37話目『CAPTURE。』
挨拶はショートカットで。誰かもうお分かりでしょう?
こうして書き終えた37話目を投稿しましたが、何というか、あれですね。気合とかやる気さえ無理やり引き出せば、どんな物事も楽に感じてくるもんなんですねー。というのも、最近はこうバイトやら学校やらで疲れ切ってやる気でないんですよ。だから、無理やりやる気を出して執筆に取り組むも、睡魔には勝てそうにない。執筆作業を捗らせるために、よくパソコンの横にはカフェオレが置かれてるんだけど、やっぱり金がかかるじゃないですか、買うのに。一日一本なんて飲んでたら飽きてしまうし。
だから、やはり無理に引き出してやるのが一番、努力は必ず報われるってわけです!
今日はそれが言いたかっただけですよ、はい。
それではどうぞ!
金曜日の放課後、今日は天気が良い。一日中、雲一つない晴天が続いていて、太陽光が容赦なく地上を照りつけていた。風は一切吹いていないため、気温はやや高め。グラウンドを走る運動部員はやれやれと言った表情で周回している。
それとは相対する救世部。完全に文化部の救世部は基本、動くことをしない。依頼者が現れるまではずっと密閉空間の部室でダラダラと過ごすだけ。これで良く、廃部にならないなと多くの生徒は思っている。しかし、確実に部活動は成立しているし、救世部によって救われた人間がいるのも事実。それゆえに、なかなか廃部にならないのが救世部。どの部活動よりもしつこく粘り気の強い部活道だ。
今日も救世部は暇を持て余している。校則違反の金髪女子がソファーに寝そべって漫画を呼んでいる。顔には左頬に斜めの傷ができていて、それがよく目立つ。腰には物騒なガスガンを収納しているホルスターを吊っていた。彼女は兎姫といい、救世部部長にして生徒会長。この絵面、誰がどう見ても生徒会長にも部長にも見えないのが残念。そんな兎姫の横辺りに椅子を置いて静かに座って読書する女子が一人。ふわりとした印象を放つユルユルな彼女は海美。普段から兎姫の付き添い人をしている(兎姫本人は認めていない。彼女が勝手にしていること)。そして海美は兎姫が誰よりも大好き。『レズではありません、友情です。』と、海美はそう言う。救世部入口の横に置かれた広い机に突っ伏す気だるそうな男子、彼は直樹だ。見てのとおり、暇人である。それ以外に特徴はなにもない、ごく平凡な男子生徒。彼はPCオタクだ(自称)。これが救世部の普段の姿。たまに、白衣を着た艶やかな黒髪を持つ妙齢の女教員がいることがある。この女教員は氷見と言う。救世部顧問として働いているのだが、白衣を着ているのには訳がある。実は、氷見は科学研究部も兼任している。だから、白衣を着ているのだ。氷見は兎姫という人物に教員以上のアシストをしているが、どうやら彼女は兎姫という人物に惚れ込んでいるのだろう。その他に、前までは二人ほど部員がいたのだが、彼らは諸事情により、部活をやめてしまった。今は何をしているかは不明。
時間はやや戻り、まだ部室に誰もいない頃。一番最初に部室に足を踏み入れるのはやはり、兎姫と海美のペアだ。扉を開き、気だるそうに入室する兎姫と、その背後に亡霊のように付き添っている海美が蛍光灯のスイッチを押す。この部室、窓ガラスが未だにダンボールで覆われて、太陽光が部屋に差すことはない。蛍光灯の冷たい光だけが頼りだった。兎姫はソファーに寝転がり、ダラダラとしている。余談だが、最近、兎姫はやけに疲れている。深夜の活動による睡眠時間酷使が体に来てるのだろうが、それ以外の要因もあった。実は、兎姫は前々からバイトをしている。その経緯は不明だが、バイトをして金を貯めていた。つまり、金に困っているということだ。話を戻す。海美は蛍光灯のスイッチを入れた後、いつもどおり、兎姫の横の椅子に座る。海美は気だるそうに寝転がって何もしていない兎姫に尋ねる。
「兎姫さん?最近、疲れてません?」
目を閉じていた兎姫の目が開き、海美を見つめた。
「あぁ、まぁ、深夜活動は疲れるもんだろ?」
「休んだらどうです、部活道?」
「俺が休んだら、救世部は成立しねぇだろうが。」
「反論できないです、はい。」
そんな会話を交わしていると、いつもどおり遅れて直樹がやってきた。背負っている学校指定バッグを机に置き、そしていつもの地点、入口横の広机に座って突っ伏した。
「直樹も疲れてますね、大丈夫ですか?」
「あぁ。」
直樹は顔を伏せたまま呟いた。
「あいつが疲れてんのはいつものことだろ。」
兎姫がそう言う。直樹は反論するつもりなのか顔を上げた。
「言っておくが、俺が疲れてんのには訳があるんだぞ?表作業の兎姫には分からない、裏稼業っつーもんがあるんだよ。」
「分かりたくもねぇよ、ジメジメした裏稼業なんて論外だ、論外。ナメクジじゃねぇーんだぞ。」
「お前!全世界の内職者に謝れ!」
直樹が机から身を乗り出し、兎姫に指差して叫んだ。
