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ENDよければ何とやら  作者: 星野夜
第1章『闇組織編・始動』
18/42

17話目『CRISIS。』

 僕、星野夜。知ってる?あまり有名じゃないけど…。

ルセ「今頃、何言ってるの?」

 …だってぇ~、これから先、どこまで長く続いてられるか、分かりっこないんだよ~。それなのに、誰にも知られないって…悲しいでしょ?

ルセ「さぁー。俺には分からない。さっさと続き言えよー。」

 …まぁ、気を取り直して、だ…。


 前回、兎姫は刹那に負けてしまいました。

ルセ「兎姫様の事を侮辱するな!許さないぞ!」

 まぁ、落ち着けって!これはただの前置きみたいなもんだから!


 一方、直樹とルセの方はと言うと…今回はその内容です。兎姫が白石刹那と会う前の事。場所は校門前。

 校門前、兎姫、海美、直樹、ルセの4人が立っていた。

「なぁ、どーするんだよ?ここからさ。」

直樹は眠たそうに訊く。

「刹那は今、帰っている最中だ。追うんだよ。」

 木曜日、兎姫達が白石刹那に初めて会う前の話。


 4人は刹那を追って、帰り道を歩き始めた。帰り道に学生があまり見られない。そんな中、一人の学生が救世部を見つけて近づいてきた。

「やぁ、救世部の皆さん。少し用があります。刹那さんを追うのも良いですが、僕にも付き合ってくれないかな。」

 4人はその男子に警戒態勢を取る。なぜかこの男、刹那に会う事を知っている。

「お前は誰だ?なぜ、俺達が刹那に会う事を知っている?」

兎姫はオールを少しだけ構えて訊いた。

 男子は救世部員の前で止まり、笑顔で言った。

「初めまして、皆さん。僕はデルタです。僕はガードナーと言っても良い存在です。君達の計画は万事屋に頼んで探ってもらいました。」

 兎姫は悪そうな人相で、

「ほぉ、じゃあお前は敵…で良い訳だよな?」

 デルタは頷く。

 兎姫はオールを構えた。

「俺はお前を敵と見做し、正式に制裁を与える!」

 兎姫が走り出そうと身を構えた。その前に、ルセは立ち塞がった。

「ルセ、俺を止めるのか?」

「…兎姫様、私はあなた様の執事として、あなたを守る者。そして、兎姫様を導く者でございます。兎姫様は、この様な男に足止めを食らっている暇などありません。あなた様の腕は、刹那と言う人物を制裁するためにあります。ここで使ってしまうのは勿体無い。さぁ、ここは私と直樹に任せ、二人は先にお進みください。」

「え、俺も?」

直樹はマズそうな表情だった。

「おぉ、わりぃな。頼んだぞ、ルセ。」

「もちろんです!」

 兎姫と海美は別の道に出て行った。

「何で、俺もいる必要が…。」

 ルセは直樹に微笑みながら、

「確かに直樹は見る所、喧嘩はロクにできそうにない。ただの雑魚。」

「じゃあ、俺いらねぇだろうがっ!」

「いえいえ、言うじゃん、あれ。…えーっと確かー、枯れ木も山の賑わい?だったかな。」

「つまり、俺は役立たずって事じゃねぇか!」

 直樹はそれでも逃げはしなかった。最後まで見届けるようだ。

「…そちらの金髪がルセ…か。で、そっちの弱虫は知っての通りに直樹。2対1ですかー。どっちにしても、ここは通させないけど。」

 ルセは黙ったまま、道路脇へと歩いていき、そこにあった一本のホウキを手に取った。そして、何度か握ったり、素振りしたりと、何か遊んでいた。

 直樹は無表情でルセに言う。

「お前…どーした?何してんだよ?」

 ルセは振っていたホウキを止め、直樹を見た。ルセは良い笑顔をしている。

「?…あー…そーだね。性能チェック。このホウキが、どれほど使いやすいか、ってね。良かった、使いやすそうだ。普段ならバットを持ってるんだけど、今回は持ってくるの忘れた。だからさ。いやぁー、良い運動になりそうで、ワクワクするよ。」

