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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
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緑のリトール、本当の始まり


 とうとう、砂障壁の解除が行われた。教国の調査も一段落し、古代遺産の鍵も見付かったからだ。古代遺産と鍵は、跡形も無く破壊されたそうだ。保存を考える人もいた様だが、強く反対する訳では無かったそうだ。興味はあるが、これからの事と危険性を考えれば当然らしい。そしてタイーフン様に連れられ、この方も来た。



「初めまして、サバシオです。この度は色々と配慮して頂き、ありがとうございます」


「こちらこそ…よろしくね…」



 これで八歳?随分と大人びてるな。見た目は小さくてかわいいけど、精神年齢はルード様やマリー様より上じゃない?



「これからは、俺の息子として育てるよ。この国なら身分は関係無いから、好きに出来るしな」


「タイーフン様も…偉いですね…良かったね、サバシオくんも」


「はい。色々と話を聞いて…僕が生きてるのも奇跡ですから。それにゴビが本当の父と言われても、今更ピンときません。僕の父はタイーフン一人です。母は幽閉されていますが、生きている…それだけで有り難いです」


「随分と大人だろ?実際頭も良いしな、そのうち役に立つぞ。それと…俺達に様付けは一切止めてくれ。もう平民なんだ。この国は民主主義なんだろ?これじゃいつまで経っても、示しが付かないからな」


「そうですね…タイーフンさん…改めてよろしくお願いします…サバシオくんも期待してるよ」



 そして僕達は祭りをする事にした。と言っても、出店何かは無いけどね。砂障壁も無くなり、ザドー王国との国交も始まり、お金の流通も始まり、緑のリトールとして正式にスタートした記念だ。この砂漠に来て、七ヶ月以上が経った。やっとオシャレ文化が起動に乗る。楽しいバーベキューパーティーだ!



※※※



 そして皆で飲むし、食べる。今日は元王族や元貴族というスポンサーもあり、大量に日本から酒や肉とかを買ってきたよ。リトールに住む人、約千人分だ。マジックバッグがあるとはいえ、一つのスーパーじゃ怪しまれるから、何度も手分けしていろんな所で買ってきたよ。エレーカシさんやストムさんも手伝ってくれて、初めての日本にかなり興奮してたよ。



「また連れていって下さいね!」


「僕も今度は是非、しっかり観光を…」


「ストム、エレーカシ、ずるいぞ!俺も行きたい!」


「私もよ!」



 皆が羨ましがり、また大変な事になる。オースリー王国でもこんな事あったなぁ。他の国の人も、連れていったっけ…。そんな光景を見て、アントレン様が呟く。



「やっぱり、皆で騒いで飲む酒はうめえなぁ…」


「どうしました、アントレン様…急に…?」


「いや…国が一つにまとまるってのは、気持ちが良いのさ…国の上に立った事があるからこそ、わかるんだ…」


「確かにそうですよね…アントレン様も団長でしたし。でもオースリー王国は、ずっとまとまってそうでしたけどね」


「そんな事無いさ…ジークが先代から継いだ時は、大変だったよ…様々な派閥と揉めてたさ…俺も若くして団長になったしな。敵も多かったさ…」



 しみじみとアントレン様は語る。でもそんなもんなのかもね…。人の上に立つのは、大変だろうな。国のトップは僕には無理だ。



「まぁでも、俺は単純に強さでのし上がった分、楽だったけどな!それにキクチ、俺も呼び捨てにしろよ…とっくに身分も無いし、ただの友としてな」


「ふふっ、わかりました…アントレン…」



 もうずっと友達だとは思っていたさ。毎年年末も、一緒に過ごすくらいだしね。



「じゃあ私も呼び捨てね。アントレン」


「まっマイ!当たり前だろ!待ってましただ!」


「じゃあ私も!アントレン!」


「ナナセちゃんは、ちょくちょく言ってたけどな」


「確かに…特に悪口とかね…ジーク様の事だって、呼び捨てにしてたよ」



 そんな感じで、お互いに身分差無く接する様になった。元ザドー王国の皆もだが、こっちは中々大変だろうけどね。リトールの皆も、まだ戸惑ってるから。



※※※



 夜も遅くなった頃、ストムさんの挨拶が行われた。拡声の魔道具も用意し、皆に伝える。



「今日は本当にありがとう。こうやって、皆とお祭りが出来る事が嬉しいです。まだ緑のリトールとして、始まったばかりです。でも不安はありません…今いる私達はあの十年を乗り越えました…ならこの先何があっても大丈夫なはずです!」



 皆も真剣に聞く。タイーフンさんやモーンスンさんも、優しい目で娘を見つめる。



「死んだ者も多くいます…だけど彼等の無念は、私達がこの街、この国を素晴らしくする事で晴らしましょう!もう身分も無いです。私達は常に同じ立場です。今は私が代表ですが、皆さんに不満があれば何でも言って下さい!一人一人の努力が、この国を発展させます。常に対等に意見し、行動し、一緒に国作りを楽しみましょう!」



 皆は頷く。理解しているんだ、自分達が支えなくてはいけない事を。



「そして…私達に道を示してくれた、パラレルの方達にも大きな拍手を!」


「「「「「ワァァァー!」」」」」



 大きな拍手と共に、声援が送られてくる。恥ずかしいけど、嬉しいです。



「最後に…今夜は朝まで飲みましょう!緑のリトールに…乾杯!」


「「「「「乾杯!」」」」」



 そして…久々にあの方が来られる。優しい光と共に、声だけ聞こえてくる。



「緑のリトール…これまで苦労を掛けました…これからの未来に幸あれ…このリリーシュに祝福させて下さい…そしてパラレルの皆もありがとう…」



 そして光は消え、声も途絶える。



「いっ、今のは…!」


「まっ、まさか!」


「リリーシュ様だ…!」


「「「「「ウオォォォー!」」」」」



 最高の盛り上がりだ。やるよね、リリーシュ様は。登場のタイミングがいつも上手だ。いつか、祭りにも参加して欲しいものだ。そしてその勢いのまま、朝まで宴は続いた…。



※※※



 朝になると、道端で死んだ様に眠る人達が溢れていた。緑が増えたとはいっても、まだまだ砂漠の街だ。砂だらけになっちゃうよ…。そんな事を考えながらも、僕はまだ生き残っているアントレンと酒を飲む。



「こりゃ、砂まみれで大変だな。水も豊富になったし、風呂をしっかり作ろうぜ」


「そうですね。孤児院や美容学校に作った、大きい浴場があっても良いですね」



 そんな会話をしていると、そこに一人の男性が現れる。



「見付けた…やっぱりだ…いると思った…」


「おっ…!」


「あれ…?」



 見覚えのある、金髪イケメン…。



「アントレン…キクチ殿…久し振りです!」


「タハラシ様じゃないですか!」


「そろそろバレるとは思ってたけどな…会えて嬉しいぜ…タハラシ!」



 タハちゃんこと、タハラシ様の登場だ。僕達は久々の再会に、熱く抱擁する。本当に嬉しいよ…。でも感動の別れから、まだ一年も経ってないのにね。だけど、また何か起きそうな展開だ…。まぁ、それもこの世界らしくて良いけどね。



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