パラレルスタッフ、原因究明と結界
今日は朝から、アントレン様達が砂障壁を調査しに行った。マジックバッグから魔動車を出し、それに乗ってね。オートマ仕様だし、教えればアントレン様でも運転出来るだろうしね。皆も新しい魔道具に驚いてはいたが、流石この世界の人達だけあって、飲み込みが早い。何の疑問も持たずに、乗り込んで出発してったよ。
「じゃあ、僕達も調べて見ますか」
「はい!」
そして僕達も、あらためて周辺を調査する事にした。お店はまだ暇だしね。そして、マイさんから単純な疑問が出る。
「何かさ…変じゃない?」
「何がですか?」
「気候よ…水が無くなる程、暑くもないし、乾燥もしてない気が…」
「確かに…夜も普通でしたね…」
「まぁ夜は、極端に寒い地域もあるらしいけど、そこまで気温は下がらない所も一杯あったはず…」
「お姉ちゃん、詳しいね!」
「そこまで詳しくは無いよ…まぁ後でインターネットでも使って、調べてみるけど…それでも何かさ違う気がするんだよね…」
確かに砂漠のイメージとは、ちょっと違うかもしれない。もっと暑くて、ジリジリした日射しがある気がする。何だったら、ダウタウーン公国の方が暑かった。
「ちょっと聞き込みでもしてみますか!」
「おっとナナセ、刑事みたいね」
「ははっ、でも良いですね!聞いてみましょう」
そして僕達は、各自に別れて聞き込みをした。
※※※
「とうだった?」
「やっぱり、年間通してそこまで暑く無いみたい。冬程、寒くはならないみたいだけど…雨も結構降ってるみたいだし…」
「私も同じよ…降水量がある程度あって、この程度の気温で砂漠化ってするのかな…」
「僕もです。それと元々あった植物も…向こうの大陸と変わらないみたいで…今残ってる植物も、暑い地域特有の植物では無さそう…」
「私も見たわ…それに砂漠特有の植物も無いしね…まぁ地球とは違うかもしれないけど…それでもそれっぽい物すら…」
「オースリー王国でも、地球と同じ植物は多少あったもんね…」
やっぱり、何かおかしい気がするなぁ。
「海側から回って、向こうに行けないか聞いたけど、海の向こうにまで砂障壁はあるみたい」
「アントレン様も、そう言ってたよ。どうやらこの大陸の南部を、丸々と囲んでいるみたい」
「他の国も無いみたいだし、逃げ道は無いのね」
「もう少し南に行った所に、小さな国はあったらしいよ。百年位前に、滅んだらしいけど」
「私も聞きました!それに砂漠化もそれぐらいから、始まったっていう噂です!」
砂漠化によって、人が住めなくなり滅ぶならわかるけど…。その前には滅んでたのか…。
「何でその国は、滅んだんだろうね…」
「私も聞いたんですけど…ストムさんも、ザドー王国に戻ればわかるかも…とは言ってましたけど…」
「それは難しいか…」
「なんか人為的に…砂漠化させてる気がしない?ねぇキクチくん」
「マイさんも、そう思います?僕もやっぱり自然現象とは違う気が…まぁ、そんなに詳しい訳では無いから…確証は無いけど…」
「やっぱり魔法とか魔力が、関わってそうですね!」
そう考えた方が、辻褄が合うかもね。でも魔法も気象も、知らない事の方が遥かに多いからなぁ。専門家がいると、良いんだけどね。
「そうだ!良いこと思い付きました!」
「何?ナナセ…」
「店長!エルフィを覚えてますか?」
「そりゃ勿論…」
「私達は何で、あそこに行ったんでしたっけ?」
「世界樹を治しに…」
「世界樹は何の為にありました?」
「エルフィを守る為…」
「エルフィは何から守られてました?」
「魔物や色々な攻撃から…」
「世界樹は何の木でした?」