ルセは笑顔でそう答えた。ホウキをマジマジと眺めていた。

(うわ…こいつ、兎姫と同じ人種だ。ってか、兎姫みてぇな…。)

「そろそろ、行きますか!」

 急にルセは走り出した!片手にホウキを持って。デルタは何の武器も持っていない。無防備を晒していた。素手で挑むようだ。

 ルセは勢いそのまま、単純にホウキを振り落とした!デルタはバックステップで避ける。ルセは続けざまにホウキを払う。デルタは同じく避けた。

 そんな感じで、ルセはホウキを振り続け、デルタは攻撃を避け続けた。

「…両者一歩も引かない…と、言いたいんだけどなー。これはデルタが上手かもな。初心者の俺が見ても分かる…。ルセの攻撃が一発もヒットしてねぇ。」

直樹は珍しく興味があるのか、しっかりと戦いぶりを眺めていた。『こう言うのを高みの見物と言いますよ。』BY海美先生。

「どーして、ルセは兎姫なんかに付いているんですか?」

デルタが避けながら訊く。

 ルセは攻撃しながら言った。

「俺は!兎姫様に忠誠する者!ついていくのは当然だ!」

 ルセが少し溜めた一撃を繰り出した。呆気なく避けられる。

 デルタは平然と話す。

「忠誠なんか止めませんか?僕らと一緒にやって行きましょうよ。」

 ルセはホウキを大きく弧を描く様に切り払った。ジャンプで避けられた。

「誰がお前に付いて行くんだよ!理由がねぇ!」

ルセは少しキレ気味に答えた。その表情はムカついている。攻撃がちっとも当たらないからだろう。

 デルタは挑発のように喋りながら避ける。

「理由なんて無い。必要無い。ルセの力が欲しいのですよ。これ程の女子生徒はそういません。どうです、是非?」

 ルセは叫ぶ。

「バァカッ!俺より兎姫様の方が数百倍強いんだよ!でもなぁ、兎姫様ほどの方が、お前らなんかと一緒にやってく訳無いだろ!少しは考えろ!」

 ルセは全力でホウキを振り切る。しかし、一撃も当たりはしなかった。

 デルタはルセの攻撃を避けながら、微かに笑っていた。

「何笑ってんだよ?!」

「いいえ、ただ、面白いだけですけど何か?」

 ルセはムカついて、ついにはホウキを投げ飛ばした!これがまさかのヒット!デルタの顔面に直撃し、デルタはズッコケた。背中を地面に強打し、痛がっていた。想像もしなかっただろう。まさか、ホウキを飛び道具として使う事なんて。

 ルセは地面に落ちたホウキを再び手に取り、そして倒れているデルタの眼前に構えた。

「俺の勝ちだ!デルタ、お前らのボスは誰だ?死にたくないなら暴露しろ!」

 デルタはルセを見上げながら笑っていた。怪しい、何かを仕出かす様な不気味な笑みだ。ルセはその笑みに、少々身体を震わせる。ゾワゾワする感覚だ。

「お前…キモいぞ。ニヤついてどーした?諦めに似た笑みか?それとも、何かおもしれぇもんでも見たのか?」

 デルタはニヤつきながら、

「いいや、見えたのはお前だ。パンツ、見えてんぞ。」

「バッ、バカ!」

 ルセは顔を真っ赤にして、即座にスカートで隠した。本当に恥ずかしそうだった。ルセはヤンキーだけれど、これでも一応は女子だけはある。パンチラは相当恥ずかしい様だ。構えていたはずのホウキは地面に落ちた。

 無防備になった所を見て、デルタは瞬時に腰にセットしてある物を取った。服で隠れていて見えなかった、それはレボルバー!黒く輝くその拳銃は6発装填式38口径回転式拳銃。恥ずかしがって、スカートで隠したその隙が命取りだった。ルセが気付いた時には既に遅い。デルタは瞬間的に構え、ハンマーを下ろして引き金を引いた!銃口から、38口径の弾丸が枯れた破裂音と同時に飛び出し、ルセの左肩を打ち抜いた!

