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異世界美容室  作者: きゆたく
三年目、異世界大陸革命編
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大忘年会と大新年会、皆の想いと僕の想い


「きのこ持ってきたぞ!」


「僕も海産物を沢山ね!」


「ライオトーラ様、オターク様、ありがとうございます。その辺に置いといて下さい」


「私も沢山持ってきたよ」


「ショークパ様もすいません」



 僕は今、バーベキューの準備で大忙しだ。元主婦で料理の得意なポンデリーン様や、各国王妃様も絶賛奮闘中だ。



「普段はこんな事、任せっぱなしだからね」


「シヒリ、妾もじゃ…」


「サハラは美容学校にも行ってるんだから、まだ良いわよ。私なんて本当に何もしないわ」


「アイドーラ、私みたいに元主婦の知識があると便利よ」


「ポンデリーンみたいに、一回死ななきゃね私達は。来世に期待よ」



 皆、好き勝手喋りながらも、僕やポンデリーン様の指示通り行ってくれる。



「私はジークもするって聞いてたのに、騙されたわ」


「ディーテ、私も…」


「シャームネーも?やっぱり…後でお仕置きね…」


「妾も…カナヤが手伝うと聞いていた…」


「私も…」



 これは後で揉めるな…。男性陣を見てみると…もう飲み始めてるしね。



「沢山、バーベキューセットも用意したから、使ってくれ」


「ディンドンさん、ありがとうございます」


「最後なんだ、気にすんな」


「そうですよ。私達も手伝いますから」


「ギルデさんも…」



 良く見れば、ヤシノさんやユニクさんのギルド勢、エルメスさんやリダリーさんの冒険者勢、エルフィの皆まで来ている。こりゃ大変だよ。お酒や肉が足りないかも…。



「キクチさんの為に、謎の緑肉を用意してますから!」


「料理は私も出来ます!」


「私も!」


「マリベルさんに、ポニョンさんに、プルトンさんもお揃いで…嫌な事は勘弁して下さい…」


「あら何でダメなの?聞きたいわ」


「僕も興味があるね」


「ナヤマンさんに、ハマナンさんも…止めて下さい。トラウマなんですよ…」



 皆、順番に挨拶をしに来てくれる。本当に感謝だね。



「「「「「一気、一気!」」」」」



 向こうでは、銀翼の騎士団も盛り上がっている。国防は大丈夫か?まぁそれだけ平和になってるって事だけどね。



※※※



「今日は僕達の為に、ありがとうございます!とことん飲み明かしましょう!乾杯!」


「「「「「乾杯!」」」」」



 そこからは戦場だった。皆で食事の取り合いだ。身分や種族は関係無い、そこにあるのは食欲だけだ。



「店長!皆、凄いですね!」


「そうだね!でも僕達も負けないよ!」


「そうですね!飲みましょう!」



 僕達もあの戦場に入っていく。でも食料が減ってくると、また作らされる。大変だよ。



※※※



「流石に多すぎるよ!お酒が足りない!」


「キクチくん、最後だから関係無いよ!日本に買い出しだ!誰か付いてこい!」


「「「「「ウオォォォー!」」」」」


「マイさん…大丈夫?」



 そこからは順番に、日本に買い出しまで出るようになったよ。もう僕達が異世界人という事も皆知ってるしね。決まりなんかあったもんじゃない。でも最後ぐらいは良いよね、リリーシュ様!



「妾も行きたいのじゃ!」


「俺も最後にもう一回!」


「僕も行きたいよ!」


「何だよ、やるのか?」


「やってやるよ!」


「てめぇら勝負だ!取り合えず、腕相撲でな!」



 もう訳わからない…。何で腕相撲なんだよ、じゃんけんだろそこは…。ライオトーラ様が有利だから、自分で提案したけど、皆は酔っ払って気付いてないし…。好きにしてくれ…。



※※※



 案の定、年越しの瞬間はハマナンさんのオリジナル魔法、魔花火で大盛り上がり。でもその盛り上がりは一瞬だ。すぐまたお酒と食に戻る。そして日本行きを掛けて、また謎の勝負が始まるし。



「良し、次はキクチに謎の緑肉を食わせるぞ!」


「「「「「ワアァァァー!」」」」」


「やっ嫌だー!」


「許さん!最後なんだ!」



 最悪だ。無理矢理食べさせられる!逃げろ!



「師匠!ここは通しません!」


「オーパイさん、そこを退くんだ!あっちょっと、皆…無理矢理…あっ…イヤー!」



※※※



 ひどい目にあったよ…。まぁ最後と思えば…許せないな…。絶対に許さん!



