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ENDよければ何とやら  作者: 星野夜
第1章『闇組織編・承前』
25/42

24話目『ENCIRCLING NET。』

 数日ぶりの星野です。やっと落ち着いてきた所です。これで執筆に力を入れられると思ったけどさ…ちょっとどうやらそうにもいかないようで…。

 なんて悲観になるのはよしておきましょう。ただでさえネガティブ思考なのだから。

 さ、今回は24話目…ここまで書けるとは正直思ってなかったです(短気ですから)。

 前々から思ってたんだけど…サブタイトルの名前、英語だけど読めてる?意味とか分かってる?…中には分かってない人…いるよね?っていうか、見てるやついるか?…そーだな、英和辞書とかで調べてください。めんどくさい人、いつかどこかで紹介しますから。

 それではどうぞ。

 月曜日の放課後、いつも通りの救世部室内。ただ、海美はいなかった。今頃、海美は病室でルセと一緒に暮らしていることだろう。今日は二人だけ。ソファーの上に寝転がって漫画を読んでいる生徒会長兎姫と、机の上に突っ伏して気だるそうに眠るだけの暇人直樹。先週の水曜日に龍谷に割られた窓ガラスは未だに修復されず、部屋の中に陽の光は入らない。そんな、いつも通りの時間が過ぎてゆく。

 非公認のこの部活道。その割には依頼人が良く訪れる。そして今日も。

 怠惰で静寂な空気を裂くように扉を開く音が聞こえ、二人は目線だけ出入り口に向ける。扉が開いたのに、そこには誰も立っていなかった。

「何だ?誰もいな―――」

「いますよ、ここに。」

 兎姫の声を遮って、出入り口の方から声が聞こえた。兎姫は目線を下げる。そこには一人の幼女が。身長は120センチ程度。金色に光る髪が目立っている。

「ん?何だ、幼児かよ。どーした?ここは幼稚園じゃないぜ。」

「白を切らないでください、会長。」

 その幼女は兎姫の前の席に座り込んだ。身長が低いからソファーに寝転がる兎姫と目線の高さが同じ。

「…迷子かい、嬢ちゃん?私達が連れてってあげましょうか?」

 兎姫はふざけ気味に訊く。幼女はそんな兎姫を無情に見つめる。

「会長…いい加減にしてください。私の背が低いのは遺伝子に問題があると言いましたよね?」

「あ、そうだっけ?悪い悪い、木ノ葉。」

 この背の低い幼女は狐火木ノ葉と言う名前で、兎姫と同じ生徒会執行部の一人。つまり、幼女ではなく、しっかりとした高校生だ。だが、身長が異様に低い。兎姫がその身長についてをからかっている。

「会長、今日…私が救世部室に来た理由を理解しているでしょうか?」

「んあ?何の事だ?迷子の幼女一人を家に無事送らせるとかか?」

「違います。最近、救世部に関わった人間が病院送りになったという情報が入りました。これは生徒会執行部として、見逃せないことです。私は、救世部の部活動を評価しに来ました。活動を確認、評価し、その善悪によって、救世部を廃止するか否かを決めます。」

 これには兎姫と直樹は同時にお互いの顔を見合った。

 つまり、救世部の活動評価が悪ければ、もう救世部は二度と再起できない…そういうことになる。

「お、おう…それはいつ、決まった事だ?俺の意見はなしか?」

「会長は救世部部長も兼任していますので、正答な評価ができないと見込みました。よって、生徒会長を抜く、残りの6名で今回の決定をしました。」

「そうか…。」

 兎姫は突然立ち上がり、壁に立てかけてある愛用のオールに手を伸ばした。

「良いだろう!生徒会執行部全員しばき倒してやらァ!」

 兎姫はオールを持って部室を出て行こうとした。そんな兎姫を何とか直樹が全力で引き止める。

「まぁまぁまぁまぁ!落ち着けって兎姫!生徒会長が生徒会執行部をしばくなんて、そりゃもう前代未聞の大スクープだろ!退学どころの騒ぎじゃねぇぞ!」

 そこまで言って、やっと落ち着いた兎姫。オールを再び壁に置いてソファーに再び寝転がった。木ノ葉はその一連のやり取りを無情に見てた。

「それで…会長、鬱憤は晴れましたでしょうか?」

「晴れるわけねぇだろうが。」

「そうでしょうね。」

「分かってんなら、何で訊いたんだよ?!」

「私は今一週間、救世部を見張ります。と、宣告してしまうのは評価上に変異を来す可能性が憶測できますが、私はあなた方の誠心誠意を評価しますので、そんな事はどうでも良いのでしょう。」

