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異世界美容室  作者: きゆたく
一年目、異世界王国飛翔篇
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雑貨屋主人シリアール、美容商品販売


 少し前から獣人もお店に来店する様になっていた。但しシャンプーブローのみだ。基本的に獣人は脱毛と発毛が季節毎にあるので、カットする必要がない。なので中々お店に来ようとはしていなかった。しかし髪のキレイな人が、街の中に増えてきた事、シャンプーブローというメニューがある事がきっかけで来るようになった。それに獣人にとって毛並みは誇りの対象であり、己の強さや美しさ威厳等の一つの目安になっているというのもある。



「頼みます!大量に注文させて下さい!私達獣人には必要なんです!」


「でもそんなに在庫置けないしなぁ…考えておきます…」



 最近では尻尾や、体毛の多い種族では全身に使っている人も多いらしく、消費が激しい。正直少しもったいない…。ボディソープも用意してあげなきゃかな…。



「ナナセさん。雑貨屋のサリエラさんか旦那さんに商売の話があるって声掛けてきて。空いている日の夜でもどうですかって」


「はい!」



※※※



 そこからは話が早かった。その日の夜には…というか、閉店前にはマリベルさんも含め三人で来ていた。早めに店を閉めてやって来た。張り切りすぎだよ…。因みに雑貨屋の主人はシリアールさんだ。



「とうとう私達の出番がやって来たね!」


「俺も楽しみにしてたよ」


「やったね!お父さん、お母さん!」



 そこでシャンプーとトリートメントを数種類、トニックそしてボディソープついでにヘアブラシを雑貨屋で販売して欲しいとお願いした。日中に材料屋と連絡を取り相談した結果そうする事にした。仕入値に少しプラスした値段で渡し、雑貨屋が定価で販売する。近いうちに鍛冶ギルドから出る美容魔道具もお願いしておいた。



「そんなにしてもらって申し訳ない!パラレルで売ってない品まで…」


「私もここまで安くしてもらえるとは…」


「キクチさんお父さん達のいう通りだよ!?これじゃ儲からないよ!」


「いいんですよ。あまり儲けようとすると、きっと失敗しますよ」


「店長の言うとおりです!私達は商人じゃないですしね!」



 雑貨屋の皆さんはとても喜んでくれた。絶対成功するとわかっている商売をするのだから、尚更だろう。僕達も商品だけ買いに来るお客様は、施術途中で手を止めて行う必要があるので、効率はかなり悪かった。そんなお客様を、まるごとお願いできるのでこちらとしては大変助かる。その後、商品の受け渡しは朝か夜に行い、一応ギルドに護衛もお願いすることが決まった。そして満足気に三人は帰っていった。



※※※



 雑貨屋は大繁盛だった。実は今迄、営業中に邪魔しちゃいけないと思って、商品だけを購入しに行くのを避けていた人もいたらしい。そんな人もそうだし、獣人も殺到した。どうやら獣人の国もあるらしく、そこにも噂が届き大変な事になっているらしい。売り方も、『パラレルの宝~』とか『ナナセが愛する~』等と、上手いことやっているし…商売人は流石だと思う。



「嬉しい悲鳴とはこの事ですな!はっはっは!」


「本当にありがとうございますキクチさん!」


「いえいえ。僕達もすごく助かっていますよ」



 届いた追加の商品を渡すと、また喜んでくれた。かなり忙しいらしく、従業員も新しく雇うそうだ。雑貨屋といっても実際は商会と同じであり、シリアールさんが様々な街や国で商品を買い付けし売っている。今は大きな商会ではないが、今後大きくなっていくのかもしれないな。



※※※



「是非うちの商会にも卸して頂けないでしょうか…」



 サロンの街はこの国の中では中規模の都市だ。近くには王都もあるので、この街にはシリアールさんの所しか商会も雑貨屋もない。雑貨屋に無い商品は王都に行けばすぐ買えるし、往復で一日も掛からない。だからこの街では競合があまりないのだ。そう判断したから、シリアールさんの所にお願いしたのだが…。



「すいません。今はちょっと忙しくて…追ってお知らせします…」



 大きなお金の流れを察知した、他の街の商会が動き出してしまった。何件も問い合わせがあったので、面倒臭くなり結局は国に一任した。宰相のヤッカム様が、スカルプケアで来店したときに相談したのだ。ヤッカム様はこれは良いと張り切り、王家直轄の商会を美容専門で立ち上げてくれた。そこに商品を卸して他の街の商人が買いに来るシステムにしたのだ。因みに商会長は王妃様になった。誰にも文句を言わせず、「私以外の適任者はいない。なろうとするものは斬首する!」とまで言っていたそう。



※※※



「いやぁ大変でしたな」


「シリアールさんには面倒掛けてすいません」


「でもうちの商会はこのまま営業できますし、それに王妃様としゃべる日が来るとは思っていませんでしたよ」



 仕入れに来たシリアールさんは、しみじみと話す。結局シリアールさんの商会はそのままで特別扱いになり、王家直轄の商会でも謎の顧問に就任した。王妃様は僕が街に与える影響を、平民の目からもしっかり聞きたいから等と言っていたらしいが、おそらく誰よりも美容の情報が欲しいだけだろう。最初は大量注文した商品を、お店から運び出すのも一苦労していたが、マジックバッグというスペシャルな魔法アイテムを利用する事で解決される事にもなった。王妃様がシリアールさんの商会と、直轄の商会に買ってくれたのである。大きな商会でも持っている人が少ない高級品らしい…。国民の税金を勝手に…。まぁこれでこの国の人に喜んでもらえるなら良しとしよう…。そしてシリアールさんのお店は大きくなっていく。いつのまにかパラレルの隣に美容専門の雑貨店を開店させるのだが、これは少し先の話である…。



※※※



「これで少しは落ち着いたけど、それでも人手が足りないなぁ」


「まぁ楽しいから私はいいですけど!」


「他の街とかも観光したくない?せっかく異世界にいるんだし」


「しっかり休みをとって、異世界社員旅行!ってのもいいですね!」



 確かに全然休みは取れてない。ブラック企業ならぬブラック美容室だ。定休日は一応あるけど、それでも頼まれれば開店していた。ナナセさんも異世界が楽しいせいもあって、全然休みたがらない。本当にありがたい。でもこんな調子ではいつか体調を崩してしまう…。リスクもあるが、新しく日本から美容師を雇うしかないのかな…。



※※※



「お願いしますっ!アタイをこの店で、雇ってくれないか!?」



 そんな時、閉店後片付けをしている僕達の前に、一人の女性がやって来た



 

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