「あ゛ぁ?やんのかよ?全世界の内職者が何だ?この表作業員の俺に勝てると思ってんのか、内気人間?!内職なんてしてるやつは大抵弱い弱い貧弱野郎なんだよ!」
兎姫もソファーから身を上げ、兎姫にガン飛ばす。そんな光景を見て、海美はやれやれと苦笑い。この手のやり取りはもう嫌になるほど見てきた。
「お前ほど喧嘩は強くはねぇだろうな、内職者はよ!だが、お前よりは忍耐というものがあんだよ!お前なんかじゃ理解できねぇほどの苦痛を味わってきてるんだよ!」
「じゃあ、そいつらは銃弾の痛みとやらを知ってるのか、ん?俺ほど命をかけて働く学生なんているか?昔だったら学徒隊とかあったが、ゆとり世代の今、そんな部隊はこの世にない!ゆとり人間が命の危機についてを考えたことはねぇんだよ!」
「そんなことはない!俺達ゆとり人間だってなぁ―――」
そんなくだらない争いごとをしていると、一人の人間が救世部にやってきた。背の小さい、全身を迷彩色の服で着飾っている女子。腰にホルスターを吊っている生徒だ。
「あははは!やっぱり救世部っておもしろいですね!」
そこに立っているのは久留米炉利だ。兎姫が新しく部員にした一人。元々、敵だった。海美は久留米炉利を見るなり、一瞬、恐怖で顔を歪ませたが、仲間になったということを考えてすぐに笑顔に戻った。
「おぉ、ロリータ。来るのがおせぇぞ。」
「だからロリータじゃない!」
「AWFULLY NOISY(やけに騒々しいですよ)?元気が良いですね。」
いつの間にか氷見先生が久留米炉利の背後に立っていた。久留米炉利は全く気づくことができず、驚いて飛び上がった。久留米炉利は常に全周囲に気を張っている。背後に誰が来ても気づけるように。しかし、氷見の気配だけは気が付けず、それゆえに驚いたのだ。
「あらあら?どうしたのかしら、久留米さん?」
「あなたは氷見先生ですね!私、久留米炉利二等兵は、新しく救世部の人員として働くととなりました!今後共、よろしくおねがいします!」
久留米炉利は規律の良い礼をしてそう言った。さすがは軍事オタク。礼がしっかりとしている。
「随分と礼儀正しいことで。大歓迎よ。」
氷見は久留米炉利を広机の直樹が座っている隣席に座らせた。
「よろしくね、直樹。」
笑顔で手を差し伸べる久留米炉利。
「おぉ、おー。」
直樹はやや動揺しながらも、久留米炉利と握手を交わす。
氷見は壁に立てかけられている鉄パイプの椅子を持つと、海美の横に鉄パイプ椅子を設置し、座った。
「さて、直樹。今日、私がここに来た理由、分かりますよね?」
急に直樹に問いを出した氷見。直樹は突っ伏していた顔を上げ、不思議そうな顔で氷見を見た。それから数秒間、空白の間が空いた後、直樹は思い出したように目を見開いた。
「あれっすね?もしかして?」
「そうよ、あれよ。」
「何のことだ?直樹、お前、氷見ちゃんと何か約束でもしたのか?」
「SILENT、直樹。兎姫には後々説明しますから。」
そう言うと、直樹と氷見はそのまま部室から出て行ってしまった。キョトンとしている兎姫と海美。そして何も事情を知らないため、笑顔のままの久留米炉利だけが部室に残った。
直樹と氷見は広報部へと向かっていた。広報部とは校内の情報を収集、その情報を元に張り紙などを作って広報する部活道。基本は学校新聞などを作成しているが、たまに生徒のスクープを作成して匿名で貼ることがある。これがまた、なかなかの凶悪性がある。しかし、広報部は学校にとっても重要な役割を果たしているため、廃部になることはないだろう。
直樹と氷見は以前にも広報部に訪れていた。それは、広報部の部屋の片付けの依頼をされた時だ。広報部の部屋は入ってそうそう、資料と書類の大海と化しているのが見て取れた。地面を覆い尽くすほどの膨大な資料・書類が散らかっていた。直樹と氷見はそれを必死になって回収、分別をした。しかし、量が量というものだ。その一日では片付けきれなかった。そして今日、直樹と氷見は二回目の訪問をするということだ。今日が金曜日で、この依頼を受けたのは火曜日。3日前のことだ(31話目『PLOT。』参照)。
直樹は広報部の扉を開く。その瞬間だった。目の前からミサイルのように一人の女子生徒が飛び込んできた。直樹は予測していたため、すでに避けの態勢を取っていた。そのため、その女子生徒とぶつかることはなく、女子生徒は通過していった。氷見も同様に避けている。二人に避けられた女子生徒は振り返り、すごい勢いで近づいてきた。その手にはシャープペンシルとメモ帳が。
「聞きます、書きます、貼り出します!広告するなら広報部!今日はどんな情報を提供してくれるんですか?!」
その女子生徒はまるで猪のような勢いで言葉を連ねていく。
「あの、舞崎水鳥さん?私たちは救世部の者です。」
氷見先生がやや引き気味にそう言って、舞崎水鳥という女子生徒は我に返って起立した。
