皆の想い、年末行事
その後も時間は、あっという間に過ぎていく。リリーシュ様の信仰祭も終わった。今年は僕達の為に、各国からも多くの参加者が来てくれた。様々な仮装、沢山の露店、ハマナンさんの魔花火と、凄く盛り上がった。
「誰も言ってきませんでしたね」
「そうだね」
「私達に、気を使ってるんですね」
僕達に帰らないで欲しい、という声は誰も掛けてこない。むしろ快く送り出してくれる様だ。ジーク様達ですらね。
「何か言いたそうではあるけどね…」
「本当は残って欲しいんでしょうね…」
「僕達には、どうしようも無いからね…」
僕達は、もうすぐこの世界を去る。少しでも思い出を作りたい。この世界の皆と。
※※※
「今年の年越しは、皆来るからな」
「…ジーク様達だけですか?」
「他国の皆も呼んで、盛り上がろうと思う」
「そんなに、お店には入れませんよ…」
「外でバーベキューをすれば良いだろう」
「僕が忙しいだけじゃ…」
「そんな事が出来るのも最後だしな…」
確かにそうだ…。この世界に振り回されるのも、最後だと思うと寂しいものかもしれない…。まぁ良いか…。
「ルードやマリーも楽しみにしてるしな。デリタム王国はきのこ、ダウタウーン公国とゲーイジューツ皇国は魚介類とか、大量に準備してるぞ」
「大量に持ってこられても…なら皆に手伝って貰いますからね…」
「ふふっ、そうだな最後ぐらい俺も料理してやるさ」
最後は、皆をこき使ってやろう。当然だ。
「ここの跡地に建てる美容室は、どうしたら良いと思う」
「ヤッカム様…それはディーテ様や、皆で考えて下さい。ここに残る人達で…。僕達が完成を見れないのは残念ですけど、信じてますから」
「そうか…そうだな…我々がしっかりせねばな」
皆が頑張って働いている姿は見たい。でもそれは僕達が去った後の話だから、しょうがないさ。期待はしているけどね。
「キクチ殿…アントレンが最近悩んでいるようで…」
「そうですね…マイさんがいなくなりますからね…折角、貴族籍を外して…やっとデートまで出来る様になったのに…」
「寂しそうで、張り合いも無くて…まぁ、気持ちは理解してますが…」
「こればかりは…時間が解決してくれるのを、待つばかりですね…」
アントレン様は、マイさんが大好きだ。でも引き留めはしない。それが良いと、わかっているからだ。寂しいけど、笑ってお別れをしたい。マイさんも、色々と考えてはいたみたいだけど、しょうがないの一言で終わらせていた。心苦しくは、思っているみたいだけどね…。
※※※
そして年末には、美容学校の卒業式が行われた。一期生の十五名の為に、多くの来賓も来られた。自分の領地に戻る貴族、王城に戻る侍女、パラレルの跡を継ぐ貴族と元影…。本当に皆で頑張って欲しい。僕もマイさんも号泣だったよ。勿論生徒もね。新しい美容文化と、オシャレをこの人達で作っていく…。僕達には出来なかった、新たな価値を見出だして、世界を広げて欲しい。
「本当に、ありがとうございました」
「一生忘れません…」
「僕達を、忘れないで下さいね」
皆とも熱く抱擁、握手する。こちらこそ、ありがとうと言いたい。誰が忘れるものか、君達を忘れる訳がない。その後も打ち上げで、皆で楽しく飲んで騒いで、また泣いて…。本当に、忘れられない思い出をありがとう。これからの皆の健闘を祈るよ。
※※※
そして、もう大晦日だ。今日からお正月休み。例年だと四日間だけど、今年は三日間にした。少しでも皆に、オシャレを提供したいからね。スタッフも快く受け入れてくれた。お店が無くなる事もあり、連日大盛況ではあるけど、不思議と疲れていない。ただ楽しいだけだ。そして、今日も沢山のお客様が来る。年越しバーベキューにね。街の皆も、各国首脳陣も、皆で大騒ぎだ。今日はこれから大忙しの飲んだくれになるよ。
「張り切って、頑張るか!それにめっちゃ飲んでやる!」
最後の大宴会。二徹は覚悟して、飲み続けます!多分皆もその覚悟のはずだ!やってやるぜ!