3錠目
「どうしてそこまで、クズ行為を働ける! それが貴様の常識で倫理であるなら、俺はお前を殺すッ!」
須賀谷は右腕を振りかぶり、エンチャント・ナックルを繰り出す。
――だが、須賀谷の腕に纏わり付いた魔力は、フランベルグの顔に当たる前に拡散した。
「貴様ァァァア!」
「一固有の雄の戦う理由としては、確かに食料や雌の為だけで結構だ。いわゆる豆泥棒、ってね。……だが君は、弱すぎる。たかだか数年研鑽をしただけで、しかも真面目な訓練をしていない者が僕に勝てると思ったのかい?」
どこまでも人を嘲笑うフランベルグに向け、須賀谷はタマチルツルギを取り出し向かう。
「黙れッ! 俺は、俺の……俺達の世界を破壊した貴様を許さん! 俺たちは俺達の世界を作っていた……当たり前の世界を! そして、もっといい世界が続くはずだったものを、よくも!」
逆手で持ち、フランベルグの肩口に突き刺す。
「無駄なんだよ!」
だが、勢いよくツルギが弾かれる。それと同時に、須賀谷の右腕が間逆に曲がる。
フランベルグの右腕が、サイバーアームガントレット……黒岩田と同じ武器になっていた。
「ぐぉぉぉぉっぁぁ!!」
熱い。腕が。骨が折られた――!
「ヒヒヒヒヒヒ!」
フランベルグは尚の事、笑っている。
こちらの殺意だけは、まだあがっていく――!
ーーこれだけの戦いがあっても、教師達は援軍に来ないというのが、腹立たしい。 避難を優先しているのだろう。
「まだだ……まだ!」
《爆裂光槍》!
順が須賀谷の後ろからフランベルグに回り込み、至近距離から魔法を放つ。
「効くかよ、そんなもの!」
しかし片手で魔法の衝撃をフランベルグは弾く。
威力は足りない。だが、その瞬間、僅かに奴に隙が出来た。
――やってみる価値はある。
「吐いた唾は飲むなよ! 喰らえッ!」
須賀谷はブラッド・タブレットを数錠無造作に掴むと、フランベルグの口の中に投げ込んだ。
「っぐ! 貴様!?」
すぐさま異変に気付くフランベルグだが、程なくして膝を付き、突然血を吐く。
「なんだ……これは!? がはっ!?」
フランベルグの様子が眼に見えておかしくなった。
「ーー効果はあるようだな、たった3錠かそこらでそこまで喰らうとは、情けないな」
須賀谷は吐き捨てながら、自分もブラッド・タブレットを一錠噛み砕く。
ーーもう現世に未練は無い。このまま肉体が朽ちようとも、文句の一つも無い。今はただ、こいつだけでも。俺の命と引き換えに地獄に送ってやる!
「エクステンション!」
『fill up』
須賀谷の体に、再びアーマーが付加される。
流石に3度目ともなると身体が重い。薬なんかで身体が回復するわけもなく、全身が悲鳴を上げる。だが、このアーマーの火力を生かし、潰すしかーーない!
「でぇぇぇッ!」
リミットを……開放する!
『パイルブレイカー!』
一発、二発ーー。
閃光と共に怒りを込めた鉄杭を相手の顔に打ち込む。
だが、それでも、フランベルグは倒れない。
「いい加減に死ねよ……! この野郎!」
「鬱陶しいんだよ!」
パイルの先端がカウンターパンチで、ひしゃげる。
腕はもう使えないかーー。こんなところで、終わりたくはーーないのにッ!
須賀谷は今度は、足に力を込める。
「こいつで決めろ!」
同時に順から魔力の光球が、送られる。
光の球を受け取ると身体がほんの僅かだけ、軽くなった。
力を受け渡して、くれたのか。
「このパワーならば……!」
踏み込みに力を任せ、顔面を狙う。
『首を折る! でぇぁ!』
真横から顔を狙い、エネルギーを纏った飛び蹴りをかます。
「くっ!」
流石に勢いがついているのか、フランベルグは防御したまま吹っ飛び地面に臥した。
「こ、この僕を土に付けるだと……?」
フランベルグはゆらりと起き上がりながらも、顔色を変える。
「人間如きが……! 調子に乗り腐りやがって!」
「俺達を……舐めるな!」
須賀谷は、息も切れ切れに叫んだ。