「もしかして、今日も掃除を?」
「あぁ、そうじゃなきゃ、広報部なんて来るわけ無いだろ。」
「口がキツイなー、直樹さん♪」
直樹と氷見は舞崎水鳥について行き、広報部へと足を踏み入れた。すると、一秒もしないうちに強烈な衝撃を受けた。あれほど苦労して整理したはずの資料や書類が、また地面に散らばってるではないか。直樹も氷見も、これには絶句の一言だった。数日にして、整理した書類などをもうぶちまけた様だ。
「あれ?どうしました?」
呆然と立ち尽くす二人を見て、水鳥はそう尋ねる。
「お前、これは何だ?また一からのスタートか?」
「これですか?これはー…知らないうちにこうなってました。」
「いや、どうやったらこうなるんだ?」
「分かりません。こうしたらこうなりました。」
直樹は呆れて物も言えなくなった。氷見が代役する。
「これでは依頼達成まで時間がかかることでしょう。」
「そこは問題ないですよ。」
「いえ、こちらの問題点です。期間が伸びれば伸びるほど、それなりの代価がかかります。それはお分かりで?」
「はい、もちろんです!」
氷見も何も言えなくなった。というか、もう訊く必要もないと判断したのだ。
さっそく二人は片付けに取り掛かることに。水鳥はこの前と同様、椅子に座ってティータイム。今回の掃除には別の目的がある。直樹はとある行動に出ようとしていた。
直樹と氷見は、机の上に置かれた膨大な量の資料に隠れ、そこでコソコソと話す。
「直樹、計画通り行きますよ。」
「分かってるって。問題は、この膨大な量のどこにその資料が隠れてるか、でしょう?」
「そうですね。」
直樹と氷見はそこから別々に別れる。直樹は入口側に散らばる資料の砂漠を処理することに。一方の氷見は机下に雪崩込んだ資料の死骸を転生することに。
ニコニコ。
「・・・・・・。」
ニコニコ。
「・・・・・・。」「・・・・・・。」
ニコニコ。
「・・・・・・・・・・・・。」「・・・・・・・・・・・・。」
ニコニコ。
「お、おい…どうしたんだ?さっきから何がおかしいんだよ、おい?」
兎姫が堪らず声を上げた。目線の先、直樹の座る席の隣に座って、こちらを眺める久留米炉利。異様な笑顔を振りまいている。
「どうかしました?」
「おい、海美、言ってやれよ。」
「え?私ですか?」
海美は数秒間だけ戸惑った後、こう切り出した。
「久留米さん、あの、今日、何か良いことでもありました?」
「良いこと?そーだねー、ないよ。」
「・・・・・・。」「・・・・・・。」
何も話すことがない彼らは言葉を発することすらできなかった。久留米炉利はずっとこちらを見つめながらニコニコしている。非常に居づらい空間だ。
「・・・・・・。」「・・・・・・。」
ニコニコ。
「言っておくけど、救世部は基本、こんなんだからな。やることなんてほとんど―――」
ガラガラガラ。
扉の開く音。ベストタイミングで依頼者がやってきた。兎姫の口が開いた状態で止まる。
「やること、ありましたね。」
久留米炉利は笑顔でそう言った。
そこに立っていたのは眼鏡をかけた一人の男子生徒だった。中背で黒い髪をしている。
「依頼をしに―――」
海美がその言葉を放ったと同時に、その男子生徒へと兎姫がオールを投げ飛ばした!オールは勢い良く男子生徒へと飛んでいき、避けられて廊下の壁に激突した。海美は驚いてビクッと体を震わす。一方の久留米炉利は笑顔のまま。兎姫はソファーから飛び降り、その男子生徒へと飛び蹴りをかます。しかし、男子生徒は兎姫の足を掴むと、そのまま地面に叩きつけた。兎姫は背を打って悶える。
「皆さん、お久しぶりです。」
そこに立っている人物は、兎姫が良く知っている人物。名前は慎司。ネット炎上の依頼をしに来て、兎姫と喧嘩に発展。しかし、兎姫の攻撃をすんなりといなした、普通ではない男子生徒。兎姫はそれ以来、彼に恨みを抱いている。彼を見るなり攻撃するのはそういうことだ(2話目『謎とは時に恐ろしく、そして楽しい。故に面白いものである。』参照)。
慎司は悠々と部室に足を踏み入れる。兎姫は慎司の足を掴み、押さえた。
「お前なんかが、足を踏み入れて良いと思うな、眼鏡!」
「まだ恨んでるんですか?やれやれですね。」
慎司は足を掴む兎姫の襟首を掴んで持ち上げると、そのまま廊下へと突き飛ばした。海美が慌てて立ち上がり、兎姫の元へと駆け寄る。慎司の横を通過して行こうとしたその時、慎司は海美の足を引っ掛けた。海美は足に引っかかって勢いで飛び出した。そのまま兎姫の倒れる上に落下した。兎姫の腹に頭から不時着したため、兎姫は吐きかけた。
「こんなものですね。」
ニコニコ。
「ん?何ですか?」
椅子に座りながら、一連の光景を楽しげに見ていた久留米炉利が、慎司を笑顔で見つめていた。
「やっぱり楽しいね、救世部って。毎日がイベントだらけって感じで。」
パンッ!
