※雑貨屋の母、サリエラ来店※
「いやーすごいわホント。マリベルの言う通りだった」
「サリエラさん、ありがとうございます」
「ねっ言ったとうりでしょ!」
私は今日、娘のマリベルに言われて美容室という所に、初めて来てみた。そして娘と同じ『ぼぶ』にしてもらったのだが、正直こんなに驚く事が多いとは思っていなかった。宿屋のポニョンちゃんやその母親のプリュンも絶賛していたけど、それでも実際にこの店に来るまではそこまで信じていなかった。見た事も聞いた事もない店構えや家具、魔道具と技術も。そして『おしゃれ』という考え方まで。うちの雑貨屋でも使いたい商品もたくさんあるし…かなり高そうだけど。
「お母さん!しゃんぷーと、とりーとめんと買ってもいい?」
「値段はいくらなんだい?高そうだけど…」
「両方合わせて3000リルだよ」
「えっそんなもんなのかい?もっとしてもいいのに」
あきらかに安すぎる。この精密な容器に文字まで入ってるし…いったいどうやって作ってるんだろう?全く同じものを量産している様だけど、魔法じゃないらしいし。
「おたくらは…どこから来たんだい?」
「とても遠くの島国です。こっちの人は誰も知らないですけど…」
「ふーん」
私達の知らないとんでもない技術大国があるのか…。戦争とか起こらなければいいけど…。思いきって商売話もしてみようかな…。
「ちなみにこの商品とかって、うちの雑貨屋で売る事はできないかい?」
「お母さん?図々しすぎるよ!」
「ははっ、申し訳ないのですが…今はまだその予定はないんですよね」
キクチさんは困ったように言ってるが、『今はまだ』と言った。という事は、今後売る可能性があるという事だ。その時は是非お願いしたいものだね。
「その時が来たら是非!」
「お母さんたら、もうっ!」
マリベルは怒っているが、商売やってるなら多少は図々しくないとね。儲けるチャンスは逃してはいけないよ。
「もっと街でオシャレが浸透して、うちのお店も忙しくなったら、自分達で商品説明や販売する暇がとれなくなるので、その時には是非サリエラさんや、他の方達にも協力をお願いしたいですね」
「なるほど」
「お母さん…」
「パラレル内で店員をしてもらうとか、他のお店で販売するとか、他にも色々考えてはいるんですけど…まあまだ先の話ですけどね」
この人は相当先の事まで考えているみたいだね。『おしゃれ』をまず街に浸透させてからという事は、もっとお客さんをここに集めないといけないって事ね。
「わかったよ。ありがとう」
「いえいえ、すみません」
「とりあえず自分達が使う分は買わせておくれ。それと娘にやったサンプルも頂戴な!」
「やめてよ、お母さん!ホント恥ずかしい!」
「ははっ全然良いですよ!今はまだ開店セールですからね」
「ふふっこれからもよろしくね」
※※※
店を出て改めてあの店の凄さを感じている。とにかくおしゃれの可能性が大きすぎる。これからあの店に注意し、自分達も常に気にしなければ、なにか大きな流れから取り残される気がする。
「マリベル、あのパラレルというお店から目を離しちゃダメだよ」
「わかってるよ、お母さん」
「家みたいな普通の雑貨屋が、大きな商店になるかもしれないチャンスがあるよ。『おしゃれ』というものは間違いなく」
「私もそう思う」
「それにしても私に20歳は若返ったんじゃないかい?」
「それは言い過ぎ!けど今後その可能性もあるね。」
そんな商売の話で盛り上がりながらも、自分がキレイになったという幸せを実感した一日だった。
「早く帰らないとお父さんに怒られるね!」
「いや私がキレイになったから喜んでくれるはず!じゃなきゃ許さん!」
「そうだね!」
そして旦那に物凄くビックリされた。まさか赤の他人と思われるとはね、ぼぶってすごいねぇ。商売の方も少し興味を持った様だし、きっと近々お店に行くねこれは。