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ENDよければ何とやら  作者: 星野夜
第1章
4/42

3話目『休日は天国地獄で大地獄。』

 お久しぶり、星野夜です。

兎姫「だから、自己紹介はどうだって良いんだよ!前回言っただろ!」

 あ、そうでした。

 第3話はちょいと長くなってしまいまして…日を空けての投稿です。

 皆さん、突然ですが…休日、何しますか?

 私はですね…ずっと、小説ネタを考えて時間を削るという、何とも地味で且つもったいない過ごし方をしております。

兎姫「テメェ、俺らと同じだな。」

 いや、そっちは暇なだけでしょ?俺は、暇?いやいや、暇ではないか。

兎姫「いいから、とっとと話を始めろ、腐れテンパ!」

 …近頃、兎姫は口調さえどうにかなれば、普通に可愛い女子高生と思うんだけどな(小声)。

兎姫「聞こえてんぞっ!」

 ドゴッ!

 こうして、星野夜は力尽きた。

 休日がやって来た。学生にとっては最高の日。自由に羽を伸ばせる、そんな日だ。

 兎姫は珍しく早朝に起き、寝室のカーテンを引いた。カーテンに遮断されていた日の光が、一斉に暗かった部屋の中に降り注ぐ。兎姫は窓を開き、深呼吸した。

「んぐぐぐ…はぁ~…いやぁ、早起きも悪くねぇよな。早起きは何とかって言うし。清々しい朝だぜ。」

 窓から外の景色が見える。街中は早朝のため、行き交う人の数が少なく、そして五月蝿くない。小鳥のさえずりが心地よい一日。

 兎姫はパジャマから私服に着替える。上は茶色のTシャツ、下は藍色のジーンズ。

「…良し、今日も決まってんな。」

 兎姫は母の用意した朝食を取った。

 母は食事をしている兎姫に言った。

「兎姫、前から気になってたんだけど、あのオールは何に使うもの?」

 兎姫は寝ぼけ眼で食パンを加えながら、

「喧嘩。」

そう言った。

当然ながら、母は驚く。

「喧嘩?!兎姫は女の子でしょ?!喧嘩なんて物騒な事、しちゃいけません!」

「うっせぇな、朝からゴチャゴチャ。夏の日のみんみん蝉か。」

「良いから、オールは捨ててきなさい!人を傷つけて、そんなに面白いの?!」

 その瞬間、兎姫は空の皿を母の右頬ギリギリに投げつけた!皿は紙一重で当たらず、奥の壁に激突して派手に割れた。

 兎姫は俯きながら、

「母さん、俺がオールを持ってる理由は三つある。…一つ目は…大切なものを守るため。二つ目は…俺のうさ晴らしだ。」

 兎姫は顔を上げた。その表情は悪そうな笑顔だった。とてつもない恐怖を巻き起こすような、恐ろしい形相だ。

「二つ目は兎姫の都合じゃない!」

「バーロッ、人を守る正義になんなら、時にストレス解消もしなきゃならねぇんだよ。」

 兎姫は食事を終え、オールを持って外へ出ていった。

「いってきまスカンクー。」

「やっぱり、そのオールは捨てないの?」

母は心配そうに訊いた。

「俺がこれを持つ理由は三つあるっていただろ。まだ、三つ目を言ってない。けど、三つ目は言わねぇぜ!」

 兎姫は勢い良く、家を飛び出した。

「夕方には戻ってきてくるんだよ!」


 兎姫は中央通りを歩いていた。左右に店が点在し、人が多く行き交っている。だから、周りはうるさくてしょうがない。

「…あぁー、うっせぇなー。良い具合に繁盛しやがって。まるで、蟻の群体だな。店に集ってく蟻んこだな。」

 兎姫は面倒臭いと言う表情で街中の中央通りを歩いていた。ふと、ある事に気づく。

 俺の後ろ…多分、5・6メーター後ろに誰かが尾行してる。…誰だ?何目的で俺なんかを…?

 兎姫は足を少しだけ早め、中央通りから裏路地に曲がった。その直後、尾行者に気付かれない様に猛ダッシュで逃げた!いや、逃げたのではない。兎姫は尾行者の後ろを取ろうとしているのだ。

 尾行者も当然、兎姫の通った裏路地へ。

 兎姫は回り道で尾行者の後ろを取った。

「おい、オメェ、さっきから俺の事なんか付けて、何がしてぇんだ?」

 尾行者は驚き、こちらに振り返った。全身黒コート。顔はフードで隠れて良く分からない。見た感じから男だろう。

 尾行者は言う。

「バレちゃあ、しょうがないな。力尽くだ!」

 尾行者がこちらに突進してきた!兎姫は後退し、中央通りに戻った。その後、身を翻し、どこかへ走っていった!それを追って行く尾行者。着いた先はとある公園。子供一人として存在しない、廃公園だ。そこで兎姫は振り返る。

「おいっ、変態ストーカー!テメェが誰だか知んねぇけど、自己防衛としてぶっ飛ばす!」

 兎姫はオールを前に構えた!

