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ENDよければ何とやら  作者: 星野夜
第1章『闇組織編・変故2』
42/42

41話目『White wash』

 みなさん、おはようございます! つまり私は今、朝の時間を生きております。朝というのは私の天敵です。寝たいのに無理やり起きなければならない。外では鳥どもが煩わしくさえずる。太陽の光が今日も私の体力を奪っていく。何から何まで朝とはつり合いません。ですから名前は夜――星野夜です!


 さて、今回は何と沼津市からの投稿です! 塾内でさぼって小説を投稿しています。私って本当に懲りませんね。そこが良いところですけどね、ドヤッ!


 さて、二回目の『さて』ですが……何と、今回41話目は『第1章『闇組織編・変故2』』の最終話です! つまり次回から新章に突入するということで、私、星野夜は今、最高にhighってやつです! 血管から鮮血をウォータージェットのごとく噴射できるのではと妄想できるほどの狂いようです!


 そんなこんなで独り、部屋の中で興奮暴走に興じていたんですが、そろそろ塾長が時間だと私を引き連れにきたので、ここらでおしゃべりはおしまいです。


 それでは、第1章『闇組織編・変故2』最終話『White wash』をどうぞ!

 背中に強烈な衝撃を受け、龍谷は仰け反る。制服を裂いて身体にミミズ腫れを作った。目の前には鞭を持つ女。ただ、この鞭打ちの攻撃は背後から飛んできた。仰け反る際に、龍谷は背後を見る。そこにはもう一人の女。同様に鞭を持つ。

「二対一か……良いぜ、おもしれぇ! どっちもぶっ潰して全治二ヶ月の重症を負わせてやるっ!」

 龍谷は立ち上がり、前方へと駆け出す。女は容赦なく鞭を振った。その鞭は龍谷の顔を捉え、叩き音と共に、龍谷の顔に切断痕を作った。龍谷は痛みに呻く。その隙に、背後の女が鞭を振るう。背中を捉えて、皮膚を切り裂く。血が飛び散って床に飛散した。

痛みに身を捩らせながら、龍谷は廊下の壁に背を向ける。女二人の鞭攻撃は止まず、壁に寄りかかる龍谷に向けて容赦のない攻撃の雨。一定間隔で鞭の攻撃を全身に受け、そこらじゅうに切断傷を作った。廊下には龍谷の血が飛散して模様を描いている。

「クソババァ! てめぇら覚えておけ、よ……」

 龍谷は一言叫び、そしてそのまま廊下に倒れて気を失った。顔をかばっていた右腕と左腕、そして無防備だった腹部に多数の切断痕ができていた。

「あのー、すいませんがー……そこのおふたりさん」

 と、男の声が鞭を持つ女二人へとかけられ、同時に振り向くと直後、一人の女が顔面に衝撃を受けて吹っ飛び、もう一人の女と衝突して倒れた。

「起きてます? あの、すいません?」

 男の声が倒れる龍谷へとかけられ、龍谷は目を覚まし、ガバッと勢い良く起き上がった。その目の前には気絶した女二人の姿。唖然とする中、背後の男が口を開いた。

「どうも、龍谷さん」

「お、お前はっ! 誰だっけ?」


 海美、直樹、琉水の三人は助手部部室で他の人間の帰りを待っていた。海美は椅子に座ってソワソワと落ち着きがなく、直樹は机の上に突っ伏し呑気に眠っていた。琉水は本を読んでゆったりしていた。

「何でそんなにくつろげるの、二人は?」

 少し怒り気味に、海美の素朴な質問。直樹は、

「俺らにできることは待つだけだからな。だったら、この時間を有意義に使うべきだと考えたぜ」

「いや、ただ寝てるだけじゃないですか!」

 そして琉水は、

「うーん……別にくつろいでるわけじゃないんだよねー」

 なんて言って、机の上に置かれた湯気立つカップを持ち、コーヒーを一口飲んだ。

「いや、めちゃくちゃくつろいでるじゃないですか!」

「じゃあ逆に聞くけどよぉー、そんなソワソワしてて意味あるか?」

「うっ……それは……」

 直樹のごもっともな答えにたじろぐ海美。追い打ちをかけるように琉水も言った。

「そーだそーだ、直樹の言うとおりだよー。私たちは普段通りやってれば良いんだって」

 そんなユルユルなセリフに、海美の思考観点が壊れた。


――二分後――


「ん? この紅茶、もしかしてアールグレイですか?」

「そーだねー、アール指定だねー」

「アール指定ですか? もしかして18禁でした?」

「いいえ、そうではありませんのよー、ミス海美」

 本を片手に、海美と琉水が紅茶をティーカップに入れて二人で仲良くお茶会をしていた。その机の上にはクッキーもしっかりと用意されている。放課後の夕陽が部室を照らし、少し幻想的な雰囲気にさせる光景だった。

