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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
132/136

オースリー王国ジーク、本音とアドバイス


「今日はこの様な場を用意して貰い、本当に感謝する。ほんのお忍びで来たつもりが、手間を取らせて申し訳無い」


「私もお招き、ありがとうございます」



 急遽行われる事になった、晩餐会…。若干だけど緊張感あるよね。ジーク様やタイーフン様は、それも含めて楽しそうだけど。



「そちらの素敵なお嬢さんがマリーか、うちのサバシオが、一目惚れしたのも良くわかる!あっはっは!」


「本当ね、あなた!かわいい子じゃない!」


「えへへ…ありがとうございます。でも取り合えず断っちゃった。そういうの最近多くて…」



 マリー様はモテモテなんだな。でもその美貌なら納得だよね。



「あの男の子は、タイーフン殿の子か…しっかりしてるとは思ったが…」


「まぁ、俺とは血は繋がってないがな。何だかんだ言っても、かわいい子供さ」


「そうか…あの子があの時の…」


「前向きに生きてるんだ。そんなに気にしないでくれ」


「ああ、そうだな。元王様より男前で聡明そうだし、心配いらないか」


「あっはっは!言うじゃないか!」



 あっという間に、タイーフンさんと打ち解けた。流石ジーク様だ。と言うより、気が合う二人なのかもね。歳は多少離れてるだろうけど、良い友達になりそうだよ。



「ジーク様、どうでしたか…?リトールの街は…」



 ストムさんが質問をぶつける。さっきジーク様からは多少聞いたけど、会談の場でどう答えるのか気になる…。



「素直に良い街だと思う。発展途上ではあるが、活気はあるしな。キクチ達がやっていた授業も、凄く面白かったな。参考にしたいぐらいだ」


「そうですか…ありがとうございます」



 その答えは、さっき僕達が聞いた内容と全く一緒だ。でもストムさんは、何故か物足りなそう…。何か他にも聞きたいのかな…。



「アタシは、もっと本音を聞きたいねぇ」


「あなたは…」


「元大臣のタクラさ。ジーク様は、キクチとも仲良くしてるんだろう?だったら…もう少し腹割って話さないかい?」


「タクラ!失礼ですよ!」


「ストム…あんただって、もっと聞きたかったんだろう?何をちょこちょこやってるんだい。こういう相手に、無駄な牽制はいらないよ」


「ぐっ…」



 タクラさんの言う通りだろう…。聞きたいなら聞く。それだけだ…。ジーク様の事を考えれば、それが一番手っ取り早い。



「折角だから、アタシが聞いてやるよ…ジーク様、国王として、どう思ってるんだい?本音を聞きたいね」


「ふふっ、どこにでもやり手はいるもんだな…本音で言えば、すぐにでも国交したいさ。キクチの力も欲しいからな…街だけを見れば魅力的だ。オリハルコンが眠る街で結界も張られてるし、これから緑も豊富になる。先を見て今すぐ開拓をして欲しい。今のペースだと、何年掛かるかわからんからな。ギルドや商店すらままならないし、人手も足りな過ぎる。でも…」


「でも…?」


「でも…新しい国家だ。民主主義という形もな。だから…これからどうなるのかは凄く楽しみだ。形になるのを待つのも悪くないと思う。心配ではあるがな」


「心配とは?」


「向こうの大陸も含めて、今の王達は優しい。多分誰も攻めては来ないだろう。だが王が変われば話は別だ。先はわからない。正直この街は、攻めるにはあまりにも簡単過ぎる。半日も掛からず、蹂躙出来る…」


「それは言い過ぎでは…」


「お前らは、アントレンの強さを少なからず感じただろう?俺達と戦うという事は、そのクラスの連中と山程戦う事になる。アントレンどうだ…俺達に勝てる要素がこの街にあるか?」



