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異世界美容室  作者: きゆたく
プロローグ
1/136

※雑貨屋の娘、マリベル来店※

 初めての投稿です。優しい目で見て頂ければ幸いです。


「ここが噂の店だな…」



 最近噂になっている突然現れた、髪を切ってくれる店。この店で髪を切ってもらうと幸せになるらしい。宿屋の娘で友人のポニョンもすごく誉めていた。外観も聞いていたとおり、少し不思議。この町は石やレンガや木で基本できているのに、この店は見たことない素材だ。こんな大きなガラス窓も見たことない…。



「とにかく入ってみよう…」



 ドアを開けて入ってみると、チリンと鈴の音がした。その音に気付いた女性がやってきて「いらっしゃいませ!」と声を掛けてきた。



「お店はお初めてですね!?」


「はい…」


「今日はどのようなご要望でしょうか?」


「友人のポニョンに聞いて…私も髪を切ってもらおうと思いまして…」


「そうなんですか、ありがとうございます!それでしたらこちらの席にお願いします!お持ち物と上着もお預かりしますね!」



 とても気さくで素敵な女性だ。彼女に荷物と上着を渡し、店内を見渡すと、とても信じられない光景だった。大きい鏡が何枚もあり、見たことない椅子もそうだし、壁も床も全て。まるで違う世界に来たのではないかと思った。座ってみた椅子の座り心地が良すぎるし、おかしい…。



「店長お願いします!」



 色々考えていたら、さっきの女性が男性を連れてくる。



「先週来店されたポニョンさんの紹介だそうです!」


「てことは、マリベルさんかな?」


「えっ、私の名前知ってるんですか!?」


「ポニョンさんがマリベルさんを絶対紹介すると、張り切ってたんですよ。あっと…すいません自分の紹介もせずに、僕は今日髪をカットさせて頂くキクチといいます。どうぞよろしくお願いします」


「…よろしくお願いします…そうですか、ポニョンがそんなに張り切っていたとは…」


「とても喜んで頂いたので、僕達もとても嬉しかったんですよ」



 確かにポニョンはとても喜んでた。髪も凄くキレイになってて、光ってるような気がした。とりあえず行ってこい、行けばわかると言っていた。そこで本来の目的を思い出す。そう、髪を切る事。現状、伸びきった私の髪は普段からバサバサと広がっているので、基本は紐で一つ結びにしている。だいたい伸びてきたら、自分で適当にハサミで切るのが普通だ。もしくは親や友人にしてもらうのが一般的。貴族でもなければ、あまり気にしないのが当たり前なので、言うことは決まっている。それにポニョンも、任せとけば良いと言っていたし。



「今日はどのような感じにしたいですか?」


「お任せします!」


「バッサリ切っても良いですか?」


「はい!」


「わかりました。あと普段どんな格好する事が多いですか?」


「家が雑貨屋で……



※※※



 色々と聞かれ一段落したと思ったら、また別の場所に移動させられた。しゃんぷーというものをするらしい。最初に話をしたナナセという女性がしてくれる様だ。布を首に巻いたり準備している。それがめちゃくちゃ高級品。ふかふかの良さそうな布に、つるつるの布といい見たことない素材。何なのこれは…。



「後ろに倒しますね」



 椅子が少し動き倒れた。首を支えられながら寝るような形になり、顔に薄い布の様なものを掛けられた。きっとこれも高級品だ。



「首の位置は大丈夫ですか?これからお湯を掛けていきますので、熱かったりしたら言ってくださいね!」



 返事も上手く出来ないまま、頭にお湯を掛けられ始めた。私はある事に気付く。めちゃくちゃ気持ちいい。このお湯の出る魔道具も、きっと良いものなんだろう。



「それではシャンプーしていきますね!」



 ゴシゴシ…シャカシャカ…



 なにこれっ…気持ち良すぎるっ!さっきのお湯も凄いと思ったし、今も何されているのかわからないけど、最高な事だけは良くわかった。そして気付いたら終わっていた。恥ずかしながら少し寝てしまった…。これは魔法じゃないの?



「それでは…さっきのお席でカットに入りますね」



 席に座り、また別の高級なツルッとした布を首に巻かれ頭の布を外す。そこでキクチさんと変わる。髪を櫛でとかし始めてまた色々と気付く。なんかツヤツヤと髪の毛が光ってるし、こんなに櫛道りがいいはずない。いつも櫛を通すと引っ掛かって、痛かったり毛が抜けたりする。私は思わず聞いてしまった。