「桜の木…ソメイヨシノ…ってまさか!」
「そうです!桜の木を植えましょう!」
そうだエルフィは、ソメイヨシノが守っていた。魔物や環境の異変からね。パラレルにある加護みたいな物だ。
「取り合えず、新しく出来た水源の近くに、苗木を買ってきて植えましょう!」
「そうだね!肥料とかもついでにね!」
「急にノリノリじゃない」
「お姉ちゃんは、見てないからね。あの状況を。世界樹は桜だよ?きっと、ここでも何かしらの効果が、期待できるよ。また皆にさ、協力して貰って魔力も入れて貰おうよ!」
僕達は、すぐに苗木を買いに行った。ホームセンターにね。
※※※
速攻で僕達は買い物をし、戻ってきた。まだアントレン様達は帰ってこないが、早速僕達は作業に入る。
「この辺で良いか…」
「じゃあ、砂を掘っていきましょう!」
「じゃあ、皆でお願いね」
「「「「「おう!」」」」」
気が付けば、男性陣が手伝っていた。隊長の子分達だ…。昨日の頑張りの結果だな…。
「よし、こっちの土と肥料も混ぜておこう」
「キクチさん!私達にも手伝わせて下さい!」
「あっありがとうございます…」
今度は女性陣が手伝ってくれる。きっと自分達も、何かしたいんだろうな…。
「僕達の仕事が無いね…」
「そうね…」
「まぁ喜んでるみたいですから!」
この集落の可能性に気付いたから、嬉しくて動かずにはいられないのかもね。
※※※
「よし!これで完成ですね!」
「店長!違いますよ!これからこの小さい苗木に、皆さんの魔力を入れて貰わないと!」
「そうだったね…じゃあお願いしますか」
そして、皆がナナセさんの指示に合わせて、魔力を入れていく。皆も初めての経験らしく、少し戸惑いながらもやってくれる。
「生命力を高めるイメージで!」
「はいっ!」
「この集落を守るイメージで!」
「「はいっ!」」
「自分達の…子供達の…未来を作るイメージで!」
「「「「「はいっ!」」」」」
気が付けば、小さな子供まで…。軍隊の様だよ。そして気のせいか苗木が…。
「少し大きくなってない?」
「あれ、本当だ…」
「そんなバカな…」
「皆も見てないで!協力して!もっと大きくするよ!」
明らかに育っている…。ソメイヨシノ強し…。そこで…。
「面白い事やってるじゃないか」
「何ですかこれは?」
アントレン様達が帰ってきた。砂障壁の結果も聞きたいけど…。
「アントレン様!エルフィの時みたいな事ですよ!魔力余ってるでしょ?今すぐ協力して下さい!」
「おっおう」
「エレーカシさん達も、ボーッとしてないで!」
「はっはいっ!」
ナナセさんに急かされ、すぐに魔力を与える。色々大変な事してきたはずなのに、こき使ってすいません…。
※※※
「嘘でしょ…」
「お姉ちゃん、驚いた?」
「当たり前でしょ…まさか咲くなんて…」
桜は咲いた。まだ世界樹の様な、大きな桜にはなってないが、普通の桜の大きさにはなっている。僕も驚いたよ。
「アントレン様…どうですか?エルフィの様になってます?」
「ああ、信じられないがな…この集落には結界が張られている…そこそこの大きさにはなってるな…」
「ほっ本当だ!砂が舞ってない!」
「かなり…空気も吸いやすいぞ!」
「やったー!」
そこで歓喜の声が上がる。よし!これでまた変わってくるぞ!
「上手くいけば、草木も生えて砂漠化も治まるはずです!」
「ああ、そうだな…でも砂障壁の話もあるからな…」
「僕達も色々と考えました…そして…問題が…」
「じゃあ話を擦り合わせるか…」
そしてまた僕達は、エレーカシさんの家に集まって話をする事に…。今後の動きは、さてどうなる?