直後、部屋に破裂音が響いた。それは久留米炉利のホルスターから抜かれたガスガンによる射撃の音だった。その早打ちはさすがに反応できなかったのか、慎司は腹を押さえて顔を歪める。久留米炉利のガスガンの射撃はどうやら慎司の腹にヒットしたようだ。
「な、何を?」
「それはこっちのセリフでーす。」
久留米炉利は再び、ガスガンの照準をずらし、慎司の腕目掛けて引き金を引く。しかし、次の弾丸は慎司が避け切る。さすがに、避けてくるとは思わないだろう。相手がそれほどの人間には見えないからだ。その隙を突かれた炉利。慎司が机上の鉛筆入れを蹴り飛ばし、それが久留米炉利の顔にヒットして炉利はそのまま椅子ごと倒れた。
「誰だか知りませんが、危害を加えたので、ご了承を―――」
「できるか、ボケ?」
背後から兎姫の声、その数秒後、兎姫のオールが慎司の顔をなぎ払った!しかし、その攻撃は腕で受け止められた。兎姫はとっさに慎司の背中を蹴り飛ばす作戦に。しかし、慎司の方が行動速度が早かった。持っているオールを引っ張り、兎姫の態勢を崩したのだ。そのまま、前のめり状態の兎姫の腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。兎姫はそのまま反対側、本棚の置かれたところへと背中をぶつけて倒れた。
「別に攻撃を仕掛けたのはそちらのほうですので、これは正当防衛ですよ、ご了承ください。」
慎司はそう言うと、兎姫の普段寝転がっているソファーに座った。兎姫は本棚に寄りかかったまま、うなだれている。海美は廊下で打ち付けた肘を痛がっている。久留米炉利は机の下で呆然と天井を眺めていた。その顔も笑顔。
「今更、何をしにきたんですか?!」
海美が廊下からそう叫ぶ。廊下を歩いている幾人かの生徒が気になって振り向いた。
慎司はいつもどおりクールな顔で答える。
「救世部は一体、何のための部活動ですか?それが分かれば必然的に分かるでしょう?」
「依頼だよねー。」
久留米炉利が倒れたままそう呟いた。
「その通り、僕は依頼人だ。何の、丁重にも扱わず、不意打ちとは。差別なんて今の世の中じゃ格好つかないですよ。」
久留米炉利は笑顔のまんまで立ち上がり、椅子を立てて再び座った。兎姫の座るソファーに慎司が座っているのを確認した。海美も立ち上がって、炉利の横、直樹の座っている席へと座った。
「海美ちゃん、大丈夫?」
「うん、問題ない。肘打っただけ。それより、兎姫さんは大丈夫でしょうか?」
「どーだろーね?でも、やるときはやる、そんな人間じゃないの?」
兎姫はまだ、本棚に寄りかかって伸びていた。
部室の外、廊下では数人の生徒が様子見でちょくちょく救世部を覗いていた。
「ところで、そこにいる迷彩色の彼女は誰です?」
慎司が急に尋ねてきたので、当の本人が答えることに。いつもどおり、笑顔のまま自己紹介をした。
「私は久留米二等兵でーす!好きな銃器はLAW!好きな銃弾はスラッグ弾!好きな戦闘機はスピリット!あ、でも、ブラックジャックとかも外せないかなー。近接武器とかになるとね、やっぱりピストルナイフとか妥当な部分が良いかもー。使い方次第ではレーザーサイト内蔵とかできて便利。他にも投擲武器だったらー、スタングレネードとかが良いですよねー。あなたはどんな武器が好きなの?私のおすすめはやっぱりドラゴンとかスティンガーとかのロケットランチャー、そこらへんだなー。やっぱり一撃で高威力広範囲を攻撃できる武器は派手で格好良いよねー!それとー、PTRS1948もなかなかだと思いますよ。あの銃筒の長さには圧巻ですよ!スナイパーライフルっていうのは地味でつまらないとか思う人いるけど、あれほど高性能で素晴らしい武器なんてなかなかないですよ。銃弾を長距離飛翔させる技能はなかなかのものです!ですが、私は最近、ハンドガンの方にハマっていて―――」
まるで破裂した排水管のごとき勢いで語りだした久留米炉利。こうなると止められない。ここから数十分、久留米炉利は銃器が何だ、軍事が何だと好きなだけ語り出し、海美は呆れて直樹のように机に突っ伏した。一方の慎司はまるで銅像のように動くことなく全てしっかりと聞いていた。久留米炉利の長々とした自己紹介(途中から趣旨変わってるが)が終わったのを見て、慎司が口を開く。
「なるほど、良く分かりました。ちなみに、僕は大日本帝国陸軍の九七式戦闘機が好きですかね。」
「おぉ~、渋いとこつくね~♪さすがは日本男児!」
「私個人では単体武器最強と思うのはやはりアサルトライフルの類ですかね。グレネードランチャーとのハイブリッドは使い勝手が良い。」
まるで自分がしようした事があるかのような喋り口調だ。
「あー、分かるー。だけど、それだったらショットガンも外せないんじゃ?近接型とは言え、銃器によっては連射可能だし、狙いを曖昧に付けても散弾型は敵を逃さない。」
「そーですねー、全く別の切り口になってしまいますが、過去、ナチスドイツはその軍事力を用いて新たなる兵器を開発していたそうだよ。その中に、列車砲と呼ばれる名前通りの兵器が作られていた。列車と巨砲を合わせるなんて素晴らしい。写真を見ただけでも男心が擽られる(くすぐられる)、そんな兵器だった。」