(ガン無視かよ、コイツ…。)

 兎姫は、手を出しそうになる力と、生徒会長としての責任が互いにせめぎ合い、何とか落ち着いている。

「じゃ、じゃあ…仮に、仮に俺が良い人ぶっていたとしても…?」

「高評価となる事でしょうけど…あなたがその言葉を発してしまった時点で、良い人ではない事は明白ですね。当然、人柄は評価に影響しません。問題はそこではないからです。本当の問題点は、外部に悪影響を与えているかどうか、そこでしょう。」

 そんな時、ベストタイミング?で一人の依頼人がやって来た。茶色の髪をゴムで纏めて後ろに垂らしている。フレンドリーそうな雰囲気のその人物は兎姫の友達、紗奈だった。

「ウサ、依頼があるんだけど…。」

「おぉ、紗奈か。そこに…あれ?あいつは…。」

 先程まで兎姫の前の席に座っていたはずの木ノ葉が、いつの間にか存在を消していた。誰もその瞬間を見ていない。

「ま、いっか。そこに座ってくれ、紗奈。」

 紗奈は兎姫の前の椅子に座った。

「で、依頼ってもんは?」

「…実は、非常に…言いづらい事なんだけどさ…。」

「良いよ、言えって。友達じゃんか。それに俺は救世部だぜ?どんな依頼だって解決してやるよ。」

 兎姫がそう言って、紗奈は意を決し、緊張しながら言った。

「…じ、実はさ…また関係ない借金取りにお金を取られちゃって…。」

「ま、またぁ~?!どんだけマーキングされてんだよ、お前!現金生成機か!」

「ごめーん、ウサー。もう、駄目かな~?」

 兎姫は壁に立てていたオールを再び手に取った。

「良いぜ!その依頼、俺が引き受けた!圧倒的に、徹底的に、借金取りから借金取り返してやらァ!」

 兎姫の借金取り返しが始まる。直樹は気だるそうに見送った。紗奈はいつも通り、心配ひとつせず、元気に兎姫を見送る。


 深夜2時半。場所は海沿いに位置する重工場のとある倉庫。この時間帯には当然、作業員は全員帰るために誰もいなくなるはず、だったが、なぜか倉庫内から誰かの話し声がしていた。複数の人間が会議をしているかのような静かでヒソヒソとした声だった。そんな声を突き破るように倉庫の扉を叩く打撃音がいくつか響き渡った!

「だ、誰だ?!そこにいるのは―――」

 倉庫内から響いた男の声が瞬間、別の音でかき消された。倉庫の扉をぶち破る騒音と共に、一人の人間が倉庫内へと飛び込んで来た。そこにいた一人の男を踏みつけて誰かが着地する。倉庫内は真っ暗なため、その人物が誰かは分からなかった。

「とおっ!ナイススタンド!どう?今の?100点?」

 女子の声がした、その直後、倉庫内へと複数の松明が無理やり投げ入れられた!外から別の人物が投げ入れた物だ。その松明の炎は倉庫内を赤く照らしつける。そして倉庫内にいる人物が明白となった。倉庫内に男が10人。皆、それぞれ別の服を着ている。

 倉庫内の男たちが騒ぎ始める。皆、手に拳銃らしき物を握って構える。しかし、侵入者がどこにいるのかすら暗くて分からない。松明が逆光効果を発揮している。何か物音と地面に落ちる音が幾数回鳴り響く。男たちは慌てて警戒態勢に入る。