 尾行者は走ってきた勢いを乗せ、兎姫に殴りかかった!のを、兎姫は紙一重で避けると、持っていたオールを擦れ違い様、尾行者の顔面に打ち付けた!鈍い音がして、尾行者はそのまま倒れた。兎姫は瞬時にオールを尾行者の眼前に構える。

「テメェは何者だ?!誰の回し者だ?!それともテメェがリーダーか?!白状しろ!じゃねぇと、地獄を見せるよ?」

兎姫は笑顔でそう言った。

 尾行者は笑う。

「あははははははっ!噂通りの面白い女だ!」

 尾行者は被っていたフードを外した。その顔は中性的な顔つきの男子だ。髪は特殊な白髪。

「やぁ、兎姫さん。俺はGだ。」

「G?コードネームか、くだらねぇ。テメェらは厨二病患者か?!痛々しいんだよ!何がGだ!テメェが爺(じい)って事か、白髪塗れ!」

 Gは落ち着いたまま、

「兎姫さんって、思ったより可愛いんですね。」

「な、何だと?」

 兎姫が一瞬、照れてしまった。その隙を付いて、Gは右足で兎姫の腹を蹴り飛ばし、立ち上がった。兎姫は勢いで吹き飛び、倒れた。

「悪いけど、兎姫さん。簡単にはやられないんで♪」

Gは笑顔でそう言った。

 兎姫は蹴られて痛む腹を押さえながら立ち上がる。

「けっ!女子に手を上げんなんざ、クソ男だな!」

「俺は君を女子とは見ないし、女とも見ない。君に対しては獄兎だと思っ―――」

 兎姫は目を光らせ、瞬時に突撃し、オールを振り払った!が、Gは冷静に下に避ける。その動きに反応した兎姫は、右足で蹴り上げようとしたが、Gは片手で止め、兎姫を跳ね飛ばした!兎姫は体勢を崩す。そこを狙い、Gは無防備の兎姫の顔面に向け、掌底を決め込んだ!兎姫はそのまま吹き飛び、地面に転がった。

「君の得意な顔面攻め。兎姫さん、そんなもんか?聞いた情報によれば、相当の強敵だと聞いたんだがねぇ。」

 兎姫は顔を押さえて立ち上がる。その表情は怒りに満ちていた。口から砂を吐き出し、兎姫は言う。

「テメェ、只者じゃねぇ。正直な話、俺には勝てねぇ。」

それを聞いたGは満足そうな表情になった。

「勘違いすんな。『俺』には勝てねぇと言ったんだよ。」

 兎姫はオールを投げ捨て、身一つになった。ポケットから一本のタバコを取り出し、吸い始めた。

「あぁ!タバコ吸ってるぅ!兎姫さん、それは法律破りだ!」

「勘違いすんなって言っただろ。これは電子タバコだ。そして、『俺』は今、捨てた。今日は『僕』だ!」

 兎姫は走り出した!それと同時にGも走り出す!兎姫はGの顔面に向け、右手を出した。が、Gは紙一重で避ける。その瞬間、兎姫の表情が悪い笑顔になった。

「バーカ。」

 兎姫は避けられた右拳をそのまま、Gの左頬にセットし、左足でGの右足を思い切り蹴った。のと同時に、右手でGの顔を押し出す。すると、Gの体が急に傾き、地面に叩きつけられた!Gは、切り替えが早すぎて反応できなかった。

「こんな防衛術もあるんだよ。オールの『俺』にはできない技。隠しておいたが、まさか喧嘩に使う事となるとはな。」

 立ち上がろうとするGの顔に向け、兎姫はジャンピングかかと落としで顔面を地面に叩きつけた!鈍い音が響き、Gは気絶した。鼻血が吹き出ている。これは鼻の骨が逝っただろう。

「Gって言ったな。…先に仕掛けてきたのはお前。悪く思うな、これは慈悲の一撃だ。おかげで、痛くはなかっただろう?」

凶悪な笑みを浮かべ、兎姫は言った。


 その後、兎姫は目的の海美の家に無事やって来た。

「よぉー、海美。ちと遅れちまった。」

 海美は不思議そうな表情で訊く。

「何で、そんなに服が砂で汚れてるの?もしかして…喧嘩?」

「その通り。」

「全く、相変わらずなんだから。」

「ははは…もう良いか?」

「え?何―――」

 兎姫は急に海美の体に倒れ込んだ!Gの腹への蹴りと、顔面への掌底が兎姫の体に大ダメージを与えていたのだ!

「とっととと兎姫さん?!」

 焦る海美。海美は兎姫を家の中へ運び込んだ。

「お母さん!兎姫さんが大変!」

 海美とその母は、兎姫を寝室のベッドに寝かせた。

「これは酷い怪我。一体、何をしたら女子がこんなに…。」

「喧嘩です。」

「喧嘩?!」

 当然ながら、海美の母は驚く。

「…海美、あんた、この子と一緒に喧嘩なんて―――」

「してないしてない!神に誓ってそんな事無いです!」

「…ちょっと待ってて。」

 母はどこからか、治療道具を持って来た。そして、兎姫の全身の擦り傷に薬を塗って、絆創膏やら包帯やらを取り付けた。

「これで良し。海美、その子の事、頼んだよ。」

「あいあいさー!」

 母は寝室から出ていった。

「…それにしても…あの兎姫さんがここまで…。一体、どんな相手に…。」

 その時、海美の携帯電話の着メロが流れた。海美は電話を確認した。直樹から。

『海美。さっき、中央通りで兎姫と男を見かけた。気になって尾行してて正解だった。…その、兎姫と男の喧嘩を見たんだ。男は相当強くて…でも、兎姫がギリギリで勝ったんだ。で、問題はその後。兎姫はどこかへ行ってしまったんだけど…男はまだ残ってて…で、男がどこかへ行ったから尾行してみた。すると、どこに付いたと思う?』