「キクチ、大変だったな!」


「アントレン様…最悪ですよ…」


「まぁ皆の選別だと思ってくれ」


「はい…わかってますけどね」


「今のうちに言っておくよ…」


「何ですか?」


「…俺もお前らに付いていく事にした…」


「えっ」



 嘘だろ!向こうでアントレン様の居場所は…作りにくい…。生活もどうやって…。働き口や戸籍も無いし…。



「キクチ、お願いだ。しばらく、お前の家に置いてくれないか」


「向こうで生活するには…あまりにも厳し過ぎるかと…」


「わかってる…上手くやる、絶対に迷惑は掛けない!」


「皆には…何て言うんですか…」


「ジークには伝えた…騎士団も辞めた…」


「良く納得しましたね…」


「完璧にはしてないさ…」



 そりゃそうだろうな…。でも許してくれたんだ…。



「そうですか…マイさんには…」


「マイには、まだ伝えていない。キクチの了解を取ってからだ」



 本気なんだ…。この気持ちに応えたいけど…。



「もしかしたら、向こうに戻った段階で加護が無くなります。そうしたら、言葉も文字も通じなくなるかもしれません…それでも良いですか?」


「ああ、最初からそのつもりだ。ヤッカムにもそう言われたよ」


「そうなんですか…」


「弟さんやタハラシ様は…」


「ナシコレンは納得してたよ。兄さんらしいとさ。タハラシは…大喧嘩だ。思いっきり殴られたよ。でも…いつかわかって貰えると思う…」



 そこまで言うなら…。僕は構わない。むしろ嬉しく思う。



「わかりました。僕は受け入れます。でも…マイさんに確認を取って下さい」


「ああ、勿論だ。断られても、振られても行くけどな」


「ははっ、アントレン様らしいですね」



 ここで一つの決意を、受け入れる。日本に帰ってからも大変だよ。



※※※



「アントレン様は付いてくって?」


「カズヤさん…」


「俺は絶対に付いていくと…そう思ってたよ」


「そうなんですか?」


「だから安心して、ここに残れるしね。彼は絶対にマイを選ぶと思ってた。それに、僕にも報告をくれたよ」


「義理堅いですね」


「うん。彼らしいよ。俺に任せてくれ、だってさ」



 そうか、カズヤさんにも報告を…。



「私はまだ許して無いがな」


「タハラシ様…」


「キクチ殿…」


「はい…」


「アイツを頼む…」


「はい」


「アントレンは、バカで、不器用で、マヌケで、雑で…でも私よりも…強く…私よりも…真っ直ぐで…私よりも…カッコ良い奴なんだ…」


「ふふっ、そうかもですね…」


「きっと誰かの支えが必要なはず…それが私にはもう出来ないからな…キクチ殿に任せるよ…」


「はい。任されます」


「私は行けないが、誇りと気持ちは渡したつもりだ。受け取ってくれ」


「はい!」



 熱く握手をする。タハラシ様も何だかんだ言って、アントレン様を気にしている。多分この世界で一番だと思う。同僚であり、ライバルであり、一番の親友なんだ。皆、わかってる。



※※※



 そして朝まで僕達は飲んだ。眠る人もいたけど、そこからまた飲み始める。間違い無く、もう一日飲み明かす。お前ら、最高かよ!



「店長…もう飲めません…吐きそうです…」


「もう…少しゆっくりしな…二階で寝て良いから」



 気が付けば、勝手に僕の家で寝ている人もいる。まぁ良いけどさ。どうせ起きたら、また飲み始めるしね。



「キクチさん、今日は誘ってくれてありがとう」


「あっ、ユウリさん、やっと来たんですね」


「うん。年越しは旦那の実家だしね。今来たけど、凄いねこりゃ」


「本当にね。あっちで、サイトウさんとポンデリーン…いやアスカさんが飲んでますから」


「うん、ありがとう。私は今日でお別れだからさ、とことん飲むよ!写真とかもたんまり撮るから!」



 ユウリさんは、サイトウさんとポンデリーン様の決断を、あっさりと認めた。そして今日が今生の別れになる…。でもそれが二人の為だと理解し、いつか自分が死んだら、転生するつもりで生きていくそうだ。その決心は本当に凄いと思ったよ。でも悲しい、寂しいの気持ちは絶対にある。せめて今日が最高の日であって欲しい。



※※※



「もうダメ…」


「まだいける…」


「酒を買いにいくぞ…」



 次々と倒れていく。二日間の二徹だ。無理もない…。とにかく最高の二日間で、最高の仲間と一緒に、最高の思い出が出来た。来週には皆と別れるけど、この日を皆が忘れなければ良いな…。



新作を書いて見ました。良かったら見てみて下さい。

https://ncode.syosetu.com/n9182fb/

『キルの矛盾と整合は、生と死か』です。

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