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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
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オースリー王国タハラシ、国交を求めて


 タハラシ様は、無事に会談の場を設ける事が出来た。ストムさんを中心としたリトールの古株達と、ザドー王国の旧首脳陣達だ。僕達も参加はしている。



「…という事で、国の発展の協力を手伝いたいと思います。なので国交と、転移陣の設置を願いたいと思ってます…」


「タハラシ様、ありがとうございます…この国の代表としては、とても有り難い申し出ではありますが…」


「ストム様は…ご不満が…?」


「ええ…私の意見は後にして、皆はどう思います?」



 オースリー王国は、経済的援助や人材派遣等を申し出た。聞いている分には、とても良い条件に聞こえたが…。ストムさんは不安そう。そして僕もその気持ちはわかる。そしてリトールの面々は…。



「俺は良い条件だと思うがな…」


「私も特に不満は…」


「私達も他国に行きやすくなりますし…」



 概ね良い反応だ。皆は問題無いと考えてるのか…。



「エレーカシもですか?」


「僕はちょっと…心配ですね…以前キクチさんも言っていた様な…利権に絡んでこなければ…オリハルコンや、他の未発見の植物や鉱物を荒らされる可能性も…」


「私達にそんなつもりは…」


「タハラシ様…あなたはキクチさんの知り合いですし、信頼に値する方なのでしょう…キクチさん達が、わざわざ紹介するぐらいですからね…しかしここにくる人達はどうですか?全員がオリハルコンや新しい鉱物を前に、欲を出さず真摯に協力してくれるのですか?」


「…しっかりと人選は行います…」


「今…少し不安が出ましたよね…そこなんです。私達が気になるのは…僅かな不安も取り除きたいんですよ…私達はここまでくるのに、十年を費やしたんです…この街の人間だけでも、援助が無くても、今はやっていけます…あまり水を差されたくないんです…」



 確かにそうなんだよ。援助されれば、一気に活性化されると思う。でも今いるリトールの人達には、必要とは一概には言えない。下手したら居場所も無くなってしまう…。



「クジランはどう思いますか?」


「そうですね…今この街…国は約千人です。援助を受けた時に、彼等の居場所があるのでしょうか…オースリー王国が入ってきたら、他の国も申し出てくるでしょう。もしかしたら既に準備はしているかもしれません…そうなってくると、国民より多い労働者や移民が…おそらく千は優に越えるでしょうね」


「アタシもそう思う…しかも精鋭が送られてくるね…そうなったら国民の働き場は無いよ…きっと各国の雑用扱いさ…不満も出てくるだろうね…そうなれば…」


「私達のリトールは終わりですね…奴隷国家みたいな物でしょう…クジランやタクラの予想は、最悪を想定した結果でしょうけど…可能性はあります」


「そんな事は…」



 リトールの皆は絶句している。タハラシ様もそんなつもりが無くても、予想は出来てしまう。



「お父様はどうですか?」


「俺が悪い王だったら、攻め混んで終わりだな。当然だろう…いつだって弱者は強者に飲み込まれる。この国は隣がザドー王国だから認められてる…ストムやエレーカシ、かつての国の重鎮がいるからこそでもある。お前達がいなかったら、国家として俺達が認めたかはわからんしな。悪い王だったら絶対に認めないだろう」


「そうよ…私も娘がいるからこそ、ここに来て手伝える事を探してる…でも私はあなた達の話に、納得したからここにいるわ。あなた達の誇りに共感して、私達はここに来たのよ。そこは安心してちょうだい…」



 本当に助けられている。リトールは十年耐え、緑を復活させ、発展させて今がある。そのプライドを守る為に、国を興した。でも僕達は千人しかいない、弱小国家でしか無いんだ。蹂躙されるのが普通なのかもしれない。



「タハラシ様…これが私の意見でもあります…」


「そうですか…」


「それに…もう一つあります…」


「…もう一つ?」


「はい…あなた達は、キクチさん達が一番の目的なのでは?その知識なのか、技術なのかはわかりませんが…元々パラレルは、オースリー王国にあったんですから尚更でしょう…」


「……」


「やっぱり…私達もキクチ達の貴重さは、身に染みてますから…」



 そうか…。僕達か…。常に新しい文化を発展させてきたしな…。



「キクチさんはどうですか?」


「僕は…この国に他国の介入は、現状あまりして欲しく無いですね。もう少し様子を見てから考えるべきだと…個人的意見としては、オースリー王国に行きたいとは思いますけど…多くの仲間や友人がいますから…」


「そうですよね…キクチさん達は、大恩人ですからね…それに、ここの国民という訳でも無い気がしますし…オースリー王国でも、国民という意識はあまり無かったのでは?」


「まぁ…そうかもしれないですけど…でもリトールもオースリー王国も大事で、大好きな国ですよ。ねっ皆?」


「はい!勿論です!」


「当たり前じゃない…アントレンは違うけどね」


「おっ俺もそうだよ!マイのいる所がいつだって祖国さ!」



 アントレン様はオースリー王国出身だから、僕達日本人とは違うのは仕方無い。でもオースリー王国に行きたい気持ちは、きっと僕達以上だろう。



「タハラシ様…僕達はもうオースリー王国にはいないんです。今の居場所はここです。僕達はここの発展を願ってます…この国に迷惑を掛けたいとは思いませんから…なので無理強いはせず、今日の所は…」


「そうだな…その方が良さそうだな…」


「いつか…オースリー王国に行きますから…間違ってもアントレンみたいに、乗り込んできて暴れたりしないで下さいね…それこそ戦争ですから」


「私達がアントレンと同じ過ちを、する訳無いだろう…ふふっ残念だがジーク様にもそう報告しておくよ」


「よろしくお伝え下さい…」



 取り合えず、この場の会談は終了した。これからも、こういう申し出は来るかもしれない。慣れていない皆には、良い勉強になったのかもな。



※※※



 そしてパラレルに戻る。タハラシ様も一緒だ。



「残念です…改めて交流したかったんですが…」


「皆は納得してくれそうですか?」


「正直ヤッカム様は、この結果を予想してました…私なら断るだろうな、と言ってました…私もそんな簡単にいくとは、思ってませんでしたけど…」


「流石ですね…ヤッカム様は」


「ええ、でも一応確認はするべきだし、状況を知る為にも私が来ました。ジーク様は納得するでしょうけど…ディーテ様は文句を言いそうです…」


「僕もそんな気がしますよ…」


「でもザドー王国とは、国交が始まってますから、そこを通してリトールに来る人は増えると思います。そのうち皆も、遊びに来るかもしれません」


「いつでも歓迎しますよ。そして皆に元気な事を伝えて下さい。それと皆にも頑張ってと伝えて下さい。いつか見に行くからと…」


「その言葉に、皆が発奮するでしょうね」



※※※



 そうしてタハラシ様は、泊まりもせず帰っていった。もう少しゆっくりしていけば良いのに、やる事が多いそうで足早に去っていったよ。



「あれは、こっちに来る計画を立てる気だな」


「アントレンもそう思う?」


「ああ、間違い無いな。もしかしたらヤッカムは、その辺も含めて作戦立ててたんじゃないか?」


「ありそうですね」


「私もそう思います!」


「ふふっ皆して来そうね…」



 そのうちオースリー王国の皆が、遊びに来そうだな…。可能性は充分ある…。ま、楽しみに待つ事にしますか。僕達もいつか行きたいしね。



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