砂糖のかけすぎにご用心★
勢いよく吹き出した煙に唐子は思わず目を閉じてしまった。
しばらくして恐る恐る目を開けると目の前に人影が浮かんでいた。
それは机の上に偉そうに仁王立ちしていて、服装は黒一色そして趣味の悪いうちは赤、外は黒のド派手なマントを羽織っていた。
そして最後に見えたのは憎たらしい笑みを浮かべるその顔だった。
(あ、やばい目があった)
年は同じぐらいに見えるがこの登場の仕方、ちょっと…いやかなり頭のおかしい人だ…
そう察知した唐子はさっと目を反らすと静かに回れ右をした。
しかし遅かった。
面倒事という泥沼にもうはまってしまっていた。
怪しい姿の少年は高らかに声を掲げる。
「フハハハハ!私は魔王だ!お前たちの願いを叶えてやろう!しかし‼︎代わりにお前たちっ…⁉︎」
「キャァァァァァ」
しかし、怪しい少年が得意げに頭のおかしいセリフを言い終える前にさらに甲高い叫び声が響いた。
声の主はほのかだった。
顔は真っ青、体は震えていた。
なぜこの状況で?ますますほのかがよく分からなくなった。
「塩ぉぉぉぉぉ!」と場違いなほどにテンパったほのかは傍にあった箱の中の白い粉を掴む。
悲惨な結末を予知した唐子は叫ぶ。
「まってほのか!それは!」
(砂糖だよ‼︎)
しかしもう手遅れだった勢いよくぶん投げられた砂糖は、先ほどのほのかの叫び声に若干ひるんでいた怪しい少年の顔面にクリーンヒットした。
(あーぁ)
悲惨な光景を唐子は静かに見つめていた。
しかし、砂糖をかけられた少年のリアクションは二人の予想の斜め上を行っていた。
「うぎゃぁぁぁぁとけるぅぅぅ」
と顔を抑えながら机から転がり落ると、ジタバタと地面をのたうち回る。次第にはありが集り始めていた。
しばらくして息を乱しながらこちらを睨み付けながら「なぜ俺様の弱点を…」と呟いていた。
(じゃ、弱点なんだ…)
確かにその顔は気持ち溶けているように見えた。
唐子はふぅとため息を吐くと事態を収拾させようと少年へと歩み寄り「大丈夫?」と手を伸ばした。
しかし少年は手を払い一瞥した。
「だれが助けなどいるかクソ女が!」
ピキッと表情が固まる。
「ふん、いきなり悪魔の粉を投げつけてくるとは無礼な女共だ」
唐子は静かにほのかから箱を受け取る。
「しかし、俺様は心が広い今回は許してやろう
さっさと願いを言え」
砂糖を手のひらいっぱいに掴む、不思議と頭は落ち着いていた。
「金、名誉、男、なんでもいいぞ!
代わりにお前らの魂をもらうがな‼︎」
唐子は深呼吸すると段々とヒートアップする小生意気なことを抜かす少年におもいっきし砂糖を投げつけた。
「だれがぁクソ女じやぁぁぁぁぁぁ」
「ぎやぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴が辺りに響き渡る。
辺りを転げ回る少年に唐子は2回3回と砂糖を投げつける。
「や、やめろくそおんっ⁉︎」
バサッ
「ちょ、まてくそおっ⁉︎」
バサッ
「や、やめてくだっ」
バサッ
次々と降りかかってくる砂糖に初めは威勢が良かった少年も次第におとなしくなる。
最後には力尽きて床に突っ伏していた。
その姿をみて唐子は一息つくと少年がガバッ!と体を起こした。
その目は充血していて体を小刻みに震わせている。
ほのかはどうしようとオロオロと尋ねてくる中、唐子は知るかとはぁはぁ肩を上下させる。
一瞬の沈黙、そして少年は勢い良く
「もうやだ‼︎帰るっ!!!」と叫んだ
しかも涙声で。
「!!??っ」突然の駄々っ子発言に一同(唐子とほのか)は騒然となる。
「い、意外と打たれ弱いんだね」
グサッ!、
(あ、今何か刺さったな)
ほのかの何気ない一言に唐子は内心呟く。
そのなか大分ダメージ(肉体的、精神的両方から)を受けているのか少年はよろよろと机の上によじ登るとこっくりさん用紙の上でゆっくりと立ち上がる。
それが仁王立ちなのはせめて物プライドなのか…。
そして少年は唐子を指差しながら非常に余計な捨ぜりふを発した。
「このくそおんな、おぼえてろよ!!」
少年のキメ顔が残るなか、1秒、2秒…
何も起こらないなか、唐子は静かに砂糖を掴むそして…
「誰がくそおんなじゃぁああ!!」
その後教室中に少年の叫び声が響いた。
1年ぶりですね!
去年はまったく時間がなくて書く暇がありませんでしたがやっと投稿できました。
とりあえず序章は終わりここから魔王と唐子の学園ラブコメ(?)が始まっていきます。
みなさんお楽しみに!
p.s.社会人って時間ないね!