「いや、確かに緩く行こうぜ的なことは言ったけど、そういう意味じゃねぇよ。まぁ、結局過ぎる時間に変わりないんだけどさ」

 机の上で突っ伏し、ダル目で二人のお茶会を眺める直樹が言った。そして、

「はぁーあ、なーんか暇になったなー。何か起きねぇかな? 例えば、突如天空から堕ちてきた天使の子に激突してハチャメチャ高校生活を送るとか……。いや、もう既にハチャメチャになっちまってるか。……じゃなくても、こう爆発的な何かとか――」

 その時だった、一瞬だけ彼ら三人の身体が浮き上がった! 校舎を揺るがす大轟音が響き、ガラスがガタガタと音を立てた。机の上の紅茶のティーカップが落ちて中に入ったアールグレイをハチャメチャに零した。クッキーも机の上に散らばって悲惨な状況に。木棚の辞書や漫画が雪崩のように落ちてきて琉水を襲った。

「イタタタタッ!」

「琉水さん?!」

「うおわぁっ! 地震かっ?!」

 三人はすぐさま机の下へと避難する。それぞれが四方にある机の足を一本ずつ支えて机を固定させる。地響きはしばらく続き、そして収まった頃には部室は震災直後のような状況になっていた。三人は緩いムードから一転して青い顔になって、机の下から這い出る。

「地震ですよね、今の?」

「うーんと……」

「いや、地震じゃないな、今のは」

 直樹はそう断言した。

「なんせ、地震に轟音なんてつくかよ? 今のは爆発音だぜ」

「っ! じゃあ、もしかしてボレアースの地下組織で何かが?!」

 そのタイミングで、直樹のスマホが音を立てて、海美が驚いて体を縮めた。直樹は電話を取る。

「はい、直樹ですけど?」

『今から……言うことを実行して、ほしい』

「メラか?」

「メラちゃん?!」

「何でお前、俺の電話番号を――」

『今は、それどころじゃない。一度だけだから良く聞いて』

 メラが淡々と説明を促し、直樹はスマホから顔を遠ざけ、スピーカーに設定して皆に聞こえるようにする。スマホからメラの声が届いた。

『校内放送で生徒を校舎外へと遠ざけること……できるだけ早くお願い』

「でもなぜだ?」

 直樹のその問いは全く触れられずに受け流される。

『放送後はみんな逃げて……』

「お前らはどうするつもりだよ?!」

 直樹の訴えかけにもメラは反応を示さない。

『制限時間は……十分――』

 通話はそこで途絶えた。直樹は無言でポケットにスマホをしまう。それと同時に、全校舎内の非常ベルがけたましく唸りを上げた! 天井のスプリンクラーからあまり綺麗ではない水が放水され始め、部室の中が水浸しになった。この部屋だけではなく、ほぼ全校舎内のスプリンクラーから放水を受けて水浸しになっている。生徒たちが水に濡れて大慌てで校庭へと走り抜ける音が響き始めた。教員も一緒になって走り逃げる姿が窓の外から確認できる。

「放送の必要はなさそうだな」

 直樹は、ふと窓から海美たちへと目線をずらす。海美たちの姿が消えていた。直樹が驚いて辺りを見回すと、

「ここだよ、直樹」

 海美の声が机下からして、覗き見るとそこに海美と琉水の姿。

「何してんだ?」

「汚水から逃げてる。髪の毛が汚れちゃうでしょ?」

「はぁ~あ、女って……」

 直樹は全身びしょ濡れで、ヤレヤレとため息を吐く。


 通話していたスマートフォンをポケットにしまい、円卓の上に土足で乗っているメラは辺りを見回す。円卓の周囲を頭をうなだれて机に突っ伏す十人の人間の姿があった。円卓の上には散らばった資料があって、メラはそれらを踏まないように円卓に立っている。

 メラの片手には鮮血の滴るエッジナイフが一本握られていた。数分前に十人の血液を吸ったナイフだ。

 部屋の奥にはホワイトボードがあって、訳の分からない文章がズラズラと並べられている。その中でメラがある文字に注視する。そこには黒のマーカーで『ゼピュロスとの――』と書き綴られていた。そしてメラは、倒れる十人が先ほどまでしていた会議で何についての議論をしていたのかをおおよそ把握する。そして無言で資料を掴むとそれを畳んでいくつかポーチにしまった。