「それなら私も知ってますよ!あれはなかなかなものでしたね!あの軍事兵器が現代に生かせれば良いのにー。」
(なんか、意気投合しちゃってるし、この人。)
海美は突っ伏したまま、炉利と慎司の会話をただ黙々と聞いていた。二人はなぜこうも話が通じているのか。その話もしばらくしてようやく終わり、やっと本題に移った。
「ゴホン、えーっと、話があらぬ方向に向かってしまいましたが、僕がここに来たということは、しっかりと依頼を持ってきたということですよ。」
海美は顔を上げる。ようやく役目がやって来たと。
「それで、慎司さんは何を?」
慎司は急にキリッとした目つきになって、
「土曜日に待ち合わせをしたいと思いましてね。その時に要件は言います、そういうことで。」
慎司はそう言うと、一人立ち上がって勝手に出て行った。扉が閉まり、しばらく無音状態が続いた。
「胸糞悪ぃ…。」
兎姫が最初に無音を引き裂いた。本棚に寄りかかったまま項垂れている兎姫には意識があった。さっきからずっと意識がはっきりとしていたが、ずっと倒れたふりをしていたようだ。
「あれ、兎姫さん?起きてました?」
「まぁな。頭打って、あることを思い出した。あの野郎、来てやがったか。」
兎姫はフラつきながら立ち上がり、尻部を叩いてホコリを払っていた。
「何のことです?」
「あいつは、俺が人生で初めて負けた相手だ。」
「えぇっ?!」「ふ~ん♪」
「海美、お前なら知ってるはずだ。喧嘩一筋だった中学時代の俺が、屋上で戦ったあいつのことだ。馬鹿なお前は俺と一緒にぶち負かされたよな?」
「そう言えば、そんなこともありましたね。」
兎姫と海美は中学時代、同じ学校に通っていた。当時の兎姫は喧嘩で全てを解決する暴君。海美は今と変わらずフワフワとしていて、だけど馬鹿だった。
ある日、暴君兎姫が屋上で喧嘩してた時のこと。その相手をぶちのめした兎姫はふとあることに気づく。学校の屋根上の貯水タンクに座ってる男子生徒に。兎姫は完全、その男を標的にする。男は貯水タンクから降りると、兎姫の喧嘩を買った。しかし、兎姫はその男子生徒の勝つことができなかったのだ。普段、どんな男子であれ、全く動じずぶっ飛ばしている兎姫が初めて負けた相手だった。彼は兎姫にトドメを刺そうと手を上げる。そんな時、一人の馬鹿がやってきた。それこそが海美だった。弱いのにも限らずに突っ込んできた海美は呆気なくやられてしまい、結局、両方共ボロボロで倒された。あの男は最後にこう呟いて去った。
『ラブラドル効果って知ってるか?』
その一言。意味は全く理解できなかった。
彼が去った後、兎姫は海美を掴んで殴りかかろうとした。ムカついていたし、憂さ晴らしがしたかった。それに、海美の行動が理解できなかったからだ。しかし、海美は兎姫に抵抗することはなかった。
『良かった、殴れるほどの元気が残ってて。心配したんですよ、もしかしたら死んじゃうんじゃないかなって。でも、やっぱり兎姫さんは兎姫さんですね。さっきの男より、その拳で殴られ倒れるなら本望かも。なんてね。』
海美はそんな戯言を言った。兎姫には到底理解できなかった。なぜ、人のためにここまで体を張っていられるのかと。海美が自分を本気で心配してくれていることが伝わった。兎姫は初めて優しさに触れた気がした。海美は兎姫を尊敬して、本気で助けに来ていたのだ。それ以来、兎姫は海美を守ってあげようと誓うのだった(9話目『命の尊さを知れ。』参照)。
「―――そんなこともあったろ?恥ずかしながらな。」
兎姫は電子タバコを口にくわえ、ソファーに寝そべりながら、やや赤面状態でそう言った。
「その時のあの野郎、それが慎司、あいつだ。」
「確かに言われてみれば似てます!でも、一体何で彼がここに?」
「知るか、他人事なんて。だが、あいつ、何か企んでるだろ。」
「そうですね、偶然、同じ高校だった、とも考えづらいですからね。」
「それと、あいつの言ってた『ラブラドル効果』とかいう質問、あれも気になる。やっぱり、あのクソメガネは気に入らねぇ。」
兎姫はそう言い、電子タバコの水蒸気を吐き出した。
「まぁ良い。土曜日になったら、待ち合わせに出向いて無理やり吐かせてやる。」
広報部にて、散らばる資料と書類を片している直樹と氷見。ようやく半分が片付け終わった頃、直樹がある資料を見つけた。目的の書類とは別の書類だったが、この書類も気を引くような文章が書かれていた。ひとまず氷見先生に見せたいところだが、舞崎水鳥がティータイム中で見張りになっているため、見せに行くのは難しそうだ。なので、自分の身体で隠してその文章を読み取ることにした。
――――――――――
坂田政治界家概要
記述日 ××××年××月××日
広報部改め、我らゼピュロスは今回、坂田政治界家の潜入を試みることにした。上辺では仲間を装うものの、奴らとはどうも上手くいく気配がない。ならば、先手必勝、こちらから先に仕掛けることにした。そもそも、坂田政治界家などという野蛮かつ低知能な者どもと我ら四陣を同等に扱わないで欲しいものだ。我ら四陣は『トリガー』に仕える者。小規模の孤独組織とは格が違う。
