっくりと足を進めていく。
※※※
通れた。あっさりと。全く問題なし。特に魔力とかも反応なかったそうだ。
「緊張したぜ~」
「何も異常は無さそうだな」
「ジーク良かったわね」
「俺も緊張したな」
「私もだ」
多分僕が思うに悪意さえ無ければ、誰でも通れるんじゃないだろうか。まず悪意がある人は、女神の加護でそもそも店に入れないのだから。きっと裏口もそんな気がする。さらに裏口を出てから、王様と少し会話したが言葉は、通じたままだった。多分王様の言葉が翻訳されるようになったんだと思う。僕達が異世界に行く時の逆パターンだ。おそらく字も読めるようになっているんだろう。
「で、どうしますか?行きますか?僕達の世界」
これで揉める事になる。まぁいつもの事だ。
※※※
日本の僕が住んでいる街では、基本的に車移動だ。僕の車は普通の国産乗用車で、五人乗りだ。今日は僕の他にナナセさんもいる。なのでこちらに来れる異世界のお客様は三名様だ。
「俺は王なのだし確定だな!」
「私も王妃ですから当然です!」
「何を言っている?まず宰相の私が調べてきてからの王族に決まっているだろう!」
「インペリアルガードの私が護衛せずに誰が行けるのですか!」
「マイの住んでいる国に行くのは俺だ!」
皆さん主張が強くまとまらない…。ていうかアントレン様…最近大丈夫か?そのまま全然決まらないので、結局僕が決めた。
「ジーク様と、ディーテ様と、タハラシ様でお願いします」
アミダくじで決めた。王様だけは決定だったけど。
「やったー!」
「良しっ!」
「何故、私の神は死んだのか…」
「俺はいったいどうしたら…くそっ!」
「ディーテとタハラシか、悪くないな」
王様夫妻とインペリアルガードだったら、いつもと同じで過ごしやすいかもな。待ちの二人には漫画でも読んでてもらおう。そして向こうで自然に過ごす為に、いくつか決め事をした。まず様は付けない事、大変なのは僕達とタハラシ様だけど。そして僕達から離れない事、車に跳ねられたりしても困る。更にお金の管理は僕達に一任させる事、変な物を買われても困る。当然魔法を使わない事、当然向こうの世界では有り得ない事なので。最後に今日中に帰ってくる事、当たり前だが明日は仕事なので。僕達の言う事に絶対に従う事、我が儘は認めない絶対守ってもらう。
「俺だって国王だぜ?子供じゃないんだからさ」
「私もそんなバカではないわよ」
「私もいきなり呼び捨ては…」
「じゃあ他の人を連れていきます」
「「「ごめんなさい」」」
ということで、三人には僕とナナセさんの服に着替えてもらって行く事に。居残り組が睨んでいる。血の涙を流す勢いだ。とにかくこれから、異世界人が日本を観光するのである。どうなる事やら…。
 