 そんなメラの上には排気ダクトがあり、蓋が外れて揺れながら鉄の擦れる音が鳴っていた。

 メラは頭に取り付けているヘッドフォンの、音声出力ができるマイクを口元にセットして口を開く。

「龍谷……陽動起爆完了……。主核の制圧完了……」

 そう言うと、ヘッドフォンを通して雑音が流れ始め、その中で龍谷の声が流れてきた。

『分かった、良くやったメラ。すぐに逃げる準備を』

「龍谷は?」

『俺は……少しやることがありそうだ。逃げる最中に仲間を見つけたら問答無用で連れて帰れ。残り時間が乏しいからできるだけ急いでくれよ? 以上だ』

 無線はそこで途絶える。メラは円卓から飛び降りると、足取り軽くその部屋を出て行った。


 龍谷はトランシーバーの通話ボタンから指を外し、ベルト部に取り付けた工具で引っ掛けてぶら下げた。

「悪い、ちょっと用事があるから、今すぐここから地上へと、校舎外へと逃げてくれ」

 龍谷は目の前にいる眉目秀麗な王子様系の男子にそう言った。その男の背後には鞭を持った女が一人倒れているのが見える。彼は先ほど龍谷を救った助手部部員の男子。龍谷の後ろにももう一人、同じく鞭を持った女が倒れていた。

「用事、ですか……。止めはしませんが、先ほどの陽動爆発……もはやただ事ではありません。命をなくしてはおしまいですよ?」

「あぁ、分かってる。命の尊さは、ボディーガードナーだったから充分知ってる。それでも必要なことだ。それより時間がない、早く逃げろ。仲間を見つけたら――」

「問答無用で引き連れろ、と先ほど言ってましたね?」

「あぁ、そのとおりだ」

 龍谷はそこまで言ってから、廊下を走ってどこかへ。残された男子は龍谷に背を向け、逆方向の廊下を走っていく。


 天気は晴れにも関わらず、びしょ濡れの海美と直樹と琉水。スプリンクラーからの汚水は容赦なく三人の体を水浸しにした。不快そうな顔の海美と直樹、そしてなぜかニコニコ顔の琉水の三人はメラからの無線電話に従い、放送室へと向かっていた。校舎内にいる生徒、教員たちに、校庭へと逃げるように促すために。おそらくもうほとんどの人間は、水に濡れたくないとばかりに校舎内から脱出してしまっているが。その証拠に、廊下には誰の姿も見当たらない。

 教員に捕まることなく、三人は放送室の中へ。放送用のマイクを利用し、全校舎内に放送をかける。が、突如にして放送スイッチの光が消え、全ての電気機器がシャットダウンしてしまった。つまり、停電になった。

「電気が落ちたぞ! これじゃあ放送が……」

「でも、おそらく校舎内には誰も残ってないと思いますよ? そう信じて、ここから私たちも逃げないと」

 海美が一刻も早く汚水フィールドから抜けたい感を醸し出し始めた頃、放送室の扉が開かれて、ずぶ濡れのメラが一人やって来た。

「……放送は?」

「無理だ、停電しちまった。どうする?」

「……逃げる、残り五分」

 メラが淡々と無表情でそう呟く。それから背を向けて放送室を出ようとして、

「ちょっと待って、メラちゃん!」

 海美の声に足を止めた。

「炉利さんや氷見先生、それに助手部部長も……あと龍谷さんもまだ戻ってこないけど、もし間に合わなかったらどうなるの?」

 海美が不安そうに、でも少しの希望を持って尋ねる。メラは何も包み隠さずに一言、

「爆死する」

 とだけ言った。何の遠慮も容赦もない、冷たい言葉。海美も直樹も、さすがに琉水も表情を変えた。子供にして容易に非情な宣告をできるメラに、直樹は疑わしい目を向ける。一方の純粋な海美は、メラの前で座って両肩を掴んで、

「何でそれをもっと早くに教えてくれなかったの?!」

 と、まるで保護者のように叫んだ。メラは動揺も怯みもせず、この応答も淡々と答える。

「教えたら……救いにいくと、思ったから……」

 完全に的を射抜いた推論だった。

「信じることも救いだよ、海美ちゃ~ん」

 そんな能天気な声がして、海美は顔を上げる。放送室の入口に水に濡れた久留米炉利が立っていた。ただ、その姿は以前に会ったそれとは違い、全身傷だらけで悲惨な姿だった。その姿に相当な激戦になったことを想像させる。服もあちこちが破けていて、服下の皮膚が割かれて線状に血液を流している。

