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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
110/136

教皇の遺産、真実と可能性


「砂障壁だがな…鑑定は出来た」


「それで…?」



 アントレン様達からの説明が始まる。皆も新しい情報に、興味津々だ。



「あれは…古代の魔道具によって起こされた現象だ。人によって発動させられたな…故意か偶然かはわからないが…古代遺産とも言うらしいが…」


「嘘だろ…」


「もしかして、私達を犠牲にするつもりで…」


「実験とか…」



 アントレン様の報告に皆が驚く…。もしかしたら自分達が意図的に、閉じ込められた可能性があるからだ…。



「皆、狼狽えないでくれ!アントレンさんの話を、しっかり聞いてくれ!」


「エレーカシありがとう。…それで皆が鑑定で見たのは、「古代遺産の起動による防衛魔法」というところだ。俺は更に…「起動者ベロベーロバ」まで見えた…まぁ実力的に俺が一番だったからな…」


「アントレン様…その起動者の名前は?誰ですか?」


「あれ?お前達知らないのか?良く知ってると思ってたぞ」


「「「えっ?」」」


「お前らが、ぶちのめした…教国の教皇だよ」


「えっ!」



 確かに、あの人の名前は知らなかった…。ただのハバアとしていたから…。



「あの人が何で、私達の国に…」


「ストムさん…」


「死んじまったから、わかんねぇ…何にしろクソババアだって事だけは、確かだ」



 皆も今更、教国に恨みを向ける事に…。もういないけど…。



「悪い奴等は、全員処刑されてるしな…知ってる奴は少ないかもな…知らない可能性もある…」


「今、教国の事を言っても仕方ありません!なら今どうするかです!」


「ナナセさん…」



 皆は、ナナセさんの言葉に納得する。無い国と、無い人を考えるだけ無駄だしね。



「…で、止められそうですか?」


「古代遺産の場所がわかれば…だが…仮に見付けたとしても、止められるかどうかは別の話だ…」


「ストムさんと一緒に来てた、学者さんとかは…何か知ってる事があれば…」


「二年前に…死んだ…すまない…」


「そうですか…知らなくて…」


「…魔動車もあったからな、かなり近くまでは行けたんだが…あの砂障壁の中にあった場合は…絶対に無理だ…」



 今は八方塞がりか…。取り合えず、僕達の考えも話しておこう。



「砂障壁はわかりませんけど、この砂漠化の原因は少しわかりました」


「本当ですかっ?」


「はい、エレーカシさん。僕達の意見だと…この砂漠化の原因は、人為的に起こされたと考えます」


「そんな事が…」


「まさか、教皇が…」


「教皇は違うと思いますけど、教国の可能性はあるかも知れません。もしかしたらザドー王国かも…。とにかく僕達にはどう見ても、自然の砂漠には見えないんです」


「なっなんで…」


「気温と降水量、生息する植物が…この砂漠と合ってません…環境が噛み合ってないんです」



 そして僕達は簡単だが、砂漠化の原因や仮説を伝えていく。百年前の、小国の滅亡の話も踏まえて。



※※※



「という事で、その国の跡地を調べてみたいなと…何か原因を探る、ヒントがあるかもしれないので…」


「なるほど…砂漠にはそんな事が、関係するのだな…」


「私達って、何にも知らないんですね…」


「この十年…俺達は何を…」



 皆が知らない事の多さに、酷く落ち込んでいく。



「今までの環境が環境ですから、仕方無いですよ…それに僕達も専門家では無いですし、正しいとは言えませんから…」


「それでも充分過ぎるよ。僕達が十年掛けて何も出来なかったのに、この数日で君達は何もかも変えてしまった…それに新しい可能性まで示してくれる…」


「本当に頭が上がりません…」


「止めて下さい…ストムさん、エレーカシさん…皆さんも…」



 皆が頭を下げてくれる。でも僕達は日本と行き来も出来るし、揃っている物も多い。皆さんと環境が違い過ぎるから…。



「俺も…ちょっと気付いた事があるんだが…」


「アントレン様も?」


「ああ…この砂漠って魔物はいないのか?」



 確かに見てはいない。そもそも異世界で僕達が会ったことある魔物は、三年で竜王のニール様と、僕達を運んでくれたワイバーンだけだ。これはかなり珍しいケースだろうけど。



「この十年で、殆どいなくなりました…砂漠という環境が辛く、死滅していると思ってましたけど…」


「そうか…やっぱりな…という事は、ここは本物の砂漠じゃ無いって事だ」


「えっ?」


「本来なら砂漠には、その砂漠の魔物が生まれるはずだ。森だろうが、海だろうが、山だろうが、同じだ。その環境に合った魔物が生まれるんだ。勿論、動物や様々な生物もいるはずだ」


「そっそうか…何で僕はそんな事に気付かなかった…」


「まぁ仕方無いさ、いきなりこんな環境にされたら尚更な。考えも鈍るさ」



 エレーカシさんは気付いたみたいだけど、僕達はわからない。



「魔物はな、動物や虫なんかの死体が、魔力を取り込んで生まれ変わる。他にも、生きた状態で何らかの形で、魔力を過剰に受けとると、魔物に進化したりするんだ。魔石は知ってるだろう?あれがその魔力の集合体さ」


「それが…」


「ここでは、それが起きてないって事さ。要するに、魔力が他の動物に取り込まれていないんだ。そもそも環境に合った、動物が少ないだろう?だから魔物が少ない。もしくは、いないのさ」


「砂漠の生物が…そもそも住みにくいのか…砂の環境と、キクチさんの言っていた…気候が噛み合ってないなら…住めるはずがない…」



 同じ水でも、淡水と海水が違う事と近いのかもしれない。本物の砂漠じゃ無いなら、砂漠の生物はいないはずだ。気候が全く違うなら尚更だ。



「という事は…」


「その本来なら魔物や動物に渡る魔力が、別の何かに使われてるって事さ。おそらく、それが砂漠化の原因だろう。こっちは違うと思うが、砂障壁も可能性はある」


「アントレン様達は、吸われて無いんですか?」


「魔物と人間は違う。魔力も種類があるのさ。学者に会ったら、聞いてみると良いさ」



 酸素とか、水素みたいな事かな…。それを選んで、自然と吸収してるのか…。まぁ、別に知らなくても良いけどね。僕達には、どうせ魔法は使えないから…。



「砂障壁が出来るまでは、まだ他の所から動物や魔物も、来てただろうな。それが今は砂障壁のおかげで助かってる。不幸中の幸いだ…魔物に関してだけだがな…」


「確かに…それに砂障壁が出来る前から、魔物は少なかったはずだ…いつも被害は少なかった…」


「そうだろうな…砂漠化させる為に、魔力が使われてるんだから」



 色々とわかってきた。後はどう行動に移すかだ。



「ダウンジングしましょう!」


「えっ?ナナセさん?」


「水源も見付けたんです。砂漠化の原因も、砂障壁の古代遺産も、ダウンジングで発見させます!」


「ナナセ…あまり無責任な事…」


「お姉ちゃん!大丈夫だって!」



 そう言って、ナナセさんは計画を立て始めた。流石だよ隊長。皆も乗り気だしね。



※※※



「じゃあ明日は、小国の遺跡にダウンジングしに行きます!」



 明日の予定が明確になった。僕とマイさんは留守番だけど、ナナセさんとアントレン様が、何人か連れて遺跡に行くらしい。僕もちょっと行きたかったけど…。少し遺跡とか見てみたいじゃん。海外旅行みたいだし…。まぁ、期待して待つ事にします…。


 

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