しかし、どうやら坂田政治界家は最近、妙に権力を強めている模様。潜入の結果、分かったことがある。
一つ、彼らは我々の敵だということ。
二つ、彼らは四陣を出し抜こうとしていること。
三つ、彼らと我らは同じ目的を持つ同士だということ。
三つ目にはさすがの我らゼピュロスも驚嘆の声を上げたことだ。まさか、坂田政治界家も同様に孤月家衰退を目的としているとは。しかし、この状況は好機と取れる。坂田政治界家と孤月家が相対すれば、どちらかが衰退を遂げる。そうなれば、あとは我ら四陣が残ち者を抹殺するだけだ。どちらにしても、坂田政治界家と孤月家の両方を滅することには変わりない。
坂田政治界家は未だに我らの敵意に気づけている様子はない。『トリガー』に歯剥いておいて、生きて残れるとは思わない。勝機はこちらにある。
だが、問題点が一つできてしまった。最初は潜入は上手くいっていたのだが、後々、潜入者が戻ってこなくなる事件が起きた。まさかとは思うが、坂田政治界家が潜入に気づいたのか。この問題は『トリガー』に露見する前に対処しておかねばならない。
ゼピュロス潜入役員一同
――――――――――
(何か、ものすごーくヤバイものに手を付けちまった気がする。ただ、これは使えるな。)
直樹はその書類はバレないようにクシャクシャに丸めてポケットに入れた。それから机下を掃除中の氷見先生のところまできた。
直樹は氷見先生に小声で呟く。
「新しく良い記事見つけた。」
「それはのちほど。」
直樹は再び入口側の書類整理に戻る。
一方の氷見は直樹とは別に気になる書類を見つけていた。
――――――――――
報告書No.187
今回は一言、これだけを記述しておく。
『坂田でもなく、引き金を引く者でもない、第三の存在を発見した。』
以後、気を引き締めるように。
ゼピュロス
――――――――――
氷見はそれをほんの1秒足らずで目に焼き付けると、その書類を奪うことなく収集中の書類の山に混ぜておいた。そして何事もなかったかのように机下から這い出てきて、机上の書類と資料のビル群の中に、新たに一つのビルを立てた。
「さて、そろそろ時間も時間でしょう。水鳥さん、私たちの活動時間の限界です。そろそろ終わりにします。」
「あ、どーもー。」
水鳥は持っていたコーヒーカップを机に置き、手を振って返した。直樹と氷見は、お互い何事もなく、すんなりと普通に広報部を後にする。扉を開き、廊下に出た瞬間、紙の匂いと密閉感から解放され、清々しく涼しい風が吹き抜けた。窓ガラス越しに外を見ると、遠くの山脈に夕日が落ちていくところが見て取れた。西の空を茜色に染める一方、東の空からは夜の闇が迫っていた。そろそろ、夜が訪れる。この時間帯になると、ほとんどの生徒は下校、及び部活動に駆り出しているため、廊下には人の気配がなくなりひっそりとする。そんな廊下を生徒と教師が二人で歩いている。乙女チックな女子がこれを盗み見てしまったら、明らかに誤解されそうだ。
「お互い、収穫があったようで。」
「え?もしかして氷見先生も―――」
「見つけましたよ。明らかな不正文章を。」
「なーんだ、それならどの広報部にだってあるでしょー。間違いをするのが人ってもんだし。」
「違うわよ。誤字脱字の意ではなく、適当ではない悪性物の意よ。」
「あー、なるほど。ちょっと見せてよ。」
「あなたって人は…。」
氷見は直樹の淡白性に呆れた。
「書類は盗みませんよ、教師として。ですが、文章は焼き付けておきました。」
氷見は広報部で見つけた書類の内容を一文字足りとも間違えずに直樹へと伝えた。直樹はそんな氷見の能力を驚愕半分、感心半分の感情で聞いていた。
――――――――――
報告書No.187
今回は一言、これだけを記述しておく。
『坂田でもなく、引き金を引く者でもない、第三の存在を発見した。』
以後、気を引き締めるように。
ゼピュロス
――――――――――
「―――のように書いてあったわ。ゼピュロスが関与してる時点で、広報部もただものではないことは確実ね。」
「なーるほど。いよいよ、怪しくなってきたわけかー、広報部。っていうかさ、この学校、どうなってんだよ?科学研究部やら広報部やらと、どいつもこいつも組織関係者って、絶対策略だろ。」
氷見は直樹のそんな言葉に、珍しくキョトンとした顔をした。直樹はそんな氷見にやや驚きつつ、なぜそんな顔をするのか尋ねる。
「いえ、少し呆れまして。今更、それに気がついたんですか。」
「何だよー、それじゃあ、俺が単なる間抜けキャラみたいになってんじゃん。」
「兎姫なら『その通りだ』とか言い返されてるでしょうね。現に、兎姫はもう見切りをつけているようですが。」
「え?そんなに進んでる?」
救世部部室。ニコニコとしながら椅子に座る久留米炉利が、ずっとソファーに寝そべっている兎姫を見つめていた。兎姫は居づらそうに、何度も目線を逸らす。そんな兎姫の横で海美はその様子を眺めながら、少しだけ嫉妬心を燃やしているところだった。