 いきなり怖い話になってきたよ…。皆もアントレンの強さを知っている分、反応に困っている。



「正直このまま十年経っても、勝てないだろうな…俺がこっちに付いても無理だ。そっちが本気出せば、大魔王と竜王まで連れてこれる…実力と人数が追い付くのに、百年は軽く掛かるさ…」


「そこまでの差が…」


「アントレンの言う通りだ。ちんたらやってたら、間違い無くこの国は無くなる。俺達はザドー王国とも、国交は始まってる。何年後までザドー王国はリトールの仲間なんだ?ザドー王国が、ここに攻めてこない保証はあるか?…そういう事なのさ…」


「わっ私は判断を間違えたの…?」


「ストム殿…お前は理解してなかったかもだが、他の奴等はわかっていたと思うぞ。なぁタイーフン殿…」


「まあな…それくらいは予想している…だが戦力差は予想以上の様だがな」


「まあ、それをわかった上で、ここにいる奴等はお前に協力してるのさ…この国がこの先どうなろうともな…ま、ただで潰れる様な連中では無いだろうがな…それも含めて色々と案を出してくれるさ」


「当たり前だろう…俺達が何の為にここに来たと思ってるんだ」



 それはそうだろうけど、ストムさんは不安かもね…。でも独立国の提案は僕がしたんだよね…。少し反省だ…。



「これは上に立つ者としてのアドバイスだ。キクチ達に頼り過ぎるな。だが他の奴等には頼れ」


「それはどういう…」


「お前達は既に、キクチ達に頼り過ぎている…あいつらがいなかったら、今頃お前達はどうなってた?お前達は良くわかっているだろう…」



 死んでいたかもしれない…。未だ進み続ける砂漠化、止まらない砂障壁…。



「キクチ達に頼らなくても、もしかしたら自分達で出来た事も多くあったんじゃないか?あいつらは何でも、無償で奉仕してくれるし、教えてくれる。それに甘えるな…あいつらの知識は、この世界の物ではない。だから俺達には理解しづらい。頼り過ぎると、自分達で何も考えなくなるんだ。与えられる事に満足してな…俺達オースリー王国でも同じ様な状況が数多くあるからな…」


「はい…」


「後、キクチ達にも言っておく…」



 うんうんと頷いていると、急に矛先がこちらに…。



「お前達は先生になる為に、ここにいるのか?違うだろう…リリーシュ様に、何を期待されてるかわかってるだろ?今の仕事のペースじゃどうにもならないぞ…」


「わかってます…」


「だったら、動け…今までの働きも充分凄いと思ってる。だが足りん。お前達の美容文化の発信力と影響力はこんな物か?一年近く経つというのに、この小さな街すら影響が行き渡ってない…オースリー王国の頃のお前達は、もっとオシャレにギラギラしてたろうが…」


「言ってくれますね…」



 確かにその通りだ。マイさんもナナセさんも、良くわかってるはずだ。そしてその言葉に、リトールの皆も反応している…。きっと申し訳無いという気持ちなんだろう…。



「ふん!ジーク様に言われなくても、計画は立ててますから!ね!店長!」


「そうよ!キクチくんがしっかり考えてるから、ジーク様に心配される必要はありません!ね!キクチくん!」


「えっ?あっあ…はっはい…」


「ふっ…まぁ良いさ…頑張ってくれ」



 急に押し付けられた…。何か考えなくてはいけないのか…。



※※※



 そして晩餐会も終わり、パラレルに戻る。そしてお泊まり会だ。二人を久々に日本へ連れていき、大量のDVDを購入しに行った。レンタルじゃなくね…。持って帰る気満々じゃないか。さっきは僕達に頼らないとか言ってたくせに、滅茶苦茶頼ってきたよ。



「まぁそう言うな。久々なんだし。後は酒でも買って帰るか」


「そうですよキクチさん。お母様にも怒られない様に、お土産も買わなくちゃだしね」


「本当に都合の良い…」



 それが、この世界の人達の良い所でもある。今日の夜は取り合えず二人に付き合って、明日またこれからの事を考えよう…。



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