集落の可能性、街への発展
「こちらが、我々を助けてくれた方々です。キクチさん、ナナセさん、マイさん、アントレンさんです」
「どうも、よろしくお願いします」
会議は始まった。他の集落の方々はリトールに来て、かなりの驚きを見せていた。砂塵の舞わない環境、確保された水源、増え始めている緑、と自分達の集落とはかなり違う現状に目を見張る。そして彼等は期待を胸に、ここにいるのだろう。
「ここに来て、良くわかっただろう?これから変わって行くぞ。お前達はどうする?」
「出来れば…ここに受け入れて貰いたい…スーモルの集落はそう願う」
「俺達、ビグーもだ…」
「私達、ラジーもよ…ここに引っ越して来たいわ…」
他の三集落には、新しい水源は無い。ならここに来て、一緒に生活するのがベストだろう。小さい集落を集めて、街に変えていく方が今後良いかもしれない。
「好き勝手言うな!」
「まずは謝れ!」
「恨みは忘れてないぞ!」
リトールの住民から怒号が飛ぶ。彼等は許せない事実があるのだ。
「あっあれは、しょうがないじゃないか!」
「そうよ!正当な勝負だったじゃない!」
「そもそもお前らが、変な事を言い出したんだろ!」
争いの原因は、小麦だった。各集落で収穫は行っているが、何があっても良い様に、全部集めて分配していたらしい。だが前回の分配で…。
「そもそもリトールが最後の一袋を、じゃんけんで決めようって、言い出したんだろ!」
「私達は、平等に分配しようとしたのに…」
「ぐっ…それは、そうかもしれないが、ラジーがじゃんけんで遅出ししただろうが!」
「それこそ言い掛かりだ!負けたのを認められないからって!」
「しかも…その後…そっちの三集落で分配しただろうが!始めから徒党を組んでいやがった…」
「当たり前でしょ?そもそも平等に分配しようとしてたんだから…」
「それが卑怯だと言うんだ!それならリトールにも…」
「それこそおかしいだろ!リトールが言い出したんだぜ?最初から分配してれば、そんな事にはならなかっただろうが!」
「しかしそれでは…」
馬鹿馬鹿しい…。こんな下らない事に、僕達は気を使ってたのか…。むしろリトールの集落が、悪い気がするよ…ていうか悪いと思う…。この世界らしいけどさ…。昨日話を聞いた時点で、正直呆れてたけどね。
「まぁ、皆さんもそう言わずに、喧嘩両成敗って事で…」
「キクチさん…しかし…」
「正直、僕達はどうでも良いです。そんな事はもう忘れて下さい。皆で協力出来ないなら、僕達も協力しませんよ」
「そんな事って…」
「そっそれは困ります…!」
「店長の言う事を、聞いて下さい!皆さんもいい加減にして下さい!」
「でっでも…」
「キクチくんも、下らない事に時間を使いたくないの」
「「「「「……」」」」」
その後はナナセさんの計らいで、何故か皆で握手させられた。僕達もね。色々と危なかった…。もう少ししてたら、ナナセさんとマイさんが鬼神化してたと思うよ。いきなりそれは危険過ぎるからね…。
※※※
「じゃあ、早急に皆さんはここに引っ越して下さい。家は大丈夫ですか?食料とかも…」
「空き家もあるし…各集落から色々と運べば、何とかなるだろう。食料も、全部持ってくれば問題無いはず」
「僕達がマジックバッグを持ってますから、手伝いますよ」
「それはありがたい!」
「老人の方々や子供は、魔動車や魔単車で運べるしな」
「アントレンさん、助かります…」
次々と引っ越しの計画が決まっていく。無事に解決しそうだ。でもまだ問題は沢山ある。
「そうか…向こうは無事だったのか…」
「お前も息子が…向こうにいただろう…」
「妻もな…でもこっちで、新しい家族が…」
「お前だけじゃないさ…他にもいる。それに向こうだって、俺達が生きているとは思ってないしな…」
お互いに死んだと思っているから、新しい家族が出来てる人もいるだろう。それは仕方が無いと思う。とうなるにすれ、せめて生きていた事だけでも、報告はして欲しい。
「まだ砂障壁の…突破口が見付かってないからな…その不安は置いておけ…」
「それに、古代遺産をダウンジングするにしても、砂障壁の近くは危険だからな…慎重に進めよう…」
「取り合えず、この集落を活性化させるぞ。たった数日で、緑も増え始めてる。野菜や穀物も植えていくからな…開墾や建築もある…かなり忙しくなるぞ」
「ああ、期待してる。やってやるさ…この十年耐えてきたんだ…」
「死んでいった仲間や家族もいる…それを忘れずにいこう…」
「キクチさんが、有り難い事に、野菜の種や土も用意してくれる。皆、本当に感謝してくれ。そしてしっかり協力してくれ」
そして皆が一つになる。僕達も色々と用意はするし、手伝いもする。きっとリリーシュ様が、そう望んでるはずだからね。
※※※
「じゃあ早速、取り掛かりましょう!引っ越しが終われば、店長が大宴会を開いてくれますよ!お酒にお肉に最高です!」
「「「「「ウォォォォー!」」」」」
ナナセさん勝手な事を…。まぁ確かにお金はまだまだあるし、僕もそうするつもりだけどさ、いつも当たり前だと思わないでよ…。
「私は魔単車で、子供を運ぼうと思います!二人なら乗せれるはず!」
「私はキクチくんと一緒に、土や種の買い出しかな?バーベキューの用意もついでに」
「俺は魔動車で、老人を運ぶか。マジックバッグで荷物も手伝うしな」
「まぁ頑張りますか!」
そして僕達は動き出す。新しい街を砂漠に作る為に。