 海美は興味と恐怖が重なっていた。直樹にメールを返信した。

『もったいぶらずに早く言ってよ、直樹。』

 送信してから数分後、直樹からメールが届いた。 

『廃病院だ!絶対に何か組織があるに違いないだろ?面白そうだぜ!それでさ、一緒に来てくんないか?』

「…うーん、どーしよーかなー?」

 海美は迷いながらもメールを打ち込み、送信した。

『…まぁ、直樹が一人で怖いって言うならぁ~、行ってあげても良いけどー。』

 また数分後、直樹からメールが届く。 

『何だよ、それ!別に怖かねぇ!けど、物寂しいんだよ。な、来てくれよ。』

 海美は微笑した。

「直樹、そんな時もあるんだー。意外性抜群だー。」

 海美はメールを返す。

『じゃあ、良いよ。準備するから待ってて。』

 海美は準備を始めた。リュックサックに必要そうだと推測した道具等を入れ込み、即行終了。

 出掛けようと寝室を出る時、海美は眠っている兎姫に気付いた。海美が行ってしまっては、兎姫を任せる人がいなくなる。海美は兎姫の顔を確認した。

「…普段は乱暴で毒舌的で理不尽で…それで馬鹿なんだけど…やっぱり、女の子だね。寝顔は普段とは違って…本当に女の子みたい。」

 その時、急に兎姫が目を覚まし、ベッドから飛び起きた!それに反応が遅れた海美は、飛び起きた兎姫の額と額を思い切りぶつけた!鈍い音がした。

「いってぇ!うおいっ!海美!テメェ、何でそんなに眼前にいんだよ!…いったぁー…。」

 兎姫と海美は両方とも、頭の額を押さえ、痛がっていた。

「おい、海美。今、何時だ?」

兎姫は額を押さえながら訊いた。

「えっとー、午前11時ですけど…。」

「マジかー、せっかくの休日がゴミ置き場かよ。許せねぇな、G!俺が気の収まるまで、顔面攻めで顔を膨れさせてやらぁ!」

 兎姫は立て掛けてあるオールを手に持ち、寝室を出て行こうとした。

「ちょっと待って、兎姫さん!」

「何だ?」

「直樹からメールがあって…兎姫さんと喧嘩した相手を直樹が追尾してるそうです。一緒に来てくれって言われまして…兎姫さん、喧嘩相手の組織、気にならないですか?」

それを聞いた兎姫の表情が極悪人の顔つきになる。

「ほぉ~う、直樹の奴、なかなか使えんじゃん。後で殴ろ。」

「いや、何でだよ?!」

「愛情表現だ!文句あるか?」

「だから、文句しかない!」

「まぁ、良い!海美、直樹の居場所を教えろ。今すぐ、殴りに行くぜ!」

「趣旨が変わってるんですけど!」 

 海美は兎姫と一緒に、直樹の言っていた廃病院にやって来た。その廃病院は北棟と南棟の二つに分かれており、どちらとも三階建て。所々、窓ガラスが大破していて壁には植物が張り付いてる。中には誰もいそうな雰囲気はない。まさに、廃墟と言える様な廃病院だ。

「さぁ、着いた!とっとと直樹ぶん殴って帰るぜ、海美。」

「だから、趣旨が違いますって!」

「ほら、チャゲアスのヤーヤーヤーでも言ってんだろ?『今から一緒に、これから一緒に、殴りに行こうか♪』ってよ。」

「そうですけど…それとこれとは訳が違うでしょ。」

「んなもん、同じに決まってんだろ。俺だってチャゲアス魂がある!ヤーヤーヤーに則って、『勇気だ愛だと騒ぎ立てずにその気になればいい♪』で行かせてもらう!」

「あははは…やっぱり兎姫さんには勝てないな…。」

 そんな時、直樹が廃病院の裏口から叫んだ。

「二人とも、早くこっちに来いよ!バレんぞ!」

 兎姫と海美は直樹に駆け寄った。

「良かった、兎姫、無事だったんだな。」

「お前に心配される程、俺の体は柔じゃねぇよ。ところで、お前はどれだけ柔なんだ?試させろ。」

 兎姫はオールを構えた。

「え!ちょっと待てって!何で、敵対象が俺?!兎姫が喧嘩した相手じゃないのかよ?!」

「っせぇな!人間とは残酷な生き物なんだよ!」

「まぁまぁ、二人とも。こんな所じゃ、危ないから。それは後回しで。それより、敵アジトは?」

 海美が二人の間に入って鎮静させた。

「あー、そいつがあったな。誰が来ようと、ぶっ飛ばすっ!」

 兎姫は猪突猛進で廃病院の北棟入口へ向かった!

