パラレルスタッフ、暇と怒
あれから他の国からも、国交と復興の手伝いの申し出があった。しかしリトールは、それを全て保留する事にした。自分達の手である程度形にしてから、改めてこちらから希望を出す事にしたのだ。
「もっと積極的でも良いんじゃ…」
「実際は、まだ皆が地に足着いてないからね…浮わついたまま始めると、失敗しそうだよ」
「まぁ全員がナナセやアントレンみたいに、単純な人達だったら、楽なんでしょうけどね…」
「お姉ちゃん!私が馬鹿だって言うの!?」
「そうだけど?」
リトールと関係無い所で、争いは止めてよ…。マイさんの気持ちはわかるけど…。
「何ですか、店長!その表情は!馬鹿にする様な顔をして!」
「いっいえ…そんなつもりは…」
単純だけど、鋭いんだよね…。これがナナセさんの怖いところだ…。マイさんぐらい、落ち着いて貰えると助かるんたけどね。でもそれは、年齢と経験が必要かも…。
「ほら!また変な表情した!」
「何か…私も馬鹿にしたわよね…」
「そんな事は…全然…助けて…」
この姉妹は、やはり最強なのか…。逃げ場が無いよ…。
「ギャー!」
※※※
パラレルから逃げる様に、散歩に出る…。そこで街作りを手伝うアントレンと、ばったり会う。
「どうしたキクチ…酷い目に会ったみたいだが…」
「…その通りさ…女性には勝てないんだ…」
「ははっ、そりゃ災難だ…でも最近特に…機嫌が良くない気がするが…」
そうなんだよね。これも問題の一つなんだ。でも理由はわかってる。
「オシャレの発展が、中々進まないからね…お店も繁盛するには通貨がもっと必要だし…ギルドや商店もちゃんと無いから、服や商品の流通も上手に出来ないし…マイさんは美容学校も無いから、尚更…」
「要するに、暇って事か…?」
「そう…とにかく美容師として暇なんだよね…街の発展の為なら、いくらでもする事はあるけど…」
「本業もしっかりやりたいよな…」
そうなんだよ。美容業が疎かになっても、困るんだよね。国交が進めば、そんな事も無かったろうけど…。そんな事は言えないよ。
「アントレンは?最近は騎士として、働く事は無いでしょ?」
「俺はいつでも戦えるから、関係無いさ…砂障壁も無くなって、これから魔獣も増えるしな。ワーンズやエレーカシとも手合わせはするし、若い連中もこの街を守る為に鍛えてやってるからな…」
「いつか、新しい騎士団でも出来そうですね…」
「そうだな、それも良い」
アントレンも、騎士として活躍出来れば一番良いかもね。とにかくこの国は、圧倒的に人が少ない。だから各分野で回せる人数が決まっているし、どこも手が足りていない。当然、美容なんかは後回しされる。衣食住だったら、食と住から充実させるべきだしね。衛兵の育成や、国民の教育も必要だろう。それがわかってて、他国の援助を断ってるんだけどね。
「これじゃ、機嫌が良くなるのは大分先かもな…」
※※※
そんな時に、ストムさんからこんなお願いが来た。
「キクチさん達に…子供達の教育をお願い出来ませんか?」
「僕達がですか?」
「ええ…大人達は家の建設や、農地の開墾、周辺の調査、ギルドの準備、騎士の訓練、ええと…後は…」
「その辺で…良いですよ…要するに人手が足りなくて、子供を見れないって事ですか?」
「そうなんです…手伝える所は、手伝って貰ってるんですけど…それでも…」
「仕方無いですもんね…」
「子供達も何かしたいんだけど、何も出来ないという状況で…本人達もストレスが溜まってるみたいで…このままにしておく訳にもいかず…」
それで僕達に話が来た訳だ。僕達は魔法が使えないから、皆の作業の邪魔になるという、子供達と同じ部分もあるんだよね…。
「クジランからその提案が出て…失礼なんですけど…手が空いてる時間もありそうですし…皆さん頭も良さそうだし…他国の援助を断っておいて、皆さんに頼むのも申し訳無いんですけど…」
「店長やりましょう!活躍の場ですよ!」
「役に立ちましょうよ、キクチくん!」
「まぁ良いか…」
僕達は学校を開く事になった。実際この街で一番暇なのは、恥ずかしながら僕達だよね。結構活躍してるのに、魔法が使えないだけでこの有り様だよ。でも僕達は美容師だからなぁ…基本勉強が出来ない奴が多いんだよね…。さてどうなる事やら…。