「炉利さんっ! 何で?!」

「何でも何もー、生きちゃったんだから仕方なくなーい?」

 炉利はそう言って照れ笑いを浮かべ、海美もそれにつられて涙を流して笑い始めた。スプリンクラーからの汚水のおかげで、海美が泣いているのは誰も気づかない。


 停電の影響は地下一階にも届いていた。外からの環境光のない地下では、停電一つで視覚はゼロとなる。真っ暗闇が人間たちを包み込んでいた。

「こいつぁー一体……?」

「仕掛けが派手に作動したらしいな。今頃、あの部屋で軍兵どもは麻痺っちまってるだろうよ」

「お前、悪魔か?」

「人間誰だって悪魔になれんだよ、覚えておけ」

 暗闇の中、男と女の声がそう会話をしていた。


「残り時間……一分」

 メラが校門前でそんな言葉を一人呟く。校門前にはメラを含め、五人の人間がいた。全員、びしょ濡れの格好で夕焼けの赤色に照らされている。校庭には校舎から遁走してきた生徒や教員たちが集まって人数確認をして、すぐに人数が足りないことに気づいて、ややこしいことになっていた。

 岩段に座り、海美は寒さに凍えているのか、体を揺らしていた。顔色は青ざめて冴えない。

「どうかした、海美ちゃん?」

 びしょ濡れ傷だらけの炉利が海美の横に座り、そう尋ねる。

「もし、みんな爆死しちゃったら……って思って怖いの」

「ふふっ♪ そんなことかー、くだらないなー。金魚の糞より頑固な物質の擬人化的な人間じゃん、みんな? そんな糞たちが爆死なんてしないよ。どーせ、また私たちにへばりつきに来るに決まってるじゃーん♪」

 酷い表現ではあるが、これでも海美を元気つけようとしている炉利。要約するとこういう意味になる。

『彼らはみんな、生存力の強い人たちでしょ? その生存力があって爆死することはないよ。きっと、無事に戻ってくるに決まってる』

 そう言いたいのである、このロリっ子は。

「いちいち、要約しなくて良いんだよ? ていうか、ロリっ子じゃないから!」

「……残り制限時間はあと……三十――」

「うおぉーっ! 俺は生きてるぞぉーっ!」

 メラのカウントダウンの声を夏陽の声が遮った。玄関から飛び出してきた夏陽が、校門までの長い長い下り坂を滑走してきた!

「おぉーぅ! リーダー! 野垂れ死ななかったんだねっ♪」

 琉水が物騒なことをスラリと口から放り投げた。


「何っ?! まだ帰ってきてねぇのか!」

 不安げな海美から状況を聞き、夏陽は目を見開いて驚愕した。今現在、校舎地下にいる仲間は、龍谷と氷見の二人。

「残り時間……十、九――」

 突如、メラの冷酷なるカウントダウンが始まり、海美が身を縮ませて両手を握り、願いを込め始めた。その脇で炉利が背中を叩いて落ち着かせる。先ほどから冷静を装っていた直樹も、さすがにこの状況に耐え切れず、足が震えていた。

「三、二、一、ぜ――」

 メラのカウントダウンが終わりを告げるその瞬間、校舎が爆発した。一瞬、地面が膨れ上がったかと思うと、次の瞬間には校舎全体に亀裂が走って崩壊し始め、それは一秒も経たないうちに瓦礫と化し、爆音を伴って地下数メートルが陥没するように崩れ落ちていった。

「ダッシャーァッ!」

 玄関が崩れる瞬間、龍谷が校舎から飛び出してきた! 変な奇声が爆発に紛れて聞こえ、皆が玄関部へと注目する。爆発の風圧で吹き飛んだ龍谷の姿がそこにあった。龍谷は風圧に巻き込まれながら長い長い校門までの急坂を転がり、そして夏陽の前で倒れるように止まる。

「へへっ……ただいま……」

 全身を砂塗れにして無邪気な笑顔を振りまく龍谷に、先ほどまで無情でカウントダウンをしていたメラが飛び込み、抱きついた。顔を龍谷の腹部に埋める。

「どどどど、どうした、メラ?」

 メラは何も答えなかったが、龍谷は腹部に温かいものを感じ取って悟った。それから鞭傷のついた腕でメラを優しく抱擁した。


 そんなメラが落ち着きを取り戻した頃、日は完全に落ちきって夜に移り、それに加えて辺りは砂煙で薄暗くなっていた。校庭の生徒・教員は大仰天でパニック状態に陥っている。まさか校舎一つが爆発して消え去るとはとても思わなかっただろう。