「あっ、兎姫さん!そんなに堂々と入ったら―――」

 しかし、既に兎姫は侵入してしまった。

「はぁ~…そうだよね。兎姫さんが止まってと言って止まる人じゃないしね。私達も後を追わないと。」

 海美と直樹の二人は兎姫の後を追った。


「おらぁっ!隠れてねぇで出てこいやぁ!テメェらのケツの穴に俺のオールをぶち込んでやるっ!」

 真っ暗な病院内、兎姫はオールを振り回し、病院内を余す所なく走り回った!その後ろ、相当後に海美と直樹が追ってきていた。

「いつみても凄いよな、内らの部長はよぉ。あの足の速さと喧嘩強さ。しかも、あの叫び声を上げながら走り回るって…どんだけ体力あんだよ。」

「兎姫さんは校内一、最凶最悪と言われてるしね。そんな兎姫さんを私は尊敬してます。」

海美は懐かしそうな顔つきで言った。

 兎姫が右に曲がり、階段を超特急で駆け上がる。

「オラァオラァ!ヒッキー共が!聞こえてんだろ!打たねぇから、そっと出てこいよ!許すからよぉ!」

 絶対に嘘であろう。

 兎姫は三階にやって来た。角を曲がって走ってゆく。が、その時、誰かが真っ暗闇から兎姫を奇襲し、兎姫は蹴られて吹っ飛んだ!その勢いで上がってきた階段を転がり落ちていった!兎姫の後を追い、階段を上って来た二人に激突した!地面に激突し、三人は倒れ込んだ。

「いっつ~…みんな、大丈夫?」

海美は何とか立ち上がり、辺りを見回した。兎姫と直樹が気を失い、目の前に倒れている!

「兎姫さん、直樹!」

 そんな海美の周りを黒いコートを着た集団が取り巻いた!リーダーらしき人物が前に出てきた。

「うるさい族がいると思ったら、Gが喧嘩した相手か。ねちっこいな、こいつ。」

 海美はそんな軍勢に怯えていたが、必死に二人を守っていた。

「あ、あなた達は一体―――」

「俺はD。お前ら邪魔者を排除しに来た。」

Dは不敵な笑みを浮かべている。年頃は高校生程度。暗くて顔はよく見えないものの、笑っている事はなぜか分かった。

 海美、絶体絶命。いつも助けてくれる兎姫は気を失っている。直樹も同様。逃げ道は敵の輪の中ではゼロに等しい。海美は落ち着き考える。

 この中から正しい選択肢を選びなさい。1番、奇跡的な逆転作戦を考えつく。2番、兎姫のオールで戦う。3番、もう無理だよぉ~。

 どうしよう、このままじゃあ私達はただでは済まないみたいで。

「な~んつって!こんなに怯えてる自分に笑えてきちゃうくらいだよ。」

海美はらしくない笑顔で独り言を言った。

「私、良い策を持っててね。早く逃げた方が良いと思うんだけど…この忠告を無視する?」

焦らすように海美は訊いた。

「はぁ?どうせ、ただのはったりだろう?」

「ふふ~ん、そう思ってれば良いよ。私達、負けないしね。」

 あははは!私達の勝ちだ!敵は逃げるつもりなし!この作戦、100%行ける!と、思ったんだけどなぁ~。やっぱり、無理あるか、ハッタリなんか。もう、オシマイかな。

 海美は心の中で諦めかけた、そんな時、急に群れの中の一人が倒れた!

「どうした?!何があった?!」

 焦る集団。それを呆然と見つめている海美。続け様にもう一人が倒れる。暗闇で何かが起きていた。

「誰だ!野郎共、奇襲だ!敵を捕獲しろ!」

 集団は別々の方向へ計画なしに散ってゆく。海美達の事なんか、まるで興味ないかのように離れてゆく。

 キラーン!これはチャーンス!この奇襲に便乗して、今のうちに逃っげろ~!

 海美は必死に二人を担いで、ゆっくりと廊下を過ぎていった。その後、遠くに位置する廃病院の病室に二人を寝転がせた。

「うわ…不気味…。」

 ガラスの破片が窓際に散らばり、辺りは灰色に染まっていた。壁は落書きが施され、いかにも廃墟感満載。窓から差し込む日の光が少しだけ恐怖を縮小してくれている。

「怖い時は歌を歌えばなんとかなるさー!歩こー♪歩こー♪わたっしはぁ元気ー♪歩くの大好きー♪どんどん行ーこーおー♪さかみ―――」

 海美は恐怖を紛らわすため、必死で歌を歌いました。その声は部屋を越え、廊下に響き渡っています。

「下りっ…みっ…ちー♪」

 その時です。閉めていた病室の扉が勢い良く開きました!そんなに大声出していれば当然の結果でしょう。海美は驚いて飛び上がりました。しかし、そこには誰もいません。

「あ、あれ?…誰もいない?…あはははは…あははははっ!だよね♪そうだよね!別にバレたわけじゃないし!バレてるんだったら一斉突撃とかされるし!そうだ、安心だよ!誰もいなかった。バレてないから安心安心。…え?誰もいない?じゃあ、あの扉は…?」

 海美は恐る恐る入口の扉に近付きます。一歩ずつ、着実に近付いてゆく。その度、心臓の鼓動が早鐘を打ってます。そして、扉の所まで来ました。

 3・2・1!

「で、外を見る。」

 海美は深呼吸を一回しました。

 3・2・1!

「ゼロッ!」

 海美は勢い良く廊下の外を見ましたが、誰もいません。

「なぁ~んだ!やっぱりいないんだー。ふぅ~、これで安心安心。」

と、振り返った瞬間、目の前に!

