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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
119/136

ザドー王国首脳陣、再会と会談


 僕達は慌てて準備をしていた。それは、会談の会場作りだ。すぐに、王都に戻った騎士の一人がが戻ってきて、明日来ますと報告をしに来たのだ。行動が早い…。まぁ、この世界らしいけどね。その為に、簡単なテントや椅子とテーブルを大急ぎで作った。もう少し余裕があると思ったのにね。



「きっとストムさんに会いたいんですよ…」


「まぁ、父なら考えられます…」


「後は…誰が来るかだね…」


「父は確実に来るでしょうけど…今の宰相や大臣等、誰がやってるかも知りませんから…」


「そうですか…とにかく明日を、楽しみにしてましょう」


「そうですね。どうなるかは予想出来ませんけど、父だけでも会えるのは嬉しいですしね」



 そう言って、僕達は明日に備えた。ここまでの距離は二、三時間程度だそうなので、お昼頃に会談が始まりそうだ。午前中に最終打ち合わせをして、万全な状態で挑もう。



※※※



 そして、早朝から会談は始まった…。昨日の意気込みを返してくれ。どうやら王様が張り切って、深夜に出発したらしい…。勘弁してくれ…。どんどん予定が変わるよ…。



「ストム…本当に…生きて…」


「会いたかったわ…ストム…」


「お父様…お母様も…」


「僕もいるよ…」


「お兄様も…皆…会いたかった…本当に…うっ…ううっ…」


「俺もだ…ストム…ううっ…本当に良く無事で…ぐっ…」


「私にも…良く顔を見せて…あぁ…ストム…なっなのね…ふぅっ…うっ」



 感動の再会に、皆が泣いている…。側近も騎士もだ。エレーカシさんや、こっちのメンバーだってそうだ。この十年を知っている人なら、この状況に涙しない訳が無い…。でも僕とアントレン様は、少し違う。感動はしているけどね…。この中で嘘泣きや、泣いてすらいない人、他にも怪しい表情をしていないか良く見ている。



「キクチ…何人か怪しそうだ…」


「そうみたいですね…まぁ会談しながら…判断しましょう」



 話したい事も多いだろうが、少し落ち着いたらすぐに会談に入らせて貰おう。積もる話は後でね。



※※※



「すいません、色々と話したいんでしょうけど…」


「構わない。俺も後で沢山話すつもりだしな」


「ストムさんと、エレーカシさんの紹介は大丈夫でしょうが…改めまして、僕がキクチです」


「お前がキクチか…話は少し聞いている。娘を助けてくれて、本当に感謝する。俺がザドー王国の国王、タイーフン・ザドーだ」


「私は王妃のモーンスン・ザドーよ。ストムをありがとうね」


「僕は王子のハーリケン・ザドーです。僕も感謝をさせて下さい」



 皆が座って、会談が始まる。王様夫妻は、五十歳前後かな?ストムさんも三十前だから、それぐらいだろう。お兄さんも三十歳くらいか。きっとこの人達は、大丈夫な気がする。問題なのは、きっとこれからだ…。



「私は側妃のクサーヤ・ザドーです…」


「私は宰相のクジラン・シャーチだ」


「アタシは右大臣のタクラ・マカンよ」


「私は左大臣のゴビ・カラハリです」



 皆そこそこの年齢だろう。右大臣だけは女性なのか。他にも側近として、何人か付いている。護衛にワーンズ様も来ている。さあ、勝負だ。



「話はワーンズから聞いている…お前達は我々を疑っていると…ストム、エレーカシもそうなのか?」


「はい…お父様…確実にそうだと思ってます…」


「陛下…久し振りの会話で、こんな事を言うのも大変申し訳ありませんが…僕達のこの十年は、そうでなくては納得出来ません…」


「どういう事ですの?」


「私は何も聞いていませんが…」


「私も…」


「僕もです…」



 どうやら、タイーフン様以外は何も聞かされていない様だ…。もしかして、僕達に合わせてくれているのか?ワーンズ様もタイーフン様にしか、伝えていないのか?これは協力者として、こちら側にいると判断して良いのか…。



「キクチ…わかる通り、他の者には細かい事情は話していない。ただ、皆が帰って来た事と、ここで会談を行う事しか伝えていない。その方が都合が良いと思ってな…」


「タイーフン様…ありがとうございます。という事は、僕達の仮説は信じられると判断してよろしいでしょうか…」


「うむ。少なくとも、俺とワーンズは納得している」



 よし!こちらの味方だ!