 ルセは後ろに尻餅を着き、左肩を押さえ、痛みで呻いた。左肩からは赤い血液が流れ出していた。

 近くにいた帰り途中の学生達は皆、銃声で驚き、悲鳴を上げて逃げて行く。辺りには誰もいなくなった。

 直樹は痛みで呻くルセを心配して近づこうとした。

「直樹ぃっ!動くなぁ!」

ルセは何とか振り絞った声で叫んだ。相当痛いらしく、声がまともじゃない。

「これは俺の喧嘩だ!来るんじゃねぇ!」

ルセは苦痛で顔を歪ませる。肩の出血はなかなか止まらない深い傷だ。

 デルタはゆっくりと余裕を持った感じで立ち上がり、ズボンに付着した砂を払っていた。

 デルタはニヤけて言う。

「すいませんねー。別にパンツは見えませんでしたよ。ただの隙を作るための…ハッタリ的なものです。」

 ルセはホウキを右手で持って立ち上がる。左肩は負傷して使えなさそうだ。

「は、はは…そっか…俺も随分と、落ちたもんだな。拳銃の一つや二つ、避けれねぇとはな…。」

 ルセの表情は歪んでいた。でも、微かに笑顔を見せている。真面目にヤバイ頃なのだろう。痛みを通り越して笑っている。

 対して、デルタは余裕の笑顔。ルセにレボルバーを向け、堂々と立っている。

「お前、デルタ!女子に向けて銃を使うとか、男らしくねぇぞ!」

直樹は叫ぶ。

 デルタは直樹にレボルバーを向けた。ハンマーを下げる。直樹は焦った。どうしようもない。相手が拳銃なら、逃げれる訳無い。

「デルタァ!オメェの相手は俺だろうがぁ!」

ルセは低音で叫んだ。

「君はもう、戦う事はできない。諦めも肝心だ。」

 デルタはルセを見向きもしなかった。もう相手として見ていない。

 ルセはホウキを構えながら、少しずつ、デルタへと歩み始めた。デルタは一切、ルセを気にする素振りを見せなかった。ずっと直樹に銃口は向いている。直樹はいつ、銃弾が自分を貫くのかと心配で気が気でなかった。だが、直樹はどちらかで言うと落ち着いている方ではあった。普通、この状況下に置かれた人は、逃げ出そうとする。逃げずにはいられないのだ。それに比べれば、ジッとしていられる直樹は冷静だ。

 直樹はルセを横目で見る。少しずつ、着実にデルタへと近付いている。肩の流血は依然として止まらない。このままでは確実に危ない。早く治療を施さなければ、ルセは出血多量で死に至る。

 しばらく膠着状態のまま、時が進んだ。

 ルセとデルタの距離が3メートルを切ったその時、デルタが動き出した!直樹を狙っていた銃口を急にルセに向け、目線をそのままに引き金を引いた!銃弾はルセの右足に直撃し、ルセは倒れた。ルセは痛みで悲鳴を上げる。

 直樹はその隙を突いた!デルタに背を向け、直樹は逃走を謀った!デルタは銃口を逃走する直樹に向け、銃弾2発、続けて放った!直樹は変則的に動き、銃弾から逃げ切って小路地へ曲がった。

「ははは…直樹、それで良い…。」

ルセは疲労困憊の表情で呟いた。

 デルタは笑顔のまま、ルセに銃口を向ける。

「直樹は後で始末するから良いとして…ルセ、君を先に終わらせないといけないようだ。」

「へへへ…俺を始末した後に直樹を始末…できるとか思ってんのか?」

 デルタは首を傾げる。

「それ以外の選択肢があると?」

 ルセは立ち上がろうとするが、右足が負傷して立てなかった。左肩と右足から血が止まらない。激痛がルセを襲っていた。けれど、ルセは強がって笑っている。流れ出した血液が地面に血の池を作っていた。

