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血塗られた破片

「ありがとうよ。まぁ、分かっている。後ろを見ている暇なんぞないしな、後ろ向きになって得られるものなんて一ミリも……一かけらもない。だから俺は戦った」


 須賀谷は、自分の未熟さを振り返りつつも、腰に刺さった破片に触る。

「っぐ……」

 痛みが走る。我慢は出来るが、自力で取るのはちょっと躊躇したい。

「「どれ、怖いか?私がとって手当してやる」

 順は呆れたような顔で言いながら、須賀谷の腰に触れた。 

「えっ……大丈夫、なのか?」


「任せるといい」


「……心配なんだが?」


「動くな、手元が狂う」


「しかし……!」


「そら!」


「っつぐううううう!」

 破片が乱暴に引っこ抜かれ、須賀谷は辛く叫びあがりそうな痛みを我慢する。

「――よし」

 血の付いた破片を順は握ると、床に突き刺して踏みつけて埋め込んだ。

「泣き叫ぶと思っていたが、よく耐えたな。偉いぞ」

「――お、俺は、口だけじゃない。熱意と、痛みに耐えるだけのものはある」

 須賀谷は意地を張りながら、言い返してみせる。

「――ほら、これは秘伝の軟膏だ、塗りこんでおけば殺菌にもなるし血は止まる」

 順はそう告げると、服の内ポケットからケースを取り出して渡してくる。

「――ありがとう」

 須賀谷はケースを受け取り薬を傷口に塗りこむと、わざと大きく息を吐いてその痛みを逃がす。

「しかし、勝つとはやってくれるな。ここまでとは思わなかった」


「ーーどんな形であれ、勝つのは当たり前さ。だが、それよりも上を目指さなければ勝利すらもぎ取る事など……出来やしない。俺自身剣に自信は無かったが……体力に関して伸びしろを作ってくれたり、わざわざ左手でも剣を使えるように矯正してくれたのはありがたいと思っている」


 強がりではないが、感謝の気持ちを漏らす。

「しれっと言われて自己反省出来るのがお前だ。そう考えるとお前には恐ろしさがある」

「そうか?」

「あぁ。何年も居た人間を予告も無くおざなりに扱って新しい奴に移る、そんなのは良いとは思わん」

「ーーそうか」


「物事には、立体性がある。だから、雑魚が粋がったところで無駄なのだ。喩えお前が文官であり、一人の人間の崩壊した人生の中から想像した劇で理想の敵を自ら滅ぼしたところで……、まさしく無駄に過ぎないといったものよ。やはりやるからには、本気でなくては。今までだって、多少の堕落はあれどお前はお前の元半身に対し、本気で生きていたのだろう? そいつの痛み第一に考えて動き、そいつが痛んだら必死になって手足になり、そいつの事の為なら自分がどれだけ痛んでも構わなく思っていたーー」


 順は冷静に言ってのけるが、急に。

「危ない!」

 須賀谷に向かい、突き飛ばしながら飛び込んできた。

「えっ!?」


即座に二人がいたところに、爆発が起きる。

「いでっ!」

 尻餅の付き方が悪く、須賀谷はまた傷口に痛みを感じた。

「ーーこれは! 士亜、使うぞ!」

 順は舌打ちをしながら、須賀谷の腕からデバイスを奪い立ち上がる。

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