異世界美容室パラレル、閉店
とうとう皆との別れの時間だ。もうすぐパラレルは、この世界から消える。その最後にまた皆は集まってくれた。
「妾はいつか見事な美容師になるのじゃ!」
「サハラ様…きっとなれますよ」
「いつか、君達の漫画を描くよ。この世界の為にしてきた事をね」
「マガジャさん…カッコ良くお願いしますよ!」
「私に…新しい道標を作ってくれて、ありがとう」
「ミナラーさん、新しいお店を任せますよ!」
最後の挨拶を順番にしていく。この世界で僕が関わった人達だ。教会の人達や、孤児院の子供達もいる。
「私が教えをしっかり守り、広めますから」
「サッパーリ様もたまには、ヌーヌーラ共和国に帰ったらどうですか?ウルルさんや、チノピン様も迷惑じゃ無いの?」
「キクチ兄ちゃん、いつかまた会おうな!」
「そうなる事を祈ってるよ。エライナさん達に迷惑掛けないようにね。美化ギルドも頑張って!」
そして各ギルドや、商会とも挨拶をした。マイさんや、ナナセさんもだ。本当に名残惜しい。皆、涙を堪えている。
※※※
そして、各国との挨拶も終わり、とうとう時間だ。
「これ、持っていけ!餞別だ!」
「サイトウさん、何ですか?マジックバッグですか?」
「魔道具や魔単車、魔動車も入ってる。他にも色々な」
「日本に持ち帰っても…」
「いつか必要になる気がしてな!」
まぁ良いか…。使う機会は無いかもだけど…。その言葉、信じてみようかな。
「アントレン…またな…」
「ああ…タハラシ…いつかな…」
二人は抱擁しあう。再び出会う…それが一生無い事もわかっている。でも二人は繋がっている。
「お姉ちゃん、良かったね!」
「ふふっ、なんの事?」
「とぼけちゃって!」
アントレン様をマイさんは受け入れた。今後どうなるかは、まだわからないけどね。
「俺の母親にも、いつかまた会いに行ってくれよな」
「カズヤ…わかってるわ。必ず会いに行く」
二人も元夫婦だ。色々と思う事はあるだろう。そして皆とも最後のお別れだ。
「そろそろ時間ですね…」
「ああ、キクチさよならだ。この国を、世界を助けてくれて、ありがとう」
「ジーク様、こちらこそですよ。ありがとうございました」
僕達は店に入る。皆は店の外だ。お店の窓を開け、皆に手を振りながら精一杯僕達は叫ぶ。
「皆さん!本当にありがとうございました!三年間、凄く凄く楽しかったです!」
「私もありがとう!二つ名に恥じない生き方をしてね!皆!最高だったよ!」
「私の生徒達!この世界の美容文化を任せたよ!皆オシャレに生きてね!」
僕達は涙を流しながら叫ぶ。向こうの皆も泣いている。
「ありがとう!」
「元気でな!」
「いつかまた飲もうぜ!」
「ありが…」
「楽しかっ…」
「…」
外の視界が歪み始める。声も届かない…。そして外の景色は…。
「日本に戻っちゃったね…」
「はい…店長…」
「そうね…」
「あっあっあー俺の声は聞こえますかーオーイ」
外は日本。夜の十二時。パラレルは四年目を迎えた。嬉しくもあり、寂しくもある…。ていうかアントレン様は何を…。
「まさか声が…通じる?」
「ああ、そうみたいだな」
「リリーシュ様も、粋な事しますね!」
「感動のお別れが、拍子抜けよ」
「またまた嬉しい癖に!」
「ナナセッ!」
そんなやり取りをしつつも、まだ寂しさは残る。夜も遅いので、今日は皆で僕の家に泊まっていく。まぁアントレン様は、ずっとかもだけどね。明日からの事は、明日考えよう。
※※※
そして朝。今日から日本で、パラレルは営業開始だ。といっても少しお休みしてからとは、思ってるけどね。そして改めて窓の景色を見てみる。サロンの街とは違う、昼間の日本も久々だしね。
「サロンの街とは違って…えっ?」
「店長…おはようござっ…へっ?」
「どうしたの、二人して…はっ?」
「おーっす。今日から日本に、慣れていかなきゃだからな、あれ?外はこんな感じだったっけ?」
僕達は驚く…。外が日本じゃないよ…。まさか…。
「ちょっとこれ日本じゃないよ!どこだ?」
「ていうか…砂漠ね…街とは言えなそうね…集落って感じよ」
「どうなってるんですか?店長?」
「えっ?そうなの?日本じゃない?」
「リリーシュ様が、やりやがったな…どこだよここは…」
皆も考えるが、わからない。まずは探索からだね…。やってくれたよリリーシュ様!まさか、新しい土地で異世界美容室開店とはね!でも楽しみでもある。さーて、やってやりますか!
終わりではありません。また始めます。少し休んでから再スタートのつもりです。