 騒がしい校庭とは相対して校門前の七人の人間は静かに屯っていた。

 海美や直樹は深刻な表情で佇み、龍谷も状況を察して苦い顔になっていた。救世部顧問である氷見が脱出に間に合わなかったのだ。当然、先ほどの大爆発に巻き込まれ、絶命したと考えられる。

「ちっ……あのヤロー、勝手に独断専行した上に、勝手に死にやがったな……。せっかく良い戦友になれそーだったっつーのに……」

 夏陽がなぜか氷見先生の死について悔やんでいた。その光景に炉利が違和感を覚えて尋ねる。

「夏陽、だったよね? ……氷見先生と面識とかあった?」

「はぁ? ……あぁ、そういえばそっちの先公もやられちまったのか……何て言葉をかければ良いか分からねぇよ」

 夏陽は頭を掻きむしり、大きくため息を吐いた。炉利はやはり違和感を感じ取る。

「……そっちも? っていうことは、夏陽も誰か巻き込まれた? 脱出できなかったのは氷見先生一人でしょ?」

「はぁ? とぼけてんのか? お前らもう一人死んじまっただろうが。すまんが、慰めの言葉をかけられるほど、俺は頭が良くできてな――」

「もう一人だって?!」

 炉利が珍しく大声を上げ、他の五名が一斉に目線を二人へと向けた。夏陽が驚いて後ずさる。

「いや、言っても良いなら言ってやるが……俺はさっきまでお前らと同じ制服を着た人間と共戦してた。あいつにはかなり助けられたんだが……ひょっとして……知らない人物なのか? 金髪のミドルで男っぽい奴だったぞ……。一番の特徴は何て言ったってオールを武器にしていたところか?」

「「「兎姫っ?!」」」

 海美、直樹、炉利の三人が同時に反応して同時に叫んだ。

「え?! えっ、いや、何で?! 兎姫さんが?!」

「あいつの用事ってまさか……」

 海美と直樹、そして炉利が察して無言になる。三人が考えていることは、『兎姫が秘密軍事組織『ボレアース』への潜入』というものだった。兎姫は今日、部活動を放棄して一人どこかへと出て行ってしまっていた。その兎姫がまさかのボレアースがあるこの学校へと潜入しているなんて誰も予想すらできない。

「と、兎姫さんが……死んじゃったら、救世部は……」

 海美が涙目で崩れ落ち、呆然と学校の跡地を見つめていた。

 今日この日、救世部部長と救世部顧問の二人が……救世部から、消えた。

「はい、そこSTOP IT」

 その声は夕闇に潜んで彼らの背後からした。清らかな美声に独特な英語混じりな言葉、そう彼女は――

「氷見ぜんぜぇぇぇぇ!」

 堪えていた涙が流れだし、海美は後ろに現れた氷見の胸に飛びつき、氷見は幼児をあやすように、海美の頭を撫でた。

「……心配かけましたね、海美も直樹も、そして炉利にも。さて、みんなで帰りましょう? 残りの後始末は――」

「兎姫ざんが死んじゃっだの゛ー~っ!」

 海美が泣き喚き、氷見はその言葉に疑念を抱く。

「JAST A MOMENT……一体どういうことでしょうか?」


 校舎跡の脇、そこに砂煙を浴びて汚れている、一人の人間が立っていた。せっかくの制服も土汚れで台無しである。男は小さくため息を吐くと、

「あの……自分も一応、生きているんですが?」

 そう呟いて、遠く離れた校門前にいる助手部の二人の姿を見下ろした。


 前述しましたが、塾長が私を急いております。幸い、後書きまでは書かせてくれるらしいので、急ぎ目+暴走気味に後書きしたいと思います。

 今回、41話目は『秘密軍事組織ボレアース』壊滅の話でした。派手にやらかしました――自分でもこれはないなと自負しちゃうほどに(ならなぜ書いたし?)。そもそも龍谷は何者なんでしょうね? 爆弾所持してる学生なんて近頃いますか?

(いや、昔でもそうそういないだろ)

 私の中では龍谷はこう、何かエージェントに近い気質を持った人間と見ております。どうでしょうか?

(いや、こっちに聞くな)


 うわ、ちょっともう時間ないじゃん! すいません、もうさようならです! それでは!

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