病室で見た夢
ーー須賀谷は暗い病室で、死んだような眼をして天井をぼんやりと眺めていた。
喉も渇かず、不思議と腹も空かない。
しかし骨折のせいか腕は痛み、発熱も何度かした。
「ふぅ……」
時間だけはあり暇なので自問自答をしたが、どうにも答えは見えなかった。
ーー俺の居場所は、世界にあったのだろうか?
誰も答えは返してはくれないが、自己満足とばかりに疑問を壁に放ってみる。
空しさばかりが胸の奥から湧き出てきて、切ない気分になった。
須賀谷は外の世界から隔離された病室で感傷的になり、折れた自分の手を、じっと見つめる。
この今という名の現実が夢であれば、醒めてほしいと思う。
だが、醒める気配は無い。
この病院に運び込まれてから一週間。夢といえば、一つだけ、夢を見た。
その世界は、此処とよく似ていて、黒岩田に同じく俺が傷つけられたものの、イフットが戻ってきた世界だった。
ーーあぁ、辛い。苦しい。なぜこんな時に、こんな夢をみるものか。
俺は現実、全てが憎くさえもある。
俺の居場所を奪った黒岩田に、俺の居場所をなくしたイフットに、そして俺自身の居場所を確保し続ける事が出来なかった無力な自分自身に。
ーーそして、俺自身が女に欺かれて暫くの間気付けない程度のような男だった、というのもまた憎い。
眼の曇りように、嫌気が差す。この程度の心の持ち主であったのかと。
「……クッ」
須賀谷は、悲しげな表情をした。
無力さを知る度に、嫌になる。いっそ、これなら外道にでも身を落とせば良かったとすら感じる。
「ーーああ、畜生」
ーー俺自身はとても不十分かつ、不完全だ。こんなにもいやな目にあったというのに、追慕の情を消し去るなどという器用な生き方は出来ない。
生き方が、下手糞なのだろう。
俺は今まで欲しい物を得る為には……努力をしてきた。
だから、俺の話を拾ってくれるあいつがとても助かっていた。
ーーだが、彼女はもう無いのだ。それは認めるしかない。
あぁ、いっそ、己の弱さを、俺自身が認める事ができればいいというのに。
畜生、畜生。何故、俺はここまで苦しいんだーー。
須賀谷は、独り、胸を掻き毟った。