「キャアッ!…って兎姫さん!起きたんですか!」

 海美の眼前に兎姫の顔が。暗かったので、より恐ろしい。

「叫び声なんか上げてどーした?そんなに俺の顔がこえ~か?」

「い、いや、そうじゃなくて。暗いとまるで鬼ですね。」

「誰が鬼じゃ、ボケェ!…所で、敵はどこだ?そして、ここはどこだ?」

 海美は詳細を説明した。

「―――で、敵は約20~30人程度でした。」

「そうか、そいつぁキツイもんだな。1対20か。…ざけんな!ぶっ殺す!」

「急にキレたぁ!」

 兎姫はオールを素早く持ち、走り出そうとした。海美はそんな兎姫を止めようと、部屋の入り口を遮断した。

「海美、退けよ!俺は復讐しに来たんだよ!退かねぇと打つぞ!」

「どうぞ!私をぶっ飛ばしてからにしてく―――」

 瞬間、海美の頬をオールが叩き、弾き飛ばされて近くの廃ベッドに激突した。

「海美、わりぃな。俺は俺のやり方でやらせてもらう!」

そう言い残して、兎姫は病室を後にした。

 海美は口から垂れている血を拭き取り、立ち上がった。

「あたたた、相変わらずなんだから。」

「やっぱり、あの人のやり方はぶっ飛んでる!」

いつの間にか起きていた直樹は哀れなものを見る目でそう言った。

「昔からですし、しょうがないのでは?」

「いや、海美までぶっ飛ばすなんて!流石に精神異常だろ!」

 パチンッ!

 海美の手のひらが直樹の頬を打った!

「そんな事言わないで!あの人は、兎姫さんは、ああ見えても必ず計画を練ってる人なんです!Gとの喧嘩の時だって、勝ってたし!精神異常者なんかじゃありません!兎姫さんは善人です!どんなに解決法がぶっ飛んでいても、兎姫さんは紛れもない正義です!」

海美は涙目で訴えた。それを聞いて、見て、直樹は何も言えなくなった。


 兎姫は全力でダッシュして敵軍を捜索中。もちろん、オールは片手に持っていてだ。

「所で!俺に質問!お前は一体、何と戦う?!そんな質問への回答!俺は謎と戦う!『そんなの知ってる』と応答!それに対しての感想!それぐらい空気読めよ、JK!に対しての返答!黙れよ、BK!馬鹿はオメェだ!お前も同じだ!どちらが馬鹿かを!競うぜ、READY GO!」

何か不自然なラップ調な即興曲を歌いながら、オールを振り回し走り回る兎姫。どうやら、兎姫はこの状況を楽しんでいるようだ。それか、怒りが一定値に達してしまい、怒りを通り越して笑っているのかも。

「出て来い、テメェら!俺様、修羅場!俺の、準備はいつでも万端!掛かって来いや!弾くぜ、俺は!俺の、オールが刺さるぜINSIGHT!」

 どうやら、兎姫は少し頭がおかしくなってる様だ。普段は決して歌わない兎姫。そんな兎姫が大声で歌っている!明日は雨になりそうだ。

 そんな時、目の前に一人の男子が立ち塞いだ!白いコートを着ている。

「お前が最初!俺様最強!オメェのハラワタ切り開いて干しちゃうぞー!」

 凶悪な表情で兎姫は突撃し、今まで以上の速度でオールを振り払った!白コートの男子はオールを綺麗に避ける。瞬時に、兎姫は身を翻し、オールを叩き落とした!それを真剣白刃取りでキャッチされた!驚く兎姫。その隙を突かれ、オールを飛ばされた!兎姫は危険を感じて即座に後退した。

「テメェ、なかなかの新手だな。名を聞かせろ。」

 白コートの男子は言う。

「俺は響(ひびき)。お前は兎姫だな。」

「予想通りの敵様ですかー。お前に恨みはねぇけど無差別にぶっ殺す。」

 兎姫は響へ走り出した!響はその場から一歩たりとも動かない。

「地獄に堕ちて、良い夢見ろよ!」

 兎姫の右ストレートが響の顔に炸裂!しかし、響は顔で受け止め、笑っていた!続け様に左フックを響の右腹にヒットさせた!確実に入ったはずなのに、響はちっとも倒れない。

「テメェ、頑丈じゃねぇか!おもしれぇ!」

「じゃあ、今度はこっちの番だ!」

 響は右手でアッパーを繰り出した!その速度が予想を大幅に越え、反応速度が間に合わない!兎姫は響の右アッパーをギリギリ片腕で止めたが、勢い余って吹き飛んだ!

「おっ、良い反射神経だ。俺のアッパーを受け止めるなんてな。」

 兎姫は立ち上がる。今のガードで右腕がいった。右腕に激痛が走る。少し動かすだけで痛い。

「はは!やんじゃねぇか!そろそろ、本気出さねぇとな!」

 兎姫はポケットからタバコを一本出し、口に咥えて吸った。

「ふぅ~…良―し、行くぜ!」

 兎姫はタバコを咥えたまま、走り出す。

「兎姫の実力は十分に理解した。そろそろ、止めにしようか。」

 響は攻撃態勢に入った。

 兎姫は攻撃すると見せかけ、走りながら、近くに落ちていたオールの柄の先端を蹴り上げた!オールは勢い良く響の顔面に飛んでゆき、直撃した!流石にこれには同様を隠せない響。意外な攻撃に反応できなかった様だ。