兎姫がいい加減我慢ならず、何か話第を振ろうとソファーから起き上がった。
「おい、ロリ兵士!お前、『ボレアース』員だったろ?俺側についたからには、それなりの情報を献上しろよ。」
「そうですねー、ってさりげなくロリって言うな!」
「そこの突っ込みはマジなんですよね、久留米さん。」
「良いから早く説明しろ、合法ロリータ!」
「ぬぐぐぐ…まぁ、良いです。」
久留米炉利は一度、怒りを沈め、冷静になると、説明を始めた。
「確かに『ボレアース』組織員ではあったものの、あまり良い情報は望めそうにないよ。私はあくまで組織員だっただけですからね。」
「だが、お前、結構部下に知られてただろ?」
「名前はね。一応、これでも組織階級3等ですから。それでも―――」
「ちょいと待て。」
兎姫が何かに引っかかって炉利の口を止める。
「組織階級って何だ?もしや、奴らにはそれぞれ階級値が定められているというのか?」
久留米炉利は頷く。
「そりゃ、初耳の良い情報を聞いたな。」
「それは良かったですよー。ちなみに、最大階級が5等です。私は3等でしたが、それでもあまり詳しくはないんですよね~。」
「まぁ、知ってる情報だけで良いからよ。」
「では―――」
久留米炉利が口を開いた瞬間、部室の扉が開かれた。兎姫、海美は扉の方へと目線を向ける。一方の久留米炉利は話したかったのに中断されてしまい、開いた口が閉じない状態。もちろん、シンプルに開いたままなだけなのです。
入ってきたのは直樹と氷見先生でした。
「氷見ちゃん!それと付属品。」
「俺だけ酷くない?!せっかく良い情報を持ってきてやったのによー。つくづく、イラつかせるやつだぜ。」
直樹はやれやれと首を傾ける。兎姫がムカついて腕を出そうとするが、その腕を自分の手で引き止めた。今は情報が大事だからだ。
直樹は兎姫の前、依頼者が座る席に座ると、ポケットからクシャクシャに丸まった書類を一つ取り出し机上に置いた。兎姫がそれを持って眺める。
「何だ、このゴミ玉は?」
「ゴミ言うな、ゴミって。バレずに持ってくるために、ポケットにしまってたんだよ。」
「あっそ。」
兎姫はすぐさま、その丸まった書類を開いていく。隣にいた海美も気になって顔を覗かせていた。炉利も興味があるので兎姫の後ろへと回った。同様に氷見もその隣へ。兎姫は開いた文章を見つめて固まった。こう書かれている。
――――――――――
坂田政治界家概要
記述日 ××××年××月××日
広報部改め、我らゼピュロスは今回、坂田政治界家の潜入を試みることにした。上辺では仲間を装うものの、奴らとはどうも上手くいく気配がない。ならば、先手必勝、こちらから先に仕掛けることにした。そもそも、坂田政治界家などという野蛮かつ低知能な者どもと我ら四陣を同等に扱わないで欲しいものだ。我ら四陣は『トリガー』に仕える者。小規模の孤独組織とは格が違う。
しかし、どうやら坂田政治界家は最近、妙に権力を強めている模様。潜入の結果、分かったことがある。
一つ、彼らは我々の敵だということ。
二つ、彼らは四陣を出し抜こうとしていること。
三つ、彼らと我らは同じ目的を持つ同士だということ。
三つ目にはさすがの我らゼピュロスも驚嘆の声を上げたことだ。まさか、坂田政治界家も同様に孤月家衰退を目的としているとは。しかし、この状況は好機と取れる。坂田政治界家と孤月家が相対すれば、どちらかが衰退を遂げる。そうなれば、あとは我ら四陣が残ち者を抹殺するだけだ。どちらにしても、坂田政治界家と孤月家の両方を滅することには変わりない。
坂田政治界家は未だに我らの敵意に気づけている様子はない。『トリガー』に歯剥いておいて、生きて残れるとは思わない。勝機はこちらにある。
だが、問題点が一つできてしまった。最初は潜入は上手くいっていたのだが、後々、潜入者が戻ってこなくなる事件が起きた。まさかとは思うが、坂田政治界家が潜入に気づいたのか。この問題は『トリガー』に露見する前に対処しておかねばならない。
ゼピュロス潜入役員一同
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「どうだ?少しは役に立つ文章だろ?それとも何か関係ない奴だったか?」
直樹が期待と不安を綯い交ぜにして兎姫の答えを待つ。
「でも坂田政治界家の事ですよね?これは結構有力じゃないですか?」
顔を覗かせていた海美が兎姫の代わりに答えを言う。
「ゼピュロスと坂田政治界家が対立してることが分かれば十分じゃないの?あと気になったのが、この孤月家衰退って何?」
炉利が新たな疑問を立てる。海美も直樹も、そして氷見も知らない様子だ。兎姫は一向に口を開く気配がない。知ってるのかも不明だ。
直樹は炉利の疑問を聞いた後、笑いを止められずに微笑し始める。
「そういうと思ってな、その疑問に対する答えの書類も取ってきた。」
直樹は再びポケットから丸まった書類を取り出し、それを机上に置いた。無言で兎姫がそれを手に取り、開く。