「よぉ、お前がボスキャラって奴か…。」

 ある男の背後から別の女子の声がして、それと同時に男の首元に何かが突きつけられた。男は硬直し、その場に仁王立ち状態になる。

 そんな時、急に倉庫の照明が点いた!倉庫内がはっきりと肉眼で捉えられるようになる。その倉庫内に松明と、男が9人、倒れているのが見える。

「こ、これは…。」

 男は言葉にならないという感じだった。

 倉庫の入口近くの電源盤に一人の女子生徒。そして男の首元にオールを構える一人の女子。救世部部長、兎姫だ。

「お、お前らは一体何をしに来た?」

「ん~、そーだなー、借金取りの借金取り?とか?」

 男の背後で、兎姫は気楽そうにそう呟く。その直後、男が持っていた拳銃をオールで叩いて吹き飛ばした!もう一人の女子の足元にまで飛んでゆく。

「お、これが実物の拳銃か~!初めて見るぞ!」

「暁理、その拳銃は海にでも捨てておけ。」

「あいあいさー!」

 暁理と呼ばれた女子はその拳銃を拾い上げると、それを海へと投げ捨てた。

「結構重いね、拳銃って。あのさー、あれって何円するの?知りたいなー。」

 暁理は男へと近づいていき、目の前で笑顔でそう訊く。男は黙ったままだった。

「やめとけ、暁理。お前には拳銃なんて虚弱なもんより、素手の方が断然似合ってんだからよ。」

 兎姫は再び、持っていたオールを男の首元に突き付ける。

「さぁ~、紗奈から奪った冤罪の借金を返してもらおう。」

「な、何の事だ?そんなもんは知らん!」

 男がそう言い切った直後、兎姫は男をオールでぶっ叩いて吹き飛ばした!男は地面に転がって倒れる。

「あくまでも空惚けるつもりか…。テメェ、正直に言わねぇとどーなるか…分かるよな?」

 兎姫は倒れている男の顔面にオールを突き付け、そして不気味な笑顔でそう言った。男は怯えて後ずさる。

「今から、選択肢を言い渡す。1番、俺にぶちのめされる!2番、暁理にぶちのめされる!3番、両方からぶちのめされる!さ、自由に選んで良いよ?」

「て言うかぁ、全部、おんなじなんだけどぉ!」

 兎姫は再び、男をオールで殴りつける。頬にヒットして赤く腫れ上がった。

「お前が喋って良いのは数字だけだ。」

 男は痛そうに頬を手で押さえる。口から少し出血しているが、兎姫は容赦ない。加減というものを知らないからだ。暁理はその様子をワクワクしながら見つめていた。もう完全に変態。

「じゃ、じゃあ…2ば―――」

 男がまだ話しているのにも限らず、兎姫はオールでぶっ叩いた!男は吹っ飛んで倉庫に置いてあるドラム缶に当たった。その衝撃で、上からドラム缶がいくつも落ちて男の身体を潰した。

 落下するドラム缶の反響音が止んだのを見て、兎姫は振り返り、出口へと歩き始めた。

「先輩!借金取りから借金を取るんじゃ…。」

「良いんだよ、借金取りからはもう―――」

 兎姫はポケットから数十枚もの1万円札を取り出し、暁理に見せつけた。

「―――取り返してある。」

「あれ?いつの間に?」

 実は先程、暗闇の中で男たちを倒した時、兎姫は男たちのポケットの中の財布から金を奪い取っていたのだ。

「それって犯罪じゃ―――」

「良いに決まってんだろ。悪いのは冤罪の紗奈から金を徴収した奴ら、借金取りだろ?俺はただ紗奈に借金取りから取り返した金を渡して、そしてその金を報酬として受け取る…ただそれだけだ。つまり、この金の約何割かは既に俺の金ってもんだろ?…あのボスキャラが俺の口車に乗れば、もっと大金が手に入ったと思ったんだけどなー。」


 次の日、火曜日の放課後、兎姫に借金取りから奪い取った金の半分を紗奈に渡した。

「あれ?半分しかないけど…。」

「当たり前だろ?報酬金、まだもらってなかったからなー。前よりは優しいくなったほうだぜ?借金の利子の分はもらってねぇからな。」

「って…利子…ほとんど差額がないんだけど…。」

「これは慈愛って奴だ。」

 そのやり取りを机に突っ伏して見ていた直樹は、

(相変わらず、えげつねぇな…。)

 と、思っていた。



 相変わらず、紗奈は狙われてますな。まったく、何をしたらそこまで勘違いさせられるのか…。

 そして、相変わらず、兎姫の報酬請求は鬼畜ですね(笑)。

兎姫「んだと?文句あんのか、夜?」

 いや、何でもないです!本当に何でもないんですよ!誰も『兎姫がえげつない最終鬼畜外道』なんて言ってな―――


 星野夜…KO!

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