「まだだぁ!終わってねぇ!」

 顔面に当たり、痛がっている響に容赦無く、兎姫は延髄蹴りを顔面に決めた!兎姫得意の顔面攻めだ!響はもろに食らい、吹き飛び倒れた。

「俺の勝ち!お前もなかなか強かった。けど、今の俺はSPECIALでHIGHだからな。BAD TIMINGなFATEを恨みな。」

 響は立ち上がろうとしたが、力が出ずに立てなかった。そんな響に兎姫は手を差し伸べた。

「ほら、響。掴まれ。」

 響は兎姫を睨みつける。しかし、表情は混沌だった。

「兎姫、俺は敵だ。なぜ、手助けする?」

「…さぁな。多分、俺がお前を認めたからか?…じゃないとしても…いい子になったとして…動けない相手にトドメを刺すのは残酷かとな…何か照れんな。」

 兎姫は照れながら、響の手を取り、立たせた。

 響は恥ずかしそうに顔を逸らせ、

「おう、何かありが―――」

「死に晒せ!」

 兎姫は響が顔を逸らせた瞬間、響の顔面を掴み、地面に叩きつけた!

 兎姫はうつ伏せで倒れる響を見つめ、

「永遠に眠ってな、恥男。」

 微かに響の首が動き、嗄れた声で言った。

「…この…嘘付きが…。」

「知らねぇよ、そんなもん。いい子になったとしての話だ。動けない相手にトドメを刺すのが最高なんだろうが!人間はなぁ、性別関係なしに残酷なんだよ。」

 響は気を失う。

「強かったが、心理戦に弱い奴だったな。あれを食らっといて、まだやる気が残ってんなら、仲間にしてやっても良い男だった。」

 兎姫は唾を地面に吐き出し、オールを拾って捜索を続けた。


 2階廊下、兎姫が3階への階段を見つけた。そこには先程までいた軍勢が全員、倒れ尽きていた!その数、約20名!

「これは誰が?もしかして俺らの仲間か?」

 兎姫は遠慮無く、倒れる人の上を歩いて行った。

「ガタガタしてて歩き辛い地面だ。もっと平坦にはならねぇのか?」

 その人の道を歩き、階段に差し掛かった。兎姫は階段を上り、3階にやって来た。今度は慎重に進む。角から誰かが奇襲を仕掛けてこないか、確認しながら。今回は誰も出て来なかった。

「何だ?さっきの下にいた屍共で全員か?つまんねぇな。俺の分も少し取っとけよ、強欲なアサシンめ。」

 兎姫は3階を探し回った。が、一向に誰も出てくる気配なし。仕方ないと、兎姫は屋上へ。扉を開け、外に出た。外は風通りが良く、汗をかいた体にちょうど良い。日は南中を少し過ぎていた。

「屋上…誰も…いないか。」

 兎姫は屋上を捜索し、ある事に気付く。

「あぁ!この廃病院、南棟があるんだ!」

 つまり、北棟はもういなくて、南棟に敵はまだまだいる訳だ。

「くくくく、最高だ!本当に最高だよ!まだまだ倒しがいのありそうな奴もいるよな?そうと決まれば、グズグズしてられねぇ!」

 兎姫は屋上からジャンプした!ここは3階。下手すれば死ぬ!が、飛び降りた直下にあったのは屋根。2階の屋根だ。つまり、1階分の高さしかない。そこに着地した。その屋根は北棟と南棟を繋いでいる。

「こっからの方が早い!」

 兎姫は猛ダッシュで南棟2階へ。割れた窓から侵入した。

「うおい!道場破りじゃあ~!」

兎姫の声が反響した。

 兎姫は堂々と2階を歩き始めた。北棟とまったく同じ空間をひたすら捜索。しかし、誰も出てこなかった。

「いねぇな。もしかしたら、こっちは不発か?」

 そして3階。またしても見たことのある光景。同じ空間ばっか見ていてゲシュタルト崩壊が起きるのではないかと言うぐらいの始末である。

「ビビってんじゃねぇよっ!」

そう叫んでも、一向に敵は出てこない。ただ無残に声が反響するだけ。

 兎姫は屋上も捜索した。が、当然の様にいない。

「やっぱり不発か。戻るのめんどくせぇ…。」

 愚痴を呟きながら、兎姫は北棟へ戻ってゆく。


 北棟に戻ってきた兎姫。当然ながら、真っ暗な室内。兎姫は疲れ切った顔で海美と直樹のいる病室に戻ってきた。

「よぉ、誰もいなかったぜ。」

兎姫は恥ずかしそうに病室に入った。

「おかえり、兎姫さん。無事で何よりです。」

 兎姫は顔を逸らし、

「海美、さっきはごめん。…お前、俺の事を心配してくれてたのによぉ、俺が引っ叩いちまって…本当にごめん!」

 兎姫は頭を深く下げていた。らしくない兎姫を見て驚く海美。

「ちょっちょっと!兎姫さん?!何してるんですか?!別に私は気にしてないし、むしろ兎姫さんを尊敬してるんですから!そんならしくない兎姫さんなんか、見たくは無いんです!私は兎姫さんの荒さとか、猪突猛進な所に魅了されたんですよ。いつもみたいに、『うるせぇ』って言ってくださいよ。」

