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 ――この世界は元来、自然文明、スチーム文明、機械科学文明、魔術文明など多種多様な文明から構成されており、まだ見ぬ遺産を探し冒険者が多数闊歩していた。親父もまた、その中でアイテムストライダーという奴をしていたらしい。

 だが現在、ある日を境に突如現れた数多の侵略者により、この世界はしばしば戦火の絶えないものとなってしまった。

 そんな訳で、侵略者達に対抗する事の出来る新たな冒険者を養成する学校の需要が発生し、必要性に応じて新規に設立されたのが、この秘奥学園という訳であった。


 なので目的柄、学校の人間は戦術において度々役割経験や連携の為、同じクラスの人間と最小限からの連携ーーツーマンセルを組むことが義務付けられていた。

 そして、須賀谷士亜という人間はそういう経緯でイフット・イフリータ・イフリートと組んでいたのだった。


 「――畜生めッ」

声が細く出る。それもまた、この今になって崩された訳だが。須賀谷のコンビ相手が居なくなった事により、現実問題として新たなパートナーを見付けねばならない。無論、それはイフットの方もまた、同様じゃないか。

 つまり、あながち先程の黒岩田の奪ってやるという話も完全な与太話という訳ではないのだ。いや、むしろイフットと組んでも見劣りしない程、あの野郎の能力は高い。少なくとも俺よりは、ずっと。


 ーーそれがとても歯痒くて怖い。不安でもある。

 ――だが、こんなところで屈服してたまるものか。心が負けたら終わりだ。

 胸を圧迫する痛みに耐えながら、俺は歯を食い縛って顔を上げる。

 「……マイナスがなんだよ、逆風が何だよ! 、この程度で俺の人生の火を消せると思うなよぉぉッ……!」

 こんな明日も見えない絶望的な世の中だ、交通機関に飛び込んで自分がバラバラになるのも悪くはないが……このままでは奴等に一撃をかまさなければ気が済まない。

 ……だが、此のままでは俺は唯の負け犬だ。


 ……どうする、俺はこんな無様なままでいられるか? ……いや、いられはしない。いてなどたまるものか。死にたい死にたいなどと無様に呟きながら何もしない日々を過ごすなど、真っまっぴらだ。

 人生にとっての汚点になるし、俺があいつのペースについていけなかったなどというのは、俺自身の実力もないと完全に思い知らせる事となるし……嫌過ぎる。

 こんな弱者のままでは、いられやしない。

 それは自分の心の中に新たに出来あがった、赤くて黒い負の火種であった。

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