「皆も何の話をしているか、わからないだろう。キクチ、すまないが説明してやってくれないか?」


「はい。では皆さん説明させて頂きます。簡単に言うと、ザドー王国には教国と内通し、砂障壁を起動させた者がいると思います。実際に起動させたのは、教皇ですけど」


「ばっ馬鹿な!」


「そんな事が…?」


「信じられない…」



 ここは全員驚いている。



「僕達は、砂障壁を鑑定で確認しています。教皇の名前まで見れたのは、一人しかいませんが…古代遺産を起動させた人がいるのは、間違いありません。何なら確認して下さい」


「おっおい!誰か見てこい!」

 

「はっ!」



 少しづつ、慌ただしくなってくる。



「砂障壁に教国のメリットが見えなかったので、ザドー王国に何かあると考えました。場所もザドー王国内ですから。理由はわかりませんでした…ストムさんや誰かの命なのか…街やギルド等、何かを隠蔽したかったのか…」


「そんな訳無い…」


「馬鹿馬鹿しい…」


「皆さんは信じないかもしれませんが、一つ聞きたい事があります」



 どんどん誰かを、追い詰めていくぞ。まだはっきりしないけどね…。



「砂障壁が出来て、誰が一番得をしました?利益を上げました?地位が上がりました?」


「それは、どういう意味だ?」


「タイーフン様…そのままの意味です。ストムさんや、誰かがいなくなったおかげなのか、向こうの街が無くなったおかげなのか…砂障壁のおかげで利益を得た人がいたら、その人は怪しいですよね」


「確かにそうだな…誰かいるか?クジラン…」


「陛下…この十年で地位を上げたといえば…言いにくいですが…クサーヤ様です…側妃になりましたので…その結果産まれた第二王子も…」



 その言葉に、クサーヤ様は慌て出す。僕もこの側妃は怪しいと、思っていた。ストムさんの帰還を喜んでいるようには、見えなかったしね。



「私はそんな…たまたまですわ!関係無いです!」


「お父様…いつの間に側妃を取られていたんですか?私はさっきの紹介で、驚きましたよ」


「うっ、うむ。それはな…お前が死んだと思ってな…もしかしたら、ハーリケンにも何か起きるかもしれないと助言されてな…それで側妃を取ったのだ…王候補が一人というのもまずいからな…」


「弟まで…いたのですね…」


「もうすぐ八歳になる…第二王子だ…もっ勿論モーンスンにも了解は取ったぞ!」


「そうよ…渋々ではあったけどね…でも今はかわいいわ。良い子よ」



 ほら怪しい…。国家転覆とまでは言わないが、何か関係しているじゃないか…。



「思った通り、利益を上げているし、地位も上がってるじゃないですか…因みに元々、クサーヤ様は偉い貴族なんですか?」


「私は関係無い!失礼よ!戦争でもしたいの!?」


「クサーヤ…少し黙っていろ。キクチ…クサーヤは公爵の娘だ…」


「誰がその縁談を薦めてきました?クサーヤ様のお父さんですか?」


「いや…そこにいる…ゴビだ…クサーヤの父は、その時には既に死んでいた…」


「へっ陛下!私にはそんな反逆をする訳は…!」


「ゴビ…お前も黙っていろ…後で話は聞いていく…」



 なるほど…。この二人は、関係してそうな気もするけど…何か弱いな…。他にもいるのか?



「じゃあ、ここから簡単に考えられる仮説は…ストムさんが消える事によって、新しい妃を薦めて側妃になり、王位継承権を持つ子供を産む事。その王子が大きくなるのを見計らって、ハーリケン様を暗殺でもする。そしたら第二王子が次の王様になれて、ゆくゆくは教国の属国になって計画の完了…何て言いませんよね?」


「「……」」


「えっ?嘘でしょ?本当にそのつもりだったの?」


「まっまさか、そんな訳無いでしょ!」


「そっそうだ!私にそんな気持ちは無い!」


「ふーん…怪し過ぎますよね。まあ、他にも暗躍している人がいそうですけど…」


「キクチ…確かに二人は怪しいが…砂障壁まで使う必要は…それに他の奴とは…?」



 あくまで僕の想像でしかない。確信は無いけど、可能性はある。



「多分二人は、使い捨ての駒ではないかと…王家乗っ取りはおまけで、他にも何か目的が…」


「キクチの中では、この二人は確定しているのだな…」


「はい…予想ではどちらか…多分ゴビ様は教皇と、何らかの繋がりがあるんでしょうね…」


「何故っ!そんな事をっ!」


「遠い親戚?お金?脅された?それとも他の古代遺産でも渡したか?教皇にしか出来ない何かがあったのか?」



 ゴビの顔色が悪くなっていく。まさか適当に言った事で、どれか当たってる?