「…はぁ~…そーだな…。まだ手段としてはもう一つ―――」

 その瞬間、デルタは誰かに、頭部を思い切り蹴られた!デルタはふらついて倒れる。レボルバーは離さなかった。

「これが第二の選択肢だ、バカ野郎!」

 直樹の蹴りが炸裂した!直樹は先程、逃げたのではなかった。小路地から迂回して、デルタの真後ろに回っていたのだ。作戦通り、デルタに一発お見舞いできた訳だ。

 直樹は倒れるデルタの持っているレボルバーを蹴ろうと構えた。その時、

「直樹っ!」

 ルセが直樹を、ラグビーのタックルみたいに突き飛ばした!直後、頭上を何かが通過していった。それは銃弾!デルタのレボルバーではない。遠くに一人、拳銃を構えた誰かが立っていた。

 直樹は起き上がる。

「いたたたた…ルセ、何を…。」

 直樹はルセを見る。ルセは倒れていた。目の焦点が合ってなく、青ざめた表情だった。

「ルセ、お前…。」

 直樹は一瞬で事態を把握した。ルセが自分を突き飛ばしたのは遠くからの狙撃を避けさせるため。そして、銃弾を放った相手はデルタの仲間だ。ルセは傷ついた足を犠牲にして、直樹を助けたのだ。

 遠くにいる人物がやって来た。黒いコートを羽織った人物。見た感じ30代後半。表情は無に等しい感じだ。右手にはデルタと似た様なレボルバー。同様に6発装填式だ。

「デルタ、負けてるのか?」

その男は訊く。

「まだ、負けてはない。」

 デルタは立ち上がる。後頭部を痛めている様で、片手で押さえていた。

 直樹はルセの前に立ち、ルセを庇う。全然、庇いきれてはないのだが。ルセは薄い意識の中、直樹を見つめていた。ボヤけているが、直樹が自分を庇っている事ぐらいは分かる。

 その男は直樹を睨む。直樹は物凄くビビってはいるが、動く事もできなかった。ルセを見殺しにもできなかった。そして逃げる事もできなかった。

 デルタは立ち上がり、銃口を直樹に向けた。デルタは笑顔ではなかった。何の感情もないのか、無表情。

「直樹…そろそろ、終わりにしようか。苦しまずに逝かせてやるから、ジッとしていて。」

「そうかよ…苦しまず、か。悪くはないか…。出血死よりは断然マシだな…。」

 直樹は完全に諦めていた。絶望している。死ぬ事に対して、多少の抵抗はあった。けれど、今は人生の中で一、死に近い場所にいた。死ぬ事に対しての抵抗が薄れていたのだ。

(…もう死ぬのか、俺。思ってみれば、俺の人生はクソだったな。両親にはまともな事をしてやれなかった。学校に来ても、授業中は昼寝。部活中も昼寝。毎日が無駄な時間で流れてゆく。勿体無い時間の使い方だった。もし、次の人生があるとしたなら、俺はもっと時間を大切にできる存在になりたい。ごめんな、みんな。俺、何も役に立たなくって…。最期の最期にも、ルセを守りきるのは無理そうだ。すまない、みんな。)

 そんな時、ルセが自我を少し取り戻し、何とか起き上がった。

「ルセ!大丈夫かよ?」

「大丈夫…な、訳ねぇだろ…。この状況だぞ…。弱り目に祟り目とは、まさにこんな事を言うんだな…。」

ルセも諦めに近い感情だった。仕方がない。ルセにも直樹にも、この状況を打破できる術がない。思い付きそうにもない。

「直樹も、ルセも、二人仲良く逝かせてあげよう。」

 デルタはレボルバーのハンマーを下げる。ルセと直樹は気を引き締めた。覚悟を決めたのだ、死ぬ事に対しての。

「さらばだ。楽しかったよ。」

 引き金が引かれ、銃口から銃弾が放たれた!破裂音が響き、銃弾は頭部へ、確実にヒットした!瞬間、赤い体液が飛び散った。ルセはそれを目の前で見た。飛び散った血がルセのボロボロの制服を赤色に染めた。


 次回、18話目『SEVERE PUNISHMENT。』。


 人は過去と今を行き来する生き物であり、故に過去を経由する負のデータへの処罰は重いものである。

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