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痕跡

歩いても歩いてもそれらしき花は見当たらず祐二の足が次第に棒のようになっていく

視界は真っ暗で薄気味悪く、足もとは腐葉土で歩きづらい

お金を稼ぐ大変さを少しだけ理解し両親のありがたさがわかった気がした


(しかし全然見つからないな・・・本当にそんな花あるのか?)


他の人たちは見つかってるんだろうかと考えながらひたすら探す

探し始めてから30分くらい?だろうか遠くの方でかすかに声が聞こえた


(今の人の声だよなぁ?薄っすらとしか聞こえないからあんまり自信ないけど)


・・・・・・・ぉぉ


!?


(やっぱり聞こえる!叫んでいるような声が・・・あっちって事は橋本さん?)


祐二には何を言ってるのかは判断がつきはしなかったが声の方角だけはわかっていた


なにか胸騒ぎがする

もしかしたら崖のような所があって転落してしまったのかもしれない

とにかく何かあったことは間違いないはず、怪我でもしていたら大変だ


(よし、ちょっと行ってみよう)


行ってみてもし何事も無ければそれはそれで安心できる

祐二はすぐさま声の聞こえた方角へ走り出した


この辺だろうという地点まで辿りつき探し始めようと思ったが

肝心の人の声があれ以来ピタッと止んでしまい見当がつかない状況に陥ってしまった

人の気配もすでに無くどこかに移動してしまったのだろうか、そもそも場所が違うのだろうか

全てが推測の域を出ない


(とにかくこのあたりを重点的に探そう)


あっちでもないこっちでもないと探し回っているとふと目に付いた場所があった

地面がほんのり明るく光っている

祐二は駆け寄ってみるとそこには夜光塗料がべったりと適当に塗られた地面や草だった

それに対して不思議に思う間も無く、すぐに声が近くで響き渡る


「だ、誰なの!?」


祐二が振り返るとそこには女性が立っていた

こちらにライトを当て訝しげな表情で凝視している


「ボクです!田中です!」


「あぁ、田中君ね・・・何があったの?」


少しお互い安心したような空気に包まれてホッとする


「あ、いや声が・・・叫んでいるような声が聞こえたような気がして飛んできたんです」


「田中君も!?じゃあやっぱり・・・!私も声が聞こえてたような気がして急いで来たの!」


「何かあったのかしら!?」


「わかりません、でも何かあったんでしょう。そんな声でした」


二人とも何が起きたのかと考え込み沈黙に包まれる


「そうだ!橋本さん見ませんでしたか?」


「私は車の方角から来たんだけどこっちに向かってくる人はいなかったわ」


「そうですか、となるとここから奥に入っていった可能性もありますね」


「とにかくバラバラにならずに二人で探しましょう」


「そうね、そうしましょう」


一人では心細かったが二人になることでとても心強くなった

一人では冷静に判断することもなく闇雲に探し回った事だろう


付近にはもう探してもいそうにないので奥に向かって歩く事になった

奥の方向は廃墟がある

行くことは無いだろうと思っていたがまさか自分の足で自ら赴くとは・・・

あまり気が進まないが仕方が無い


「はぁーなんか最近私色々ありすぎて本当嫌になっちゃうわ」


「え、なにがあったんです?」


「少し前にね・・・高校の頃から付き合ってた彼が事故で亡くなったの・・・それで今日はこれでしょ」


聞かなければ良かったと思った

しかしあんなことを言われれば自然と聞いてしまうのも仕方無いはず

ほとんどの人間が聞いてしまうだろう


「なんていうか・・・その・・・すいません、いい言葉が思いつかないです」


「フフフ、良いのよ別に。律儀な子ねー」


「それに良いことが全く無いって事じゃないの、たまには良いことだってあったしね」


「そうですか、安心しました」


「あ、そうだ私の自己紹介まだだったわね。私島田って言います。よろしくね」


「改めましてよろしくお願いします」


「こんな時に今更だけど」


そういうと二人で笑けてきた

自分が気を使うつもりが気を使われてしまったようだ

たかが高校生の自分よりも数段大人に感じる

しかし、こんな話でも気が紛れていいものだ

さっきまでの例えようのない不安な気持ちが一瞬でも忘れられた


ほどなくして遠くに廃墟が見えてくる

ありがちかもしれないがオバケが出てきそうな雰囲気、できるなら入りたくない

そのまま視線を遠くの館に合わせて歩いていると木にロープがぶら下がっているのが見えた

ロープの先は輪っかになっており誰もが見たら想像してしまうそんな光景だった


「なんかロープが下がってますね」


「これって・・・もしかして自殺する為の・・・」、


そう言いかけて島田さんは途中で口をつぐんだ


「ちょっと見てみます」そう言ってボクが近づいた時


ガシャッ!


「痛っ!」


足元を見るとボクの足首にトラバサミが喰いこんでいた

痛さで声が出ない


何事かという顔で島田さんが駆け寄ってきた


「だ、大丈夫なの!?」


「ええ、なんとか・・・」


「とにかく外すわね!」


「うっ・・・お願いします」


島田さんが近くにある木の棒を使いテコの原理を利用し力を目一杯込める

するとスプリングを余り強く引いて設置しなかったのかワイヤーが少し緩んでおりかなり簡単に外す事ができた


「ありがとうございます」


痛さで涙が少しこぼれる


「そんなに血も出ていないしまずは平気そうね」


ひとまずは安心した

痛さでジンジンするが出血は余りしておらず骨にも異常は無いようだ


「少し座って休んでいて。私旅館の方を見てくるわ!包帯とかあるかもしれないし」


行かせてはならないと思った


「待ってください、一人は危険です!」


そう言って引き止めるのもむなしく、ボクを残し彼女は一人行ってしまったのであった

なにかが起こってる・・・そんな予感だけを置きざりにして

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