「そいつは以前に広報部に行った時に見つけた書類だ。俺には到底理解できないことだが、兎姫なら知ってるかと思ってな。それで持ってきた。」
兎姫はその書類に目を通し、そして再び固まった。海美、炉利、氷見の三人もその書類に目を通す。そこにはこう書かれていた。
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孤月家衰退プロジェクト
××××年××月××日
我々は危機に瀕している。このままでは我々の組織は破滅の一歩を辿る事となるだろう。そこで、この破滅の危機を脱するために、一つの提案を持ち込んだ。それこそが、孤月家衰退プロジェクト。このプロジェクトを成功させた暁には、孤月家の地位に立つことができ、我々の破滅は阻止される。
しかし、このプロジェクトを完遂させるにはある程度の期間というものが必要だ。そこで、孤月家の第二子の誕生を利用させてもらう。その第二子を上手く利用して我らの一員にすれば、孤月家を衰退させることが可能だろう。すれば、孤月家は後継がいなくなり破滅するはずだ。第一子は既に日本から飛びだった。第一子も役には立たない。
このプロジェクトを完遂させるべく、そちらに重要人物を一人手配させた。彼が第二子の仮の父を演じてくれる。無論、肉親の方は既に抹殺済みだ。安全は確保できている。彼が第二子の父になり、そして第二子と我らの後継とで政略結婚を結ばせる。これだけで十分だが、時間はそれなりにかかる。
そして、このプロジェクトには膨大な資金がかかっている。それを理解して臨んでほしい。君たちには学校の生徒になりすましてもらう。第二子のために作った学校で共に生活してもらいたい。そのための学校はもうすでに建設済みだ。第二子を完全にコントロールするためには必須事項なのだ。
もし、失敗するような事があれば、言わずとも分かっているだろう。君たちには死んでもらう。証拠隠滅のために。だが安心してくれ。成功すれば、君たちを殺すことなんかしない。むしろ大い讃えようではないか。望むのなら、『トリガー』の転職も考えてもいい。少ない人生を我らのために使ってくれたのだ。当然の報いだ。
それと後一つ。そちらに手配する人材はもうひとり。彼はこのプロジェクトにおいてのキーマンとなる人物、第二子の夫となる人物だ。彼には第二子の友人役になってもらう。共に生活し、強い絆を結ばせるのだ。そうすれば、政略結婚も簡単に遂行できるはずだ。
それでは命運を祈る。
『坂田政治界家』
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「どうよ?どうよ?どうよ?今回の俺は一味違うだろう?」
直樹が調子に乗った態度で兎姫を煽る。それでも兎姫が動くことはなく、ずっとその書類に目を向けていた。
「何ですかねー、すごい生々しいこと書かれてません?そう見えるのは私だけですかねー?」
久留米炉利が呑気に呟く。
「大丈夫ですよ、私も同意見です。」
海美がその答えを呟く。
「問題はそこじゃないのですよ、見て取れるじゃない。孤月家と呼ばれる家族を死守しなければ、坂田政治界家の勢力は強大になるのよ。兎姫、目星は付いているわけかしら?」
氷見が硬直状態の兎姫に尋ねる。兎姫は持っているその書類二つを丁寧に畳み、それをポケットへとしまった。
「良くやった、直樹。やれば出来る子、YDKだ、お前は。」
真顔でそう直樹を賞賛した兎姫は、ソファーから立ち上がって颯爽と救世部を出て行った。
「なーんか、嬉しくないんだよなー。」
直樹はシリアスな兎姫に満足ならないようだ。
「あー、行っちゃった。せっかく『ボレアース』の情報を教えようかとー。」
久留米炉利は落胆する。
兎姫は廊下を無言で歩いていく。すると、前方から一人の男子生徒がやってくるのが見えた。身長が170センチ代、いつもキマっている黒髪のヘアスタイル。情報処理部部長の牧野霧都だ。
牧野霧都はちょうど、兎姫に用事があるらしく、兎姫の名前を呼ぶが、兎姫は無視してそのまま過ぎていった。
渋々、牧野霧都は救世部へと行くことにした。救世部はまだ開いているようだ。牧野霧都は取っ手に手をかけ、扉を開いた。ソファーの横に椅子を置いて座っている海美、入口左側の机に突っ伏す直樹、ソファーに座る救世部顧問の氷見、そして直樹の横にいる、上下が迷彩色の服を着ている知らない女子生徒。
「すいません、先ほど救世部部長に出会ったのだが、用事があるらしく足早に帰ってしまいました。そのため、救世部員に伝えることにしました。」
「あの、何をですか?」
海美がそう尋ね、霧都は言う。
「ボレアースって組織、知ってます?」
新たなる救世部員が増えた回でした。
彼女は久留米炉利。これはここでの情報ですが―――
久留米炉利 高校1年生
年齢:15
生年月日:9月10日
身長:152センチ
―――このような設定がなされているのです、裏では。もちろん、全てのキャラ(モブを抜く)には同じく設定がされていますが、それは後程記載しておきますので、お楽しみに。




