かつて自分が口にした言葉
渡辺が死んだと聞かされたのは、入院して二週間目になって順が来てからの事だった。
順は缶詰の束を持ち込み、さらに華を病室に飾ってくれた。
「……そうか」
渡辺の死を聞き、須賀谷はさらに落ち込んだ。
果たすべき恨みのやりどころが、消えてしまった。
何もかも、全て。
俺は、これから何をして生きていけばいいのだ。これでは、酷過ぎる。これでは這い上がるために奴への恨みを近場の原動力にする事も出来ん。
「ーーお前は、どうしたい?」
順がそう、尋ねてくる。その口調は優しかった。
「正直言ってしまうと、死ぬか、親元に戻りたい気分だ」
だから普段は隠してしまうような弱みも、言ってしまう。
「ーーだろうな」
順は同意してくる。
「止めないのか?」
「まぁ、親元が安定するという気分は、ちょっと分からんがな。私は親との仲は最悪だったものだから。それに、死にたいと言う気分も分からんでもない。それは、私の通った道だからだ」
順は静かに、そう告げる。
「ーー通った、道?」
須賀谷は少しだけ、心動かされる。
「ーー忘れたか? お前がかつて、体育館で私に言った事を」
「俺が、順に言った事ーー?」
須賀谷は、聞き返す。何か、あったか?
「称号が嫌ならさ、勝てばいいじゃないかよ……? 俺は、俺の夢の為にあんたに協力して貰いたいんだ!」
順は須賀谷の口調を真似しながら、そう言った。
ーーそれから。
「お前の夢は、此処で終わるのか? 忘れてはないだろう。フランベルグという子供がまだ、いるのだぞ」
「……」
「塞ぎこんでいたお前をまた立ち上がらせるのは私ではないかもしれない。もしかしたら、私の前に急にお前が現れたように、お前の前に急に誰かが現れるかもしれない」
順はこちらの肩に手を置きながら、そう告げる。
「順ーー」
「お前と言う存在は、価値がある。人と人を呼び繋げる力が。それに、誰にも負けない真っ直ぐさが。それだけは覚えておくがいい……あー、柄にもない事を言ったな」
「ーーそうかもな」
須賀谷は相槌を打つ。
「あー! 全く、お前のせいで辛気臭いのが移ったわ! 群雲 順はもっと孤高でなくちゃいけないのにな、イメージダウンだ!」
順は照れくさくなったのか、大げさにおどけてみせながら笑ってみせた。
なんだか、その様子につられてしまいちょっとだけ笑みがでてしまう。
「ーーその意気だ。間違っても、自殺とか考えるなよ」
順はこちらの頭をとんとんと指先で叩きながら、諭してくる。
「まだ私もお前も、死ねないからな。ーー明日また、見舞いにこよう。ひとまず私はあの子供を潰すまでは、死なないとは決意したからな」
順はそう言って、部屋を出て行った。