「何で取引に向こうが応じたんだ?他の何かを渡す変わりに、砂障壁の古代遺産の起動を頼んだのか?」


「どっどうして…」


「当たりなんだろ?何故そんな事をする必要がある…ゴビ様は王様になれないのに…いや待てよ…まさか…二人は…」


「まさか…?キクチどうした…」



 僕は、ありきたりな結論に達する。そして問題の二人は、かなり顔色が悪くなっている。



「タイーフン様…おそらくゴビ様は…クサーヤ様と恋仲なのでは…それで二人で共謀して…」


「どうなんだ…ゴビ、クサーヤ…」


「「……」」


「沈黙は正解って事ですね…でも何でそこまでする必要があったのか…勝手に二人で付き合ってれば良いのに…」


「アタシは多分わかったよ…陛下、発言をお許し下さい」


「タクラ、話せ」


「クサーヤの父親は、陛下や前陛下を恨んでいたのでは?陛下の叔父ですから…身分は違いますが、かなり優秀だったかと…大分前に亡くなってはいるけど…その怨恨とか…」


「確かに…かなり優秀だった。叔父とはそこまで話す事も無かったが…かなり博識だったと思う。賢者なんて呼ばれる事もあったしな。俺は王妃の息子というだけで、俺は継承権が高かったからな、恨まれていてもおかしくはない」


「アタシはそう考えると、辻褄が合うのかと…前陛下の弟ですから、継承権はずっとありました…先代の時も、陛下の時も…」


「特に俺の時は、叔父がなってもおかしくなかったからな…俺もかなり若かったし、叔父は優秀だからな…身分差という理由で王になれなかった事を、ずっと恨んで…そのまま死に、それがクサーヤに受け継がれたという事か…」



 それだけじゃ無いはずだ。僕は更に意見を言う。



「もしかして…その人はまだ生きているんじゃないですか?」


「えっ?」



 その言葉に皆は驚く。渦中の二人は、更に青ざめていく…。



「僕にはこの二人が、そこまで古代遺産に詳しいとは思えません。今日の対応を見ても、後手過ぎますからね…で、その方は博識なんですよね?」


「そうだが…」


「その人が全ての計画を、立ててるんでしょう。そうですよね?ゴビ様、クサーヤ様…」


「ぐっ…」


「くっ…」


「どうせ、第二王子もゴビ様とクサーヤ様の子なんでしょ?ありきたりな展開なら、間違い無くそうです」


「なっ?…それは…本当か…?」


「「……」」



 やっぱりな…。メロドラマだよね、この展開は。そして二人はもう何も言えない…。



「タイーフン様…現段階で罪を認めたら、二人の刑は減罰して貰えないでしょうか…」


「ふん。こっちには十年分の問題があるからな…簡単には言えん。だが考えてはやろう…で、どうなんだ…ゴビ…クサーヤ…」


「へっ陛下…!私は国の為に…今日まで尽くしてきました…決して…そんな…」


「ゴビ様…諦めましょう…せめて…サバシオだけでも…助けましょう…」


「クサーヤ様…君は…それで良いのか…」


「もう…充分よ…もう疲れたわ…」



 そして二人は認めた。これで解決に一歩前進だ。



「陛下、申し訳ありません…私達は父の指示に従って生きて参りました。キクチの言っていた事は大体あっています…父も生きていますし、サバシオも私達の子です」


「そうか…クサーヤ…決して許される事では無いぞ…」


「理解しています…どんな結果でも受け入れます…ただ、サバシオだけは何も知りません…あの子だけは助けて頂けないでしょうか…」


「まだ何も言えん…お前の父であり、俺の叔父の恨みで事が起きてるなら…サバシオも同じ事をする可能性がある…簡単にはいかない」


「そうですか…そうですよね…」


「陛下!私の首はどうにでもして下さい!サバシオだけは…クサーヤも、私の指示に従っていただけで…」



 二人は懇願する。誰かを救う為に…。そこまで悪い人には見えない…。やっぱりまだ何かある。それが、まだ見ぬ叔父なのか、教国の仕業なのか…。本当の目的は、まだ何もわからない。



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