必死に訴えた海美。兎姫は頭を上げる。

「そっか…じゃあ、帰ろうぜ、直樹を残して。」

「そうですね!」

「おいっ、何で海美まで賛成してんだ!」

「え?おかしいですか?」

「そーだ、そーだ!直樹、後処理頼んだからな!しっかり片付けろよ。後、殴っていいか?」

「なぜ、そうなる?!駄目に決まってるでしょうが!既に一発、頬に食らって…、」

突然、直樹は海美の事について思いだし、口が止まった。

 そうだ、海美に頬を叩かれたんだ。痛かった…けど、海美の思いは通じたし、良いんだけど。

 海美はその時、こう訴えた。

『そんな事言わないで!あの人は、兎姫さんは、ああ見えても必ず計画を練ってる人なんです!Gとの喧嘩の時だって、勝ってたし!精神異常者なんかじゃありません!兎姫さんは善人です!どんなに解決法がぶっ飛んでいても、兎姫さんは紛れもない正義です!』

「直樹?どうしたの?」

海美が直樹に話しかけるが、直樹は考え事でフリーズしていた。

「ほっとけ、先に帰んぞ。」

 兎姫と海美は病室を出ようとしていた、直樹を残して。

 海美の奴、実際に喧嘩を見てないのに、なぜ相手の名前がGだって知ってる?!メールでは名前は書いてない!

 その瞬間、ある事に繋がった。

「兎姫!海美は敵だ!」

直樹がそう叫んだのと同時に、海美は兎姫の持っているオールを弾いて、ナイフを突きつけた!

「兎姫!動くな!」

 兎姫は少しだけ驚き、そして言った。

「ふっ…お前が黒幕か、海美?」

 海美は普段とは全く違った表情、口調で言う。

「ああ、そうだよ。今までは全て演技だ。まさか、お前がここまでやるとは思ってなくてなー。でも、階段から落ちてきた時はマジ笑えたわ。Gの奴は手負いだったものの、腹に蹴りを入れ、顔面に掌底。十分な働きをしてくれた。おかげで、兎姫の体力は激減していた。今だって、疲労困憊で倒れそうなんだろ?」

「あー、そのようだ。それにしても、意外性抜群だな。海美が黒幕とはなぁ。あの時の恩を仇で返すのか?」

 海美は兎姫の足を蹴り、兎姫を地面に倒した。ナイフは依然として突きつけられたままで。

「恩ですって?あのアメは最高に痛かったよ。まさか、助けた相手に右ストレートを打ってくるとは…馬鹿にも程があるね。」

「おい、兎姫!オメェ、そんな事したのかよ!そりゃあ、無いだろう。」

直樹は頷いていた。

「テメェ、直樹!どっちの味方なんだよ?!」

「う~ん…微妙だな~。その話では、悪いのはどう考えたって兎姫。だけど、今回の敵は海美。どっちにつけばいいのやら…。」

 海美は直樹に言う。

「じゃあ、直樹。私につけば、見逃してあげる。」

 直樹の目が光った。

「おいおい、そりゃあ、本当かよ?!…これはもう兎姫に付くしかないかもな。」

「こんのっ!底辺に住み着く裏切り者が!」

「知りませーん、人類は残酷な生き物なんだろ?」

「クソ!お前、後でぶっ殺す!」

 海美は笑う。

「あははははっ!本当に面白い人達だ。直樹、気に入った!見逃してやる。」

 兎姫も急に笑い出した。

「ははははははっ!バッカみてぇだな!」

「どーした、兎姫?私がそんなに馬鹿に見える?」

 兎姫は背後の海美を見つめ、

「ああ、馬鹿にしか見えねぇ。だってよ、お前、性に合わ―――」

 話最中に、海美の蹴りが背中に当たり、兎姫は怯んだ。

 兎姫はそれでも、また話し始める。

「一つだけ言ってやる。海美、お前はもっと周りを見ろ。お前に関わってる奴ら皆だ。昔はそんなんじゃなかっただろ?戻ってこいよ、海美。俺はいつでも待ってるからよ。でも、その前に、少しだけ罰を与えないとな。」

兎姫は凶悪な顔つきでそう言った。

「罰?」

 その瞬間、海美の後頭部に蹴りが命中した!兎姫の蹴りではない、別の人物が背後から奇襲を仕掛けた!海美は勢いで吹っ飛び、地面に転がった。その際、ナイフは手放してしまった。

「だから言っただろ。『もっと周りを見ろ』って。」

 海美を蹴り飛ばした人物、それは先程、兎姫が喧嘩で倒した相手。白いコートを着ている。その人物は響!

 響は近くに転がっていたナイフを蹴り、遠くに飛ばした。

「ナイスタイミング、響!どんな風の吹き回しか知らねぇけど、恩に着るぜ。」

 兎姫は体についた埃を払って立ち上がる。

「兎姫!…お前、仲間を!」

「いいや、ちげぇな。こいつぁ、俺がぶっ飛ばした…お前の仲間だ。」

 響は言う。

「いや、仲間ではない。俺はただの第三者。まぁ、公的に言えば、仲間だったかもな。ちょいと、兎姫と喧嘩して思った。俺はこいつと次世界を見てみたいんだよな。」

「つまり裏切る訳。海美、もう一度、俺とやり直す気があるなら、次の学校の放課後、俺らの部室へ、何事も無かったかのように来い。以上だ。直樹、帰るぞ。お前には罰が必要なようだ。」

