犬の戯言
「過去を破壊する事で……決着をつけるって事?」
「俺のエゴだ。人の人生を失敗から……成功をみせておいてまた失敗まで引き下げてくれたからな! お前と生きたかったのだよ!」
「そう、でも私は貴方と生きたくない。それに、そんな二元論で語られても困る」
「ーーあぁそうかい! どっかで幸せな世界があれば良かったとつくづく思うぜ、畜生!」
「そうだよ」
イフットの翼から可変して出てきた補助腕と須賀谷のタマチルツルギが、切り結ぶ。
須賀谷は感情をぶつけながら、圧倒的に素の能力が上回るイフットとほぼ互角に戦っていた。
ーー失血が自らを蝕み、徐々に視界のぶれと、手の震えを自覚する。身体の重さがとてつもなく辛く、身体を動かすのをやめると切り捨てられるという状況を精神だけで奮い立たせる。
一太刀一太刀を浴びせる度に体勢を崩し、それでも身体に鞭を打って動かそうとする。ーー無様だ。
「ーーああ全く、もう少し生きてみようかな、と思えた矢先にこれだ。やはり人生は碌なものじゃなかった! 病気で死んでた方が幾分マシだった!」
悪態を付きながらもタマチルツルギの出力を維持し続ける。彼女の存在は、俺の全てだった。だというのに、ここまで薄情に裏切られた事で何もかもどうでもよくなるレベルだった。
イフットの翼がさらに可変し、須賀谷の足元を破壊する。
「こんな物があるから!」
須賀谷は自分自身が、人間の形を保てなくなってもいいとさえ感じていた。
ツルギの出力さえもが下がってきている……くっ。
こいつの手に掛かって死ぬのなら本望ではある。……だが、黒岩田を生かしておくわけにはいかない。だから、俺はまだ死ねない。
「……遅かれ早かれこういう結論には至ってたよ」
イフットが猛攻を加えながら、告げてくる。
「ああそうかい。こっちからすればそこまで人一人にぶっ壊される程度の脆さだったのかって感じだがな! 俺はお前に欠点や後ろめたい過去があっても気にせずいた、それでもあんたの器量はそんなもんだったって事かい!」
「ーー落ちこぼれ」
「犬で何が悪い! 何か文句でもあるのかぁぁぁ!」




