究極生命体
「士亜」
順が肩を持ち、茫然し掛けている須賀谷を助け起こす。
「ーー分かっている、全ての歯車は、壊れている。元凶を辿ればいいだけの話だ。順調にいっていたものをぶっ壊したもの、それは俺かもしれないし、奴かもしれない」
混乱を覚えつつも須賀谷は、感情の迸りを制御しようとする。
よくよく考えれば、自分が渡辺に弱味を見せなければよかったというだけの事だ。
そうだ、俺さえ隙を見せなければあんな事になどーーならなかったというのに。俺と言う男が、甘かったばかりに! 俺という男が、病気にすらならければ良かったのに!
須賀谷は、歯を食いしばる。あんな甘い事をしなければ、黒岩田、奴とイフットが如何わしい事をするような理由も作らせられなかったし、自分自身がこうも無様な思いをする事などなかった。
ーー憎いさ。自分自身の甘さが招いた種だから、尚憎い。それは過去を取り戻せないという事だけではなく、全てを台無しにしてくれたからだ。許す事などできない。
ーーだから、後悔はするが、元通りには出来ないだろうし、いらない。
最期の最期まで悔やむ事も、懺悔する事も無かった黒岩田やイフット。あんなクズみたいな事をした奴らにどうこういう事は無い。ただ、一生忘れる事はないだろう、憎しみも、怒りも。
何も責任を取らず、死に腐りやがって。無様に犬死を。
ーーこんな事になるのなら、まだ、俺自身の手で引導を渡すべきだった。
あんな人間、存在してはならない、周囲を不幸にする。それに、俺も。
せめて此処まで失敗の選択をし続けた世界を葬らねば、俺は死んでも死に切れん。
俺の元に来てくれればとは思ったが、それももうこの世界では望めやしない。だから、これでいいはずなのだ。奴の気が済めば構わないし、俺の気も構わない。黒岩田を直接地獄に送れなかった事は、非常に腹立たしいが。
「色々悩んでいるようだね、面白い事を。……でもね、言ってあげるよ? 君たち二人が悩んでいる原因は……僕だよ」
そんなこちらを余所目にフランベルグが続ける。
「ーー何だと!?」
順が今にも食い付かんばかりの表情でフランベルグを睨む。
「僕はね、全て知ってるんだ。須賀谷くん。--ウィルス。君がひいていた病気、覚えはあるかな?」
「何!?」
順が須賀谷の方を見る。同時に、須賀谷は心の中で、今までの自分の体調に納得がいった。
「『堕落の肺炎』ーーまさか」
「あぁ、君たちの遠征前に細菌兵器の研究の一環としてウィルスを散布しておいたんだ。この土地の風土病も、この世界を制覇するには参考になるだろうからねェ! まさか君がウィルスに罹患してくれたとは思わなかったけれど!」
フランベルグは悪びれも無く続けた。
「そうかよーー!」
須賀谷は、苛立たしげに、フランベルグに目を向ける。
「おやおやぁ、怒っちゃった?」
フランベルグは尚の事、嘲るように続けてくる。
「んー、でもね、もう一つ面白い事、僕には出来るんだ。僕にはね、吸収した相手の能力とか、声とかも使えるんだよ」
「ーーチッ!」
順が舌打ちをする。
「だからね……こういう事も出来るのさ。士亜君、こういう煽りはどうだい?」
フランベルグはニヤニヤしながら声を変える。
ーーそれも先ほど吸収した、黒岩田に。
「ほらぁ、士亜君。仲良くしようじゃないかい●兄弟ィィィ!」
ブチッ。
頭の中で、また怒りが爆発する音がした。