「もしかしてキクチさんとナナセさんは…魔法使いですか?まさか貴族様とか?」


「ふふっ、ここにくる方、皆さんそう言うんですけど違いますよ」


「こんな状態の髪を見た事ないからもしかしてって…」


「ちゃんと手入れさえすれば、誰でもできる事しかしてないんですけどね」


「聞いたことない…」



 魔法使いでもないのに、こんなに見た事も聞いたも事ないことするのか…。



「皆さん知らないだけなんですよ。どうもこの町というか国は、オシャレをするという意識が弱いんですよね」


「おしゃれ…?」


「そうです。もっとキレイ、もっとカワイイ、もっとカッコいいとかそんな感じの意味です」



 わからないが、わかる気もする。自分と全く違う二人を見れば。



「良くわからないけどお二人を見ていると、私達とは比べ物にならないくらい『おしゃれ』な気がします」


「ありがとうございます。この街にもっとオシャレを、浸透させますよ!きっとすぐ皆さんはオシャレになります。きっかけだけです」



 そんな話をしながらいつの間にか髪を切られていた。とても丁寧だし、雰囲気も凄く良いので安心感がある。あの髪を切っているハサミや、髪を挟んでいる道具も見たことないし、絶対に高級品だと思う。まるで貴族様にでもなったみたい、ていうか貴族様もこんなことしてない気がする。きっとこれが『かっと』というものなんだろう。そして仕事の雑貨屋の事やこの街の話をしながら髪を切られていく。なんだろうこの居心地の良さは…。



「髪乾かしていきますね」



 肩位に切られた髪を謎の魔道具で乾かし始めた。しかも二人で。見たことも聞いたこともない魔道具だ。暖かい風が出ている時点で火と風の魔石は最低でも使われているはず。私の家の雑貨屋でも多少の魔道具は扱っているからこの魔道具の凄さがわかる…。どれ程精密な魔方陣を組み込んだんだろう?この小さなサイズでこれ程の効果を…。絶対に無理だと思う…。っていうかもう驚くのはよそう…。ここは別世界と思うことにしよう。



※※※



「すごい…。私の髪じゃないみたい…!」


「すごく素敵ですよマリベルさん!さすが店長!」


「どこか気になるところとかありませんか?」


「むしろどこを気にしたらいいんですか…」


「長さや手触り、マリベルさんが邪魔に感じたりする所とかあれば、手直ししますよ」


「いえ大丈夫です!ていうか想像以上です!」



 あっさり驚かされた。こんなに手触りが良かったことなんて無いし、見た感じもなんて言ったらわからないけど、きっとこれが『おしゃれ』だということはわかる。『ぼぶ』という髪型らしい。私だけの『ぼぶ』と思うとなんか嬉しい気持ちにもなる。



「最後にマッサージさせて頂きますね!」



 ナナセさんがそう言うと肩を揉んでくれた。…最高。この店やる事なす事、最高過ぎるよ。



※※※



「4000リルになります」



 マッサージも終わり、素晴らしい時間はもう終わり。お会計になってしまった。ポニョンの言っていた通りの値段だけど、安過ぎる気がする。こんなに凄く充実した時間を提供してもらって、この値段…ありがたい。



「マリベルさん、また来て下さいね!」


「こちらこそありがとうございました!」


「あとこれ使ってみて下さい。今日シャンプーで使ったシャンプー剤とトリートメント剤です。サンプルなので少量ですけど髪型の維持には必要不可欠ですから。もし気に入ったら買いに要らしてください。使い方は紙に書いて一緒に入ってますので」


「あ、ありがとうございます!」


「本日はありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」



※※※



 お店を出て改めて思う。いたせりつくせりとはこの事ではないかと。ポニョンが言っていた幸せになれるを、とことん実感したと思う。すでにお母さんに言いたいし、ポニョンにも報告したい。同じ商売人としてもすごく参考になる。そして何よりも『おしゃれ』をしたい自分がいる。キクチさんやナナセさんと会ってわかったことは、髪だけじゃなく服装や小物など、色々含めておしゃれになっていくんだと思う。最後に上着とカバンを受け取ったときに何故か恥ずかしかったし、自分の普段の服装を考えると、髪型に負けていると思う。これがおしゃれになるという事なんだろう。



「こんな物まで…」



 最後にもらったサンプルやカードを見て改めて思う。サンプルを入れている瓶だけでも相当良質だし、使い方を書いている紙の品質も異常に良い。何よりもそれを入れた袋が、全く何の素材かわからない。薄さと丈夫さが全く合ってない。メンバーズカードも謎の最高品質でわからない素材。ギルドカードより良さそうな事だけはわかるけど。そこには会員番号と自分の名前、そしてお店の名前。



「美容室『パラレル』か…。パラレルってどういう意味だろ?今度行ったら聞いてみようっと。とりあえずお母さん紹介しておしゃれ仲間増やそーっと」


「マリベル!」


「あっ!ポニョン」



 丁度宿屋の前を通ると、ポニョンが嬉しそうに出てきた。私を見て驚いている。



「どうだった?」


「最高!本当に幸せになったよ!」


「まっあんたの髪見りゃわかりきってるけどね!」


「でしょ!」



 しばらく、あのパラレルというお店について話をした。そしてもっとおしゃれになろうと、二人で決意をした。とりあえずお互いの母親は連れていく事が決定。これから街の雰囲気が変わっていく…そんな気がした一日だった。


 


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