「ままままっ待って!俺は兎姫の策をアシストしただけですよ!」

 兎姫と直樹は病室を出て、帰って行った。室内には倒れている海美と立ち尽くす響のみ。

 響は倒れている海美に近づき言った。

「海美って言う名か。…海美、お前…あいつの事、どう思う?…俺はな、お前と同意見で馬鹿だと思ってる。が、同時に天才だとも思ってる。」

「何が言いたい訳?」

「…だから、兎姫はああなんだろうよ。あいつは元からあんなじゃなかっただろ?」

 黙り込む海美。

「何か理由があるのだろう。けど、あいつの眼光、全然薄れてねぇな。」

そう言って、響は病室を出た。部屋には海美一人だけ。窓ガラスの割れた窓から、静かに心地よい微風がそよぐ。静寂が包み込む廃病院の病室で一人、海美は項垂れる。


「って言うか、俺の休日返せよ!」

廃病院を出た頃、兎姫はそう叫んだ。

「まぁ、仕方ないな。これはこれだろ。」

 珍しく黙り込む兎姫。既に午後3時を過ぎていた。


 月曜日の放課後、いつものようにソファーに寝転がり、漫画を読んでいる兎姫。しかし、一人だけ部室に足りない生徒が。それのせいか、救世部の部室内は物寂しかった。

「兎姫…海美、来ないなー。」

机に突っ伏したまま、直樹は言った。

「あー、そーだなー。だりぃ~。」

兎姫は気怠そうに適当に答えた。

 その時、部室の扉が開いた!二人はとっさに反応して目線を入口に向けた。そこに立っていたのは響だった。

「何だよ、テメェか、響!タイミング考えろよ、殴るぞ!」

「…何かしたか?」

 直樹は訊く。

「お前、急に何しに来たんだよ?」

 響は入室し、そして答えた。

「率直に言う。入部させてくれ。」

その言葉に、二人同時に驚いた。

「はぁ?!だから、どういう風の吹き回しだ、ボケェ!」

「まぁ、そう怒るな、兎姫。」

「気安く名前で呼ぶな!お前、敵だろうが!」

「俺はお前さんに魅了されてな。心機一転、心を入れ替え、新たな道を切り開くことを決意した。そのために、この部に入部しに来たんだ。どうだ、良いか?」

「いいよ。」

即答だった。

「良いのかよ!だって、こいつは敵だぞ!」

猛反発する直樹。

「敵じゃねぇ、仲間だろ?心機一転、心を入れ替えたって言っただろ?」

「まぁ、そうだけど…。」

「なら、文句は無しだ!」

「あー…それともう一つ、話したいことがある。」

 響は二人に言った。

「実はな、もう一人、入部希望の生徒がいる。ちょっと呼んで来るから待ってろ。」

そう言って、響は部屋を出て行った。

「誰だろう?」

「どーせ、ただの生徒だろ?」

 響が連れてきた生徒とは、

「やぁ!兎姫さん、それに直樹!」

「「海美!」」

 響が連れてきた生徒は海美だった!流石にこれには動揺を隠しきれない二人。

 海美は兎姫に近づく。

「兎姫さん、私を…もう一度、入部させてくれないでしょうか?」

 兎姫は大爆笑。

「馬鹿じゃねぇのか?思った通り、お前は本当に馬鹿だ!何言ってやがる。お前はまだ、ここの部員だろうが。再入部なんて必要ねぇ。そうだろ?」

海美はそれを聞き、涙目になった。

「たーだーし!」

 その直後、兎姫は海美の顔面に右ストレートを決めた!海美は吹っ飛び倒れる。

「「えぇぇぇぇぇっ!」」

同時に驚く直樹と響。

 兎姫は言う。

「ただし、『何事も無かったかのように来い』と言ったよな?この拳は、その約束を破った罰だ!」

 海美は涙目で立ち上がる。

「まったくもぉ~、痛いですよ、兎姫さん!」

「良いだろうが。まぁ、終わりよければ…何とかって言うしな。そうだろ?」

「終わりよければ全て良しです、兎姫さん。」

こうして、新たにもう一人、新入部員が増え、兎姫と海美の絆はより深くなりましたとさ。


 ばっ馬鹿な!この私より強いだとぉ!

兎姫「その通りだ、クソカス!」

 黙れ黙れ黙れ黙れぇい!俺の真の力、見せつけてやる!


 兎姫が現れた!

 レベル999 HP9999

 星野夜は直樹を特殊召喚。

 直樹の攻撃、『らぴゅ〇の雷!』

 しかし、兎姫には効果がないようだ!

 兎姫の攻撃、『かめ〇め波!』

 直樹は瀕死した!ついでに、星野夜は被爆した!視界が真っ暗になった。

兎姫「おいっ!このパクリネタは何だ?ポ〇モンか?!いくら、ネタが無くなったからって、パクリは許さねぇぞ!」

 ポ〇モンじゃないですー、〇拳ですー。

海美「だから、それも同じですって!」

兎姫「やっぱり、まだ罰が足りてねぇようだな!」

 ドゴッ!バコッ!グシャッ!

 こうして星野夜は力尽きた。報酬金が999z減りました。

 ↑(これ、〇ンスター〇ンター)


2話目『山小屋』


 山奥にやって来たフィリ。すると、一件の山小屋を見つけました。フィリは中へ。

 山小屋の中は、まるで倉庫の様に道具などが荒れに荒れまくっています。

 その時でした。背後から物音がして、フィリは振り向きます。すると、目の前にバットを構えて立っている男性が!フィリは咄嗟には反応できず、バットで殴られ気絶しました。

 それからしばらくして、フィリは意識を取り戻しました